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BARエルミタージュ<2> 

こういう所も俺がヒロさんが苦手な理由だ。とにかく、読みづらい。
「知らないんだー。ヒロの初めての男、だよ」
「何だと?」
真幸さんの台詞に、如実に反応したのは佐伯さんの方だ。
「おい、どういうことだよ? お前…ッ」
「違う。誤解だって。真幸、お前それ以上何も云うなよ!」
「どうしようかなー。あ、俺はヒロの初めての女、ね。よろしく、英」
慌てて、立ち上がろうとする佐伯さんを押し留めて、尚且つ、しゃべり続ける真幸さんの口を塞ぐのは、いくらヒロさんでも物理的に不可能だろう。
「タチ食いの英だろ? やだなぁ。ヒロちゃん、食われちゃったワケ?」
「何だ、ソレ?」
今度はヒロさんがキョトンとなった。
「君のカレの悪名。俺もこの界隈長いからさー」
ヒロさんがキッと佐伯さんを睨む。佐伯さんはバツが悪そうに目線を逸らした。
「仕方ないだろ。お前に似てる奴ばっかだと、どうしてもそういう選択になってたんだよ!」
「へ?」
ヤケクソ気味に言い放つ佐伯さんは、耳まで赤い。綺麗な容姿を裏切って、結構、表現豊かな人だ。
「あ。そう」
「真幸くん、素直じゃないね。そんなにヒロちゃん盗られたの悔しいのかい?」
面白く無さそうに、口を尖らせた真幸さんを、マスターはくすくす笑って見ている。
「当たり前! 俺のオアシスなんだよ、ヒロは。それを、こーんな評判悪い男に持ってかれちゃったら、悔しいに決まってんじゃん!」
テーブルのロングカクテルを一気に煽って、無言で俺にグラスを差し出す。
俺はそっと受け取って、同じカクテルを造ったが、さすがにちょっとアルコール度数控えめだ。
こんな調子で煽られたら、こっちが持たない。
ヒロさんが苦笑いをして、俺に合図を寄こす。俺はトイレに行くフリをして、電話ボックスに入った。
「上総さん。すみません、真幸さんが。いえ、そのヒロさんのツレを見せろって話だったらしくって。荒れてます。閉店までなら預かりますから」
大体、真幸さんが荒れたとき、以前はヒロさんに連絡していたが、最近はこの上総さんという年下の番犬くんに電話している。
荒れると、どうしようも無くなるんだ。
以前はマスターも面倒見てたらしいが、あの色っぽい真幸さんと2人きりで。というのは俺が勘弁して欲しい。心臓に悪い。
「いっつもヒロはオトコのシュミ悪いんだからさー、顔だけいい男なんて最低だよ?」
「悪かったな。おい、ホントに帰るぞ、真幸」
「駄目。あのもう一人の顔だけオトコが来るまで」
「おいおい、頼むぜ。これ以上引っかき回す気かよ」
絡んでくる真幸さんを、ヒロさんがうんざりした顔で宥めていた。
ソレを横で、更にうんざりした顔で佐伯さんが眺めている。
それを更に、幸せそうな顔のマスターが眺めているといった図。
妙に腹が立つ。
マスターがヒロさんを好きなのは判ってるんだよ。でも、ムカつく。
大体、ヒロさんの相手がいつも極上なのも気に入らない。
なんであんな筋肉オトコがモテる訳?
確かに顔はちょっと可愛いけど、それだけじゃんか。それなら、俺だって変わらないと思うんだけどな。
下世話な話、タチとしてのヒロさんは想像できるが、ウケとしてのヒロさんなんて俺には到底理解できない。
人の好みに口出しする気は無いけど、マスターの好みだっていうのがヒロさんだと云うのなら、俺、少し鍛えた方がいいのかな?



「いらっしゃいませ」
ドアの開く音に、反射的に顔を上げて微笑んだ。
大柄で、ゴツイ顔した男が立っている。確か、祥さんの知り合いで――――。
「お久しぶりですね、添田さん。バーボンでよろしいですか?」
「ああ、祥のボトルからでいい。どうせ奴の支払だしな」
スツールに腰を下ろした男に、マスターはまるで常連のように祥さんのボトルを開けた。
その動作に、俺はマスターの凄さを思い知る。常連の知り合いも全てお客様としてマスターの頭の中には入ってるんだ。
「ゲッ、先輩?」
「お前なぁ、ゲとか云うくらいなら、見当付いてんだろうな? 俺はお前の後始末に来てんだぜ?」
祥さんの知り合いと云うことは、ヒロさんとも知り合いと云うことらしい。ヒロさんがいよいよもって、げんなりとした顔をする。
「先輩。祥と待ち合わせっすよね?」
「お前、逃げるなよ。ああ、そうだ、ちょうどいいからお前のカレシに紹介しとけ。また妙な誤解の元になるのは御免だぞ。それで何年も柿原みたいな奴と旧交温める羽目になってんだからな?」
「はいッ!」
ピシッと背筋を伸ばしてヒロさんが頭を下げる。いわゆるところの体育会系という奴だ。
「俺の彼氏です、佐伯英次。英次、同じ道場の先輩の添田さん」
「ああ、大学時代の先輩だとか云う……佐伯です、よろしく」
「噂には聞いてたが、本気で付き合ってる訳だな。添田だ、よろしく。という訳で、ヒロの元カレが今から来るから。説明はそっちでやってくれよ。じゃ、な」
「ええ~~~ッ!」
そそくさと帰ろうとする添田さんの袖を、ヒロさんはしっかりと掴んでいる。
「待ち合わせしたのは、功治先輩なんでしょう。見捨てて帰るんすか?」
「お前にカレシが出来たらしいが、何処の誰だと聞かれただけだ。俺が正直に答えてみろ、柿原の奴、会社で待ってるかもしれないぞ。どっちにしろ、顔合わせする羽目になるなら、ここでやっとけ。俺は帰る」
「そんなぁ。ひどいっすよ」
こっちから顔は見えないが、情け無い声で添田さんに訴えてるヒロさんに、俺は正直ざまあみろと云う気分だ。
「どうせ、ヨリ戻す気なんぞ無いんなら、ここいらできっぱりケジメつけとけ。アイツだって、相手見れば嫌でも納得すんだろ?」
添田さんの手が、小さな子供にするみたいに、ヒロさんの頭をぽんぽんと叩く。
「マスター、今日の払いは祥じゃなくて、こいつにツケといて」
「ええ~ッ、払いも俺持ちっすか?」
「了解したよ」
マスターは当たり前だと笑ってみせた。添田さんはバーボンの残りを呑み干すと、さっと立ち去る。まぁ、何処から見てもノンケらしい添田さんは、用事が終わればゲイバーなんぞさっさと出て行きたいのが本音だろう。
例え、マスターの作る酒がそこいらのバーでは叶わないものであったとしても。マイノリティの違いとは、そう云うことだ。
理解を示してくれるだけでも良いとしなければならないのだろう。
「またおいでください」
「ありがとうございました」
頭を下げた俺たちに、添田さんは、
「今度はちゃんと呑みにくるよ」
と声を掛けて出て行った。


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