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嫉妬深い男<1> 

「BARエルミタージュ」の裏バージョン。佐伯から見たエルミタージュの面々です。

<2> <3> <4>完


     ◆◆◆


「え?」
久世隆大は、結構はっきりとモノを云うタイプだ。それがやけに逡巡しながら言葉をつむぐことは珍しいことで、俺は危うく聞き逃してしまうところだった。
「だから、今週末に付き合って欲しいんだ」
「そこは聞こえた。何処にだって?」
俺が聞き返すのに、久世はふて腐れた顔で、吐き出すように云う。
「2丁目の、俺の行きつけ。紹介しろってうるせぇんだ」
「紹介? 俺を、か?」
照れた時に、ふて腐れた様な態度になるのは、どうやら恥ずかしいかららしい。身長は平均よりやや高いくらいだが、ガタイはいかにもなスポーツマンタイプの久世がそうしている様は、ひどく子供じみていて『可愛い』かった。
あまりに可愛らしいその姿に、俺はつい久世をぎゅっと抱きしめてしまう。
「なんだよ、変な奴だな」
「いや、好きだなぁ。と思ってさ」
口では文句を云いながら、耳まで赤くなっている恋人兼同僚の姿に、今更なくらいに改めて、そんなことを思った。
いや、俺は馬鹿なんじゃなかろうかと自分自身に突っ込みを入れたいくらいだが、それでも好きなのだから仕方が無い。
だが、ひとつだけ、引っ掛かるところが。
「ところで、誰に紹介するつもりだ?」
「最近、付き合いが悪いって店の連中が……」
云いづらそうな様子に、『店』と云うのが、ワンナイトスタンドの相手を探すところだと云うのを悟る。
てっきり友達か何かに紹介されるのだと思ったが、どうやら別の意味の『お友達』に紹介するつもりの様だ。俺のテンションは一気に下降した。
「俺は見世物じゃ無い」
面白くない気分で呟く。もちろん、健康な男である久世が、何年も相手がいないという訳では無いのは解っているし、その間、俺は単なる同僚に過ぎなかった訳だから、むしろ口を出すのは間違っているという自覚もあった。
だが、頭で理解するのと、感情はまったく別物なのだ。
「何だよ、さっきまでは構わなさそうだったのに。まぁ、気が向かないならいい。ただ、俺は、今週は呑みに行くからな」
「え?」
おい、呑みに行くって、ひとりで『店』にかよ!
「だってお前、行きたくないんだろ? 俺も久しぶりだし。そろそろ、顔出しとかないとうるせぇのがいるしな」
冗談じゃ無い! 一人でそんなところに行かせてたまるものか。
いや、俺の恋人になった久世が、誘いを受けるとは考えにくいが、万が一と云う言葉もある。
「俺も行く」
「え?」
「呑みに行くんだろ? だったら、俺と一緒でもいいよな?」
打って変わってそう言い出した俺を、久世は本気で不思議そうに眺めていた。


     ◆◆◆


「エルミタージュ?」
妙に洒落た名前のそこは、俺の予想に反して、こじんまりとした落ち着いた雰囲気のバーだった。
「ヒロちゃん、いらっしゃい」
扉を開けた俺たちを出迎えたのは、どう見てもバーのマスターより、K1ファイターの方が似合いそうな感じの男だ。
「マスター、お久しぶりです。圭くんも」
カウンターの向こうには、もう一人、バーテンらしき男が酒を出していた。嫌そうな顔をしているところを見ると、あまり歓迎されている訳では無いらしい。
満面の笑みを浮かべたマスターとは対照的だ。
「真幸も久しぶりだな」
カウンターに腰掛けていた男が振り向いた。妙に色っぽい感じの男だ。
「ホントにお見限りだよねぇ? 女子高生でもあるまいし、オトコが出来た途端にソレ?」
嫌みったらしいその云い方に、コイツが久世の相手のひとりだと検討を付ける。
「云うなよ。ほれ、これがお前の見たがってた俺のツレだよ」
久世が身体をずらすようにして俺を振り返る。
途端に店中の視線が集中するのを感じた。
「佐伯…英次、です」
目の前にいる、おそらくは久世の過去の相手に、俺は物凄い不機嫌丸出しの顔をしていたと思う。集中する視線も好奇心だらけで居心地が悪い。自己紹介はかなり口ごもったものになった。
「へぇ、すっごい綺麗な人じゃないか。ヒロちゃんが見せたがらない訳だ」
「べ、別にそんなんじゃ……」
感嘆した様な風を装う相手に、照れた久世は慌てて訂正を入れている。ホントに馬鹿正直な奴だ。
「俺があんたらの見世物になりたくなかっただけだ。それに、俺がいるんだからこんな店出入りする必要も無いだろう」
「ナニそれ、聞き捨てならないね。こんな店って、どんな店さ」
思わず口を付いて出た悪態に、敵意丸出しのそいつがすぐに反論してきた。
「うるせぇ。お前が出入りしているようなトコと一緒にすんな! 俺は男漁りに来てたんじゃねぇ!」
更に云い返そうとした俺は、横合いから久世に怒鳴りつけられた。
いや、『こんな店』と云うのは言葉の綾で、別に店に対してどうこう云いたい訳では無い。
実際のところムカついているのは、この中の幾人の男が、久世の躯を知っているんだろうかという謂れの無い嫉妬だ。
俺は舌打ちをして黙り込む。
「ヒロちゃん、いいのかい? 先週から祥くん帰って来てるけど」
マスターが、ワンフィンガーのグラスを2つ差し出しながら、囁いた。その声の調子が、ひどく優しげなのも気に入らない。
「ゲっ、マジ?」
だが、もっと気に入らなかったのは、『祥』という名前に対する、久世のあまりにもあからさまな態度だ。
「おい、真幸。今度呑み直すぞ」
グラスの酒を一気に煽る久世は、すでにさっさと立ち去る気のようだ。それを、真幸という男は面白そうに眺めている。
「なーんだ、祥の奴と対決させないんだ~? そっちの彼」
云いながら、今度は俺に意味ありげな視線を送ってきた。
「冗談だろ。俺、最近、揉め事はノーサンキューよ」
慌てて俺にグラスを握らせる久世の慌てた様子と、真幸の毒を含んだ視線の意味が解らない程、俺も馬鹿じゃ無い。
「おい、俺にも解るように説明しろ。『祥』ってダレだ?」
「お前、目がいただけないよ。座ってるじゃん」
この後に及んで誤魔化そうとしている訳では無いのは解っている。だが、コイツが明らかに会わせたがっていないのが、勘に触った。
「いいから、話せ!」
つい怒鳴り付けてしまう。
「解ってんだろ? ヤボは止そうぜ」
俺だって、久世の過去の相手なんか会いたい訳じゃ無い。だが、今までと違って、久世が素直に話す様子の無いことに焦れていた。
「知らないんだー、ヒロの初めての男、だよ」
「何だと?」
真幸がニヤつきながら挟んだ言葉は、俺にとって、ひどく衝撃だった。


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