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BARエルミタージュ<8> 

エルミに勤め始めた頃、俺は自分の性癖と向き合うのが怖くて、バイトも結構及び腰だった。世話になった友人のピンチヒッターと云うので無ければ、多分とっくに辞めていた筈だ。
後に、その友人は『お前が壊れそうで見てられなかったんだが、俺はそう云うの判らなくて』とマスターに頼み込んだことを明かしてくれた。いくつも、ゲイバーに通って、ここならと思ったのが、『エルミタージュ』だったと云う訳だ。

勤め始めると、エルミではマスターもお客さんも、本当に極々フツウの人で、酒と会話を楽しむ為のバーだった。
違うところは、唯一、恋愛話の相手が男だと云うくらい。
サラリーマンだったり、学生だったり、時には役所勤めの人や、いかにもな夜の商売の人も。仕事の愚痴や、取れない単位や、面白い上司や同僚のことや、好きなスポーツや。
同じように皆が話すのを聞いて、楽になった。
――――何だ。おんなじじゃん。男が好きだってだけ。
すっと肩の力が抜ける。

現金なもので、そうなったら廻りに目を向ける余裕も出来てきて……。
隣で働いている、いつも見守ってくれた大人の男を好きになるのに、そう時間は掛からなかった。

かといって、すぐにどうこう出来るものでも無い。
今度は自覚した想いに振り回されて、余裕が無くなった。
マスターが酔っ払った真幸さんを介抱するのにさえ、嫉妬して、どうしようもなくなる。
そんな俺の無理に一番に気付いてくれたのは、ヒロさんだった。
当時は、真幸さんもノンケ男の恋人とうまく行かなくて、荒れることが多かった。無茶呑みして、マスターが泊めてやるなんてことは、日常茶飯事だったから、俺は結構いつもテンパっていたものだ。何しろ、真幸さんは色っぽい。マスターが、その気になったって不思議じゃ無い。
そんな時、ヒロさんが様子見で電話をくれるようになった。
最初、ヒロさんは真幸さんが好きなんだと思っていたが、真幸さんが一人で帰れる時には、ヒロさんは迎えには来ない。
そのうち、二人っきりになった時を見計らって、俺の愚痴を聞いてくれるようになると、ヒロさんは俺に気を使ってくれているのだと、さすがの俺でも気が付いた。

「俺、魅力無いのかな」
「圭くん。男は馬鹿なんだぜ。誘ってるのか?」
マスターに何も伝えていないくせに、マスターに見て欲しいと訴える自分の心が痛くて、自棄になった俺は、ヒロさんにホテルへ連れて行かれた。


*これより先15禁。ご承知の上、お進みください。

乱暴に抱かれるのも覚悟していた俺を前に、ヒロさんがベッドで尋ねる。
「で? したい? されたい?」
ファッションホテルのベッドに腰掛けて、ネクタイを引き抜きながらの改めての問いに、俺は頭が真っ白になった。
「フツウはホテルに連れてくる前に聞くことだけどね。俺はどっちでもいいけどな」
「あの、ヒロさん。俺がそれって選べるんですか?」
「当たり前だろ? それが一致しないなら帰ってもいいんだぜ? 俺たちは両方とも『男』なんだからな」
俺は改めて、ヒロさんをじっと見てしまった。男っぽい立派なガタイに、子供っぽさを残した可愛らしい面差し。
確かに、こんな男を抱きたいという奴もいるのかもしれない。でも。
「すいません、俺、ヒロさんを抱くのは出来そうに無いです」
「じゃ、俺が抱いてもいいか」
ストレートにヒロさんが聞いてくる。
俺はこくりとうなずいた。
「シャワー浴びてこい」
ヒロさんが笑うのに、俺は頷く。
隅々まで洗いあげながら、今からセックスするのだと強く意識した。
俺が風呂から出ると、入れ代りでヒロさんがシャワーを浴びに行く。ベッドに腰掛けたまま、風呂場から響く水音を聞いていると、逃げ出したくなる衝動を覚えた。
どうしようか迷っていると、風呂場のドアが開いて、ヒロさんが顔を出す。
「どうする? 止めたいなら今のうちに云え。いくら、お前がバージンでも、始めてからお預けはさすがにごめんだぞ」
云い当てられて、ぎょっとした。
「何で……?」
「ん? 何がだ? どうしようって顔に書いてあるぜ。バージンなら、俺じゃなくって、好きな男とやった方がいいんじゃないか?」
ヒロさんは笑いながら、ベッドで固まってる俺の隣に腰掛けてくる。
俺が自棄になっていることを承知で、付き合ってくれたんだ。ホントに優しい人なんだよ。
「平気です。煮詰まった頭で気長に待つほど、大人にはなれないですよ、俺。ヒロさんなら大丈夫そうだし」
そう。ヒロさんとマスターって何か似てるんだよ。いや、マスターの方がヒロさんより一回り以上は大きいけどさ。
がっちりとした男らしい身体つきなのに、すごく笑顔が柔らかくて、基本的には真面目なんだけど、頭が固い訳じゃ無い。
「圭――――」
囁きと同時に、軽く唇が触れ合った。
バードキス。音を立てて、子供の戯言のようなキスの雨を降らせる。
「嫌になったら、ちゃんと云えよ。なるべく止める」
耳元で囁いたヒロさんは、耳朶を軽く噛んで、またキス。
「オトコは初めて。オンナは?」
ゆっくりと押し倒しながら、ヒロさんの指が俺の肌にじかに触れてきた。
「こんなときに、そんな、こと……なんで?」
「バージンで童貞じゃ、俺もどうしていいか判らないだろ。ほら、正直に云ってみろ」
キスの雨は今度は首筋を辿って、俺の胸元に降りてくる。
「女の子は二人。男、とはキスだけ、しか…」
「判った。未経験よりマシだ。優しくするよ」
ヒロさんがクスクス笑うのさえ、肌に吐息が当たって、反応してしまう。
思わず漏れそうになった俺が声を噛み殺そうとすると、ヒロさんが深くキスしてきた。


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