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優しすぎる男<7>完 

しばらくして、マスターが個室へと入って来た。
「待たせて悪いね、ヒロちゃん」
「いえ、アノ……美月さんは?」
「とっくにタクシーが来て、新くんが乗せてったよ。ヒロちゃんらしく無いね。あんな暴力」
「――――判ってます」
マスターがコーヒーを差し出す。
「美月くんはいつも人を見下さないと済まないところがある。皮肉屋だしね。彼も少しは懲りただろう。だからといって僕の店で殴りあいは止めて欲しかったよ」
俺は無言で、置かれたコーヒーを啜った。
「ヒロちゃん。キミ、あの祥とか云う奴に、関係を強要されてる訳じゃないね?」
「いえ」
マスターが俺の手を取る。
「それならいいけど――――キミだって判ってるだろう? 美月くんが何故あんなに絡んだのか?」
「美月さん、祥と寝たんでしょう。知ってます。ああいう風に絡んでくる奴の大半はそうなんで」
「キミ、それでいいのかい?」
「別に恋人じゃないんで。俺が口出す事でも無いし」
俺は下を向いたまま、コーヒーを啜る。マスターはいよいよもって、俺の片手しっかりと握ってきた。
「恋人じゃないんだね?」
「はぁ、あの?」
俺は唖然とした。このパターンは???
「ヒロちゃん、じゃあ、僕の恋人になってくれないか?」
は? 恋人?
マスターは真剣な表情で俺を見た。酒場のマスターにしておくには惜しいくらいの立派なガタイのマスターが、縮こまって俺の返事を待っている。その姿は、大型犬が主人の命令を待っているのに似ていた。
「すみませんが、マスターは俺の好みとは外れているんで。その、申し訳ないです」
俺は逡巡することなく応える。好みからきっぱり外れ過ぎていて、俺にはどうしようも無い。
「そうか。悪かったね。――――出入り禁止なんて事は無いから、また来てくれよ」
マスターは残念そうに個室を出て行く。諦めがいいらしいのが有難かった。
「告白タイムだった?」
肩を落としたマスターと入れ替わりで入ってきた真幸が、見透かしたように囁く。
「ああ。ここで諦めが悪い奴だと、祥は浮気モンで俺には相応しくないとか続くんだよなぁ」
まったく、祥という極上のオトコが手を出しているというので、俺に興味が湧くのか、この手の告白は後を絶たない。笑えることに、祥と付き合っている間だけだ。祥と別れると、ぴたりと止まる。
「美月さんとひともめあったって?」
「祥と関係した奴らにとって、俺は邪魔なんだろ。いつものことだ」
「確かにうるさい外野だね」
「だろ? 今日は帰る。気分削がれちまった」
今度は誰にも引き止められずに店を出た。
いつもこうだ。
祥と付き合いだすと、何故か外野が騒ぎ始める。

「ずるずるは良くねぇよな」

俺は、祥を初めて自分から呼び出した。



「何だって?」
「この関係を止めたいんだ。もう呼び出さないでくれ」
俺はきっぱりと切り出した。
「別れたいってこと? 一体、何故?」
おいおい、俺ら付き合ってたか? 
「ヒロ、何が悪かったんだ? 浮気はあくまで浮気だよ。僕が本気なのは君だけだ」
「じゃ、どうして美月さんが俺に絡んでくるんだ? もういい加減にしてくれよ」
「アイツには遊びだと云った!」
はぁ? 遊びだと云ったから、向こうも遊びの筈だってか?
「あのな、そーいう問題じゃねぇだろ。俺はもうウンザリだ。お前の浮気相手に絡まれるのも、お前が抱いてる躯だからって迫られるのもな!」
一気に吐き捨てた俺を見る祥の瞳は、驚愕に見開かれている。
信じられないと云うように。
「もう限界だ。判ってくれよ」
お前の相手に嫉妬するのも、もう嫌なんだ。

「ごめん……また同じことなんだね」

お互い黙りこくっているのにも疲れて、俺が帰ろうと立ち上がると、祥がぼそりと呟いた。
「お前が悪い訳じゃない。でも、外野にはウンザリだ」
俺は祥の顔を見ずに立ち上がった。いっそ、再会した後に会わなければ良かったのかもしれない。

「さよなら」
俺は別れの言葉を残して歩き出した。
「また会えたら、普通に話してくれるかい?」
俺の背に、祥の言葉が掛けられる。
俺は、振り向かずに手だけひらひらと振った。

「懲りてねぇな。ありゃ」
俺は誰にともなく呟いてため息を吐いた。


<おわり>


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