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BARエルミタージュ<5> 

「すまない。ウーロン茶くれないか」
奥のテーブルから声が掛かって、俺は仕事中であることを思い出す。
しっかりしなきゃ。ここは、マスターが俺たちみたいなマイノリティの『エルミタージュ』にしたいと云う店だ。呆けている訳にはいかない。
「はい、すぐに」
俺は声の掛かったテーブルに目を走らせた。
最近、うちの店に通いはじめた耕さんは、どうやら恋人とのデートスポットを探していたらしい。今夜は恋人らしい男の子を連れてきていた。
呑みなれてない様子に、俺もかなりアルコール度数低めのカクテルを作ったのだが、口当たりが良すぎたのか、呑みすぎたらしい。気分が悪そうだ。
ウーロン茶と共に、冷たく冷やしたおしぼりを差し出すと、耕さんは無骨な手で、男の子の額をぬぐっている。
「気持ちいい」
「ツトム。大丈夫か」
「うん。もう少し、こうしてていい?」
額におしぼりを当てたまま、耕さんの膝に甘えている様子は、頼りになる兄にやんちゃな弟と云った仲の良い兄弟にも見えた彼らが、ちゃんと恋人同士であるということの証明の様で、見ていて微笑ましい。
「耕さん、あてつけるなよ~」
外野が冷やかしの声に、意外や言葉を返したのは、ツトムと呼ばれた男の子だ。
「へへ~~~ん。うらやましいだろ~~~」
あまりに無邪気に返されたそれに、毒気を抜かれて、店中が爆笑の渦に包まれる。
「耕さん、何処で可愛い子捕まえたんだ?」
「年、考えろよ。犯罪だぞ~」
「ああ、うらやましいよ」
耕さんは冷やかされて思わず、立ち上がろうとするが、ツトムくんは膝にしがみついて離れようとしなかった。渋々と、照れ笑いを浮かべたまま、そこに居座る羽目になる。
「ツトム、調子に乗りすぎだぞ」
「だって、初めてじゃん。ホテル以外でデートなんてさ」
「仕方ないだろ。お前と俺で遊園地って訳にもいかんだろ」
まぁ、確かに同級生とかならともかく、ツトムくんは何処から見ても俺より二つ、三つ下くらいだろうし、お相手の耕さんは三十三、四というところだ。この組み合わせだと、兄弟と云い張っても行けるところは限られてくる。
なるほど、それで安心できそうなゲイバーを探してた訳か。
「ツトムくん。安心して。ここには、お仲間しかいないから。堂々といちゃついていいよ」
「うん、解ってる。へへ。耕一さん、俺の為に探してくれたんだろ。すんげーうれしい」
俺の言葉の意味をしっかりと聞き取って、ツトムくんが応える。頭のいい子だ。
こんな子だったら、年の離れた耕さんは可愛くって仕方が無いだろう。


カウンターへ戻ると、いつの間にか祥さんは消えていた。
まぁ、横目で確認した口説いていた相手は、遊び人の美月さんだし、放っておいても害は無い。
恋愛の形は人それぞれとは分かっているが、こうも考え方の違いを見せ付けられるとあまりいい気はしない。
まぁ、その場限りの遊びも悪くは無いと思うけどね。
だって、恋愛って一人じゃ出来ない。でも、健康な成人男子なら、欲はあるワケで。
ただ、好きな相手がいるんなら不毛かなとも思うけど、俺たちの場合、振り向いてくれる以前の問題もある訳だ。
相手が男相手が大丈夫とは限らないし、結構、好みがはっきりしている場合も多い。
真幸さんなんか、ノンケの方が好みらしい。これがまた、あの四十前だとは思えない色気で迫られると落ちちゃうらしいんだよなぁ。いつも、真面目そうなカッコイイ系の年下男を連れてくる。
祥さんなんかは、がっちりタイプがお好みで、『ああいう男っぽいタイプが僕の下で喘いでんのがいいんじゃないか』なんて、あっさりと云ってくれる。
ヒロさんは、綺麗系の男に弱い。そんなに遊ぶタイプではないけど、好みの男に強引に迫られると弱いみたいだ。
マスターが弱腰なのは、多分、ヒロさんの好みが自分とはまったく合わないと云う所為だろう。


「ありがとうございました」
最後の客を送り出したのは、夜も白みかける頃だ。
深夜も深まった頃にやってきた二人連れは、エリート然とした男とチンピラヤクザといった、いかにもな訳アリという感じで、片隅のボックスシートにチンピラの方がちじこまって座っているという、何とも奇妙な二人だ。
胡散臭い匂いがぷんぷんするその二人を、マスターはそっけないくらいにあっさりと注文をとって放っておく。
「いいんですか?」
こっそりと囁いた俺に、マスターはにっこりと笑った。
「そっとしておく方が良い夜も恋人たちにはあるんだよ」
マスターの台詞に、俺は目を見開いた。思わず、ボックスシートを振り返りそうになるのを、何とか職業意識で押し留める。
恋人同士? あのチンピラヤクザとエリート男が? 
もしかして、エリートに見える男って、いまどきのインテリヤクザとか云う奴かな?
俺としては興味津々と云う奴だったんだが、マスターが放っておいた方がいいというので、俺もなるべく視線を外したまま、空いている席の片付けを行った。


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