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優しすぎる男<5> 

「ここんとこ付き合い悪かったじゃん。何してたのさ」
口を尖らして、真幸が聞いてきた。ラブホのベッドの上だ。
あれから、週末は祥の部屋へ呼び出されている。呑みに行く回数も極端に減った。
「んー、まぁ、何って云われても、ナニなんだけどな」
ナニの部分を強調する。軽い猥談のノリだ。
「ああ。やっぱ噂ホントなんだ。ヒロがツレ決めたって話」
そんな噂になってるのか。俺の驚きを、真幸が見咎める。
「何さ、違うの? 今日誘いに乗ったから、ただの噂かと思っていたんだけど、根も葉も無いって訳じゃ無さそうじゃん」
綺麗な眉をひそめて。真幸が俺を覗き込んだ。
「ほら、真幸には話しただろ? 俺をフッた先輩の話」
「ああ。初めて会った時の……。もしかして、縒り戻った?」
真幸と初めて会ったのは、常連になっているあのバーだ。祥にフラれて落ち込んでいる俺を慰めてくれたのが、三つ年上のこの綺麗な男だった。根っからのバリウケで、俺が抱いた初めての男。
「アメリカから帰ってきたんだと。この五年行ったり来たりになっていたらしい。今週は、またニューヨークに仕事に行っている」
「すごい美丈夫だってハナシじゃん。マスターが渋々教えてくれたよ」
という事は、マスターが広めている訳では無さそうだ。あ、そうか。
「美月さんあたりが面白がってるんだろう。最初に呼び出された所を見られてるんだ」
「その後、『エルミ』まで追い掛けて来たんだって? 『エルミタージュ』にヒロが現れるまで通い詰めてたって、他の客の間でも結構な噂になってるよ」
真幸はくすくすと笑っている。『エルミ』の連中の娯楽かよ。
「そいつが祥なんだろ? 逞しくなったヒロちゃんを捨てたオトコ。抱かれた?」
「ああ」
真幸はずっと笑い続けていた。俺は不機嫌に応えを返す。
「で? ヒロちゃんは何が不満なのかな? 好きだったんだろ? 戻ってきて嬉しくないワケ?」
そんな俺の顔を真幸が覗き込む。
嬉しいと云うより、俺は戸惑ったんだ。今更、戻って来られてもどうしていいのか判らない。
「あの時のヒロってば、自殺でもしかねない雰囲気だったじゃん」
自殺はともかく、寂しかったことは確かだ。平然と別れたフリをしながらも、初めての恋人に裏切られたショックで、喚きだしそうだった。
でも、友人たちの当時の見解は『プレイボーイの柿原先輩に遊ばれている』と決め付けられていたから、別れたなんぞと云ったら、『ソレ見ろ』と云われるに決まってる。
とにかく、同じゲイと話をしたかった。
「そういう真幸だって、ノンケに捨てられてヤケクソだったろ?」
真幸はノンケが好みだ。オンナっぽい訳では無いが、目元の泣きボクロが妙に色っぽく、ノンケの男が面白いくらいに引っ掛かる。『ノンケ喰い』なんてあだ名があるくらいだ。その割にはサイクルが早くて、捨てられては慰めてもらいに『エルミタージュ』に現れる。
「タイミングばっちりってやつ?」
「違いない!」
ノンケに捨てられた真幸と、祥に飽きられた俺が偶然出会ったのは、もう偶然と言うより必然だった。以来、お互いを慰め、愚痴を聞いてもらうのに遠慮の無い相手として付き合っている。
「まぁ、余計な世話かもしんないけどさ。あんまり考え過ぎるなよな」
こんな時だけオトナ振りやがって! とは思うが、社会人になって五年の差はでかい。
「ま、しばらくは『エルミ』来ない方がいいんじゃん」
「来ないとツレが出来たってウワサ、肯定したことにならねぇ?」
真幸は立ち上がり、シャツに袖を通す。
「ヒロは無自覚かもしれないけど、狙ってる奴は多いんだよ? キミの嫌いなマッチョな男どもにケツを狙われたい?」
俺はキョトンとした顔をしていたと思う。
『エルミタージュ』は、大人しめの普通のゲイバーだ。嗜好がしっかりしている奴しか来ないし、会話だけという奴も多い。
「まさか。ハッテン場じゃあるまいし」
「じゃないから、みんな無理はしなかったワケ。ヒロは俺が最初につば付けたから、タチで通ってるけど、ウケもいけるって判ったら迫る奴が出てくると思うよ」
スーツを身に着けながら、俺にちらりと視線を流す。
「冗談だろ? 俺なんかで興奮するのか?」
「当然でしょ。ヒロ、結構綺麗な躯してるし、カオは可愛いし?」
「くっそー、童顔だって云いたい訳か?」
「そ」
真幸がくすくすと笑った。


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