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雨に濡れても<4>完 

「久しぶりだな」
会社帰りの俊司を、仁田が待ち構えていたのは、昔待ち合わせをしていた駅前の公園だった。
不遜な態度は相変わらずだ。吐き気がしそうな程の嫌悪が、俊司を襲う。
「今更、何の用だ?」
冷たくいい放つ俊司を、仁田は肩をすくめてやりすごした。
「ふん、えらく冷てぇじゃ無ぇか。ベッドの中ではあんなに可愛かったのによ」
ニヤリと獰猛に微笑んだ仁田の顔に、俊司は唾でも吐きかけたい衝動に耐える。
最低な男だ。こんな男と長い間恋人だった自分の見る目の無さには、自分でも呆れ果てるばかりだ。
「誰でもイイって日もあるもんでね」
「ふん。俺が良かったんじゃなく、誰でもいいって?」
不機嫌そうに仁田が繰り返すが、でなければいくら俊司でも、自分の傷を広げるような相手と寝たりはしない。
「その割には耳元で『捨てないで』なんて囁かれたがな」
「何かの間違いだ」
少なくとも、そう云いたい相手は、今は目の前の相手では無い。

別れてから、既に十年近くの歳月が流れている。
今更、何を云われたところで動じるものでは無かった。
「お前を探してたんだぜ」
「は?」
身勝手すぎる言い草には、呆れるよりも唖然とする。昔から俊司相手には傲慢もいいところな男だったが、それでもここまでとは思っていなかった。
というか、今更何を馬鹿をいっているのだと、殴りつける気にもならないくらいの馬鹿馬鹿しさだ。

「お前、何云ってるんだ? もう別れてから何年経ってると思ってるんだよ」
「電話が繋がらなくなった時点で、あの部屋にまだいるとは思っていなかったからな。灯台元暗しとは、まさにこのことだな」
嘘を吐けと俊司は思った。俊司が電話番号を変えたのも、鍵を付け替えたのも篤志と付き合い始めた4年前だ。
引越しは経済的な事情で諦めたが、つまりはそれまで仁田は自分のことなど思い出しもしなかったに違いない。
「話はそれだけか?」
「いや、これからが本番」
もって廻った仁田の話など聞いている暇は無いのだが、それでも一旦寝てしまっている以上、妙なことになっては困る。
篤志の思い詰め方は尋常では無いからだ。
「お前のカレシ。会社の部下なんだってなぁ。会社にばれたら困るんじゃ無ぇの? それとも、相手の親も承知の上か?」
「な…ッ、」
俊司は目を見開いた。いくら人気の無い公園内とは云え、これ以上の会話は、俊司よりも篤志の首を絞める。
「これ以上は外じゃやばいだろ?」
どうする?――――と促されて、俊司は渋々仁田を連れてアパートへ帰った。



「相変わらず、貧乏臭ぇ部屋だよな」
「余計な世話だ」
部屋を見回す仁田に、いらつきを押さえきれない。
「何が目的だ?」
ストレートに話を切り出した。
「何って、簡単な話さ。あの坊やと別れて、俺とまた付き合おうぜ」
厚顔無恥もいいところに切り出されて、キレ無かった自分を誉めて欲しいくらいだと俊司は正直に思った。
「で、別れなければ、奴の親にばらすって訳か」
「知ったときにどういう反応を見せるか、お前なら判ってると思うがな」
「脅迫してまで付き合いたいほど、お前が俺に執着していたとは、驚きだよ。一体いつ、そうなったのか教えて欲しいくらいだ」
俊司の冷ややかな反応は、事のほか意外だったらしい。仁田はふんと鼻を鳴らした。
「執着してるのはそっちだろ? あの時、あんな風にすがり付いてきたら、お前と別れるなんてもったいないことはしなかったのに」

「それで、今更、縁りを戻しに来たという訳ですか?」

冷たすぎる声に、俊司は固まって動けなかった。
振り向いたのは仁田だ。

「おや? 坊やは結構勘がするどいらしい」
「僕の大事な人のことですから」
仁田に対する篤志の声の調子は淡々としすぎているくらいで、俊司は怖くなった。
「僕の家族のことくらいでふらふらしないでください。貴方は僕のだって、何度云ったら解るんですか?」
固まったまま、振り向きも出来ない俊司を後ろから篤志が抱きしめる。
「この人はこの通り、僕のものです。さっさと退散したらどうですか?」
その言葉を裏付けるように、俊司の躯は息も出来ないほど抱きしめられていた。
「おいおい、坊や。そんなに強く抱きしめてると窒息しちまうぜ?」
渡すまいとする、その子供じみた仕草をせせら笑おうとした仁田の顔が段々と、引きつってくる。
「おいッ、坊や! 止めろ、本当に死んじまうぞっ」
「いいんですよ。貴方に渡すくらいなら、こうして……」
篤志の手は、いつしか俊司の首に掛かっていた。
だが、俊司は外すつもりも無い。元々、壊れかけていた自分を引き止めているのは篤志なのだ。
その篤志に殺されるなら、もう、どうでも良かった。
「か、勝手にしろ! 付き合ってられ無ぇ!」
言い捨てて、仁田が俊司の視界から消えると、篤志の力が緩んだ。


膝から下の力が入らない。
一気に気管に空気が流れ込んできて、むせ返った。


「この間のしつこい男って、彼ですよね。貴方、元カレとなんか寝たんですか?」
優しい仕草で引き起こされ、ベッドに横たえられる。だが、声の調子は恐ろしく冷たいままだ。
「貴方は僕のものです。僕だけの……」
首筋を不安な動きで指が這い回る。
優しげな仕草で服が取り去られるのに、俊司は安心して身をゆだねた。



「裏切ったら許さない」



<終わり>


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