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優しすぎる男<3> 

「はぁ? 何で、お前と俺よ?」
「奴の腐った頭じゃそうだったらしいっすよ」
俺が残業しているところに現れた添田さんに、俺はコレ幸いと、コトの顛末だけを説明した。
ま、そりゃ俺とデキてたと思われていたなんて、キモイ話は聞きたくないだろうが、大学時代からいろいろと面倒を掛けた人だ。話さない訳にもいかない。
「なるほどな。それで俺に伝言だったワケだ」
「すみません。面倒掛けました」
俺は、頭を下げてパソコンへ向かう。一応、『明日までに上げなきゃいけない、本社扱いの伝票がある』というのが、添田さんが支店から俺に会いに来た理由だ。仕事はやって帰らないと。
「すぐに済みますから」
断って、俺は仕事に集中し始めた。
「なぁ」
しばらくして、俺の後ろの席でコーヒーをすすっていた、添田さんから、声が掛かる。
「何ですか?」
「ひとつ、聞きたいんだが……?」
「はぁ、何でしょう?」
「柿原と、より戻すのか?」
「…!……っ?」
功治先輩からの意見は衝撃的過ぎて、俺は思わず、せっかく打ち込んだデータをデリートしてしまうかという程だった。
「そんなに驚くことか? 柿原が今更、お前と連絡取ったって、そういうコトじゃねぇの? 元々、アイツはお前は大事にしてたし」
俺の驚きようが、添田さんには余程意外だったらしいが、俺は、添田さんがそんなことを云い出す方が不思議だった。
「ま、まさか! 五年前でも、もう無理があったんすよ! 今の俺にそんな気にはなりませんよ」
「柿原がそう云ったのか?」
「いいませんけど……大体、アイツが俺になんておかしいでしょう?」
俺は気を取り直して、パソコンへ向かう。プリンターにセットした伝票の束が印字されていく。
伝票を手渡したが、添田さんはそれ以上何も云わなかった。



「祥?」
俺は目を疑った。
週末に訪れた行きつけの店のカウンターに座っているのは、間違いなく俺の元恋人だった男だ。
「やあ、ヒロ。待ちかねたよ」
精悍な美貌がにこりと微笑むのに、思わず見とれてしまう。
「なんだヒロちゃん、先約有り?」
馴染みの客の一人が掛けてくる声に応えようとした先を制される。
「そう、僕が先約。悪いね」
「お、おい」
「またなんて云うから、二週間は我慢してたけど、さすがに限界。探したよ。ヒロ」
俺を探した? まさか。
「ほら、この間の店で、君に声掛けてた男いたじゃないか。アイツにヒロがここの常連だって聞いてさ」
美月さんか。あの人なら面白がって教えるだろう。まったく。
「彼、先週からずっと待ってたんだよ」
マスターが云う。
「待ち人がヒロちゃんだとは思わなかったけどね」
まぁ、普通はそう思うだろう。
「可愛い子じゃなくて悪いね」
俺が冗談まじりに云った言葉に、マスターが慌てて手を振る。
「いや、そういう意味じゃないけどね」
「別にいいよ。云われるのには慣れてっから」
だからって、云われて気持ちのいいもんじゃないが。
「ヒロ。今日はゆっくり出来るかい?」
「まぁな。金曜日だし」
普通のサラリーマンは、休日の前にしか呑みになんか来れない。毎日、俺を待ってる必要も無いのに。まったく、こいつはお坊ちゃんだ。
「ヒロ」
祥の方を見ないように会話を続ける俺に、焦れたように祥が袖を引く。
自分の方を見ろと。
「仕事は? 今、何やってんだ?」
どーでもいい事を聞いてみた。確か、コイツの実家は、どこぞのグループ企業の一家だった筈だ。付き合っていた頃からまったく興味が無かったから、覚えてねぇ。
「株屋」
「え?」
大学の頃から株取引をやっていたのは、知ってる。工業大学だった所為か、親もそれ関係の勤めが多かったので、黙っていてもある程度の情報は入ってくる。だが、それだって素人よりマシな程度だ。
「相変わらず、株取引やってんだ。投資家って奴?」
「残念ながら、投資家と胸を晴れるには程遠い。だから、株屋」
祥は、自嘲するように笑うが、意外と真面目で努力家なのは昔からだ。節操が無いのは下半身に関してだけだった。
「でも、それで生活出来るなんてすごいじゃねぇ?」
「君がそう云ってくれると、自信が持てるよ」
本当に嬉しそうに、コイツは笑う。この笑顔が好きだった。
俺はついと視線を反らし、手にした酒を喉の奥へ放り込む。
「君は? 添田と同じ会社に勤めているんだよね?」
「ああ、三流もいいとこだけど、一応就職は出来た。希望通りに建築関連だしな」
近況など、普通に再会した友人のような、他愛ない話を交わして笑いあう。
付き合っていた最後の頃には、まったく交わさなくなっていた会話だ。
付き合い始めた頃に戻ったようで、最初は苦かった酒が段々と美味いと感じる頃になると、後はすっかり奴のペースだった。


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