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BARエルミタージュ<1> 

BARエルミタージュ

ゲイバー・エルミタージュ』は、十数年前から新宿二丁目の外れ、住所からすると三丁目との境にある。
カウンターと数個のテーブル。奥には2つのボックス席。派手な演出も、音楽も無い。マイノリティが酒を呑んでくつろぐ為だけの場所が、ここだ。

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<8> <9> <10> <11> <12>完
番外編「昔の男と俺の自信」




ゲイバー・エルミタージュ』は、十数年前から新宿二丁目の外れ、住所からすると三丁目との境にある。
カウンターと数個のテーブル。奥には2つのボックス席。派手な演出も、音楽も無い。マイノリティが酒を呑んでくつろぐ為だけの場所が、ここだ。

俺はここで、大学生の頃から7年ほど働いている。
吾川 圭吾。二十六歳。御他聞に漏れず、ゲイだ。

マスターの愁さんは、三十八で独身。って、ゲイなら当たり前だって?
俺が言う独身ってのは、パートナーがいないってコト。
マスターは、この店を一緒に作った恋人と別れてから、特定の相手がいないんだと、常連の真幸さんが教えてくれた。
「君、可愛いから、君から誘い掛けてみたら? マスターだって嫌がらないと思うよ」
なんて笑いながら云われたけど、絶対に本気になんかしない。真幸さんみたいに綺麗な人が云う『可愛い』なんて、本気に出来るもんか。

見れば見るほど、マスターはカッコイイ。180を軽く超える長身と、がっしりした身体つき。それに、優しそうなあの笑顔。
いつか俺だけに笑いかけてくれたら、俺、死んでもいい!

「相変わらず、見詰めちゃって。そんなに好きなら押し倒しでもすりゃいいのに」
マスターが他のお客さんと話している隙に、カウンターの向こうから真幸さんが囁いた。
「けしかけても無駄ですよ」
俺はちょっと冷淡に云う。大体、この人は綺麗だからこんなことが云えるんだと思う。真幸さんはスレンダーな体躯に、女っぽくは無いが綺麗な顔をしている。それと目元の泣きボクロが、なんとも云えない色っぽさをかもし出していて、ノンケでさえ落ちるんだ。
「真幸さんは、今日は待ち合わせか何かで?」
羨ましがっていても、仕方が無い。話題を変えることにしたが、その答えも俺の気分をよりいっそう沈ませるものだった。
「うん。君の嫌いなヒロとね」
「やだな。嫌ってなんかいませんよ」
そんなのが嘘だなんて、真幸さんにはお見通しだろう。
客のえり好みなど、商売にあってはならないことだとは、百も承知しているが、やはり俺は『ヒロさん』が苦手だった。
別にヒロさんが酔ってあばれるとか、シモの始末が悪いとか云うことは、まったく無い。酒は綺麗に呑む人だし、口説きもスマートで、無理強いもしない。若いお客から相談を受けると、真摯に応えている。
じゃ、何が気に入らないのかって?
「君の心配も、杞憂に終わりそうだよ」
真幸さんは、クスリと微笑んで片手を挙げた。
「ヒロちゃん、いらっしゃい」
真幸さんが声を掛けるよりも早く、マスターはその人に気付き、声を掛ける。
その人も、マスターに柔らかい微笑を見せていた。
「マスター。お久しぶりです。圭くんも」
そう、この人が『ヒロさん』。マスターには劣るけど、鍛えられた見事な体躯の持ち主だ。かっちりとしたスーツの良く似合う体型で、もう少し背が高ければ、モデルといわれても納得しそうだ。
「真幸も久しぶりだな」
「ホントにお見限りだよねぇ? 女子高生でもあるまいし、オトコが出来た途端にソレ?」
「云うなよ。ほれ、これがお前の見たがってた俺のツレだよ」
ヒロさんが身体をずらすと、後ろの背の高い男が立っているのが見える。え? ツレって???
「佐伯…英次、です」
ものすごく不機嫌そうな顔でソコに立っている人に、おそらく、店にいた全員が見惚れてしまったんじゃないかと思う。
とにかく、見たこと無いくらい綺麗な男だった。
かといって、女っぽいワケでは決して無い。その美しさはあくまでも硬質な男のものだ。
「へぇ。すっごい綺麗な人じゃないか。ヒロちゃんが見せたがらない訳だ」
「べ、別にそんなんじゃ………」
感嘆したように云う真幸さんの言葉に、ヒロさんが慌てて反論している。
「俺があんたらの見世物になりたくなかっただけだ。それに、俺がいるんだから、こんな店に出入りする必要もないだろう」
「ナニそれ? 聞き捨てならないね。こんな店って、どんな店さ」
佐伯さんの台詞に、真幸さんが顕著に反応する。あらら、始まったよ。
「るせぇ。お前が出入りしてるようなトコと一緒にすんな! 俺は男漁りにきてたんじゃねぇ!」
ムッとした口調でヒロさんが佐伯さんを睨んだ。佐伯さんは舌打ちして、押し黙る。
「ヒロちゃん、いいのかい? 先週から祥くん帰って来てるけど」
マスターは置いてあるヒロさんのボトルから、ワンフィンガーを二つ並べた。ちぇっ。マスターすぐに逃がす気だよ。
「ゲっ? マジ? おい真幸、今度呑み直すぞ」
「なーんだ、祥のヤツと対決させないんだ~? そっちのカレ」
「冗談だろ。俺、最近、揉め事はノーサンキューよ」
置かれたグラスを一気に煽って、札を数枚置いていこうとしたヒロさんの腕を、佐伯さんはぐいっと掴んで座らせる。
「おい、俺に解るように説明しろ。祥ってダレだ?」
「お前、目がいただけないよ。座ってるじゃん」
「いいから、話せ!」
「解ってんだろ? ヤボはよそうぜ」
佐伯さんの鋭い視線から目をそらしたヒロさんは、とぼけた口調で言い放つ。隠す気が無いのか、それとも、隠しても無駄だと思ってるのか、その口調からは想像出来なかった。


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