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嫉妬深い男<3> 

「恥ずかしい云い合いすんのやめろよ」
トイレに入った途端に、久世が口を開いた。
「あいつがお前にあんな風に触るからだろ」
俺は個室に久世を引っ張り込む。
「お前、あいつとやったんだろ」
俺が一番引っ掛かっている言葉『はじめての男』――――。
俺は久世のはじめての相手を知っている。久世の幼馴染だと云う、現在の俺の上司で、告白さえしなかった初恋の男だ。
基本的に久世は、そんなところで嘘を付く男では無い。だったら、何故にそんな話になるのか。答えはひとつ。別の意味で『はじめての男』なのだ。そう思うと、ムカついてくる。
「いつまでも、すねてんじゃ無ぇよ」
久世が俺の頬に触れてきた。一体、俺はどんな顔を晒していたのだろう。
「仕方ないだろ。アイツは俺が一番キツかった頃に助けてくれたんだ。恋人がいない間なら寝るくらいするさ」
「じゃあ、もう止めろ。俺がいるんだから」
俺はそっと久世を抱きしめた。そういうつもりで個室に引っ張り込んだ訳では無かったのだが、躯が自然と熱くなる。
唇は自然に重なった。舌を潜り込ませると、ちゃんと応えてくる。
俺はそのまま久世のベルトに手を掛けて――――思いっきり殴られた。


「ここはそういう店じゃ無ぇ! トイレでのプレイは禁止だ」
ぶすっと久世に云われて、俺は渋々従った。盛り上がってきたところで残念だったが、こんなところで無理強いしたら、帰ってからが大変だ。
「はじめて付き合った男だったんだ……」
個室から出る俺の背中で、ぼそりと久世が呟いた。
「遊び人だったからな。手馴れてて、人間不信だった俺が怖がらなくなるまで辛抱強く待ってくれた。優しかったよ。でも、それだけだ」
「久世?」
突然の告白に、心臓飛び出しそうな俺を置いて、久世はさっさとトイレから出て行った。
『優しかったよ。でも、それだけだ』
久世、それが返事か? 俺はそれだけじゃ無いってことか? 良い様に解釈するぞ、俺は。


久世に置いていかれた俺は、盛り上がってしまった雰囲気で、収まりの付かなくなった部分を仕方なくひとり寂しく慰める破目になったが、滅多にくれない久世の言葉に、浮かれた気分を隠せなかった。


「僕だって、悪くは無いと思うんだけど?」
「どっちかに本気の相手が出来るまで、ってことだっただろう?」
戻ってくると、カウンターでは祥が久世を口説いていたが、俺はもう口は挟まない。
「本気な訳だ」
「俺は、な」
「それでいいの? 僕が浮気したらすぐにぎこちなくなっていたじゃないか。コイツの評判は君だって知っているだろう?」
ずいぶんと痛いところを突かれた。真幸も云っていた通り、俺のこの辺りの評判は、何故か非常に悪いらしい。別に俺は騙してやってる訳でも何でも無ぇぞ。
ハッテン場でワンナイトするのは普通だろ? お付き合いするんなら、ちゃんとそれなりの場所行くぜ。TPOくらいは心得ているつもりだ。確かに、俺の容姿と好みで、悪目立ちはしていたかもしれないが。
「やだやだ、この男。何でも自分基準で」
隣で既にへべれげになっている真幸が吐き捨てた。酔ってると、また色っぽい男だな。
「どういう評判かは知らん。俺は会社と家でのこいつしか知らないし、別にそれでいい」
久世の中では、答えは既に出ていたんだろう。あっさりしたものだ。
「おい、佐伯。帰るぞ」
「またね~~、ヒロ。今度はゆっくり呑もうよぉ」
真幸が声を掛けてくるのに、久世はニヤリと笑って俺を見る。
「俺も一緒でいいか?」
俺が真幸に問うと、真幸は嫌そうに顔を上げた。
「仕方ないね。いいよ。もう、やだなぁ、こいつすんごいヤキモチ妬きじゃん。ああ、鬱陶しい」
拒絶されるかと思ったが、許可はあっさりと下りた。
「まったくだ。じゃ、またな。真幸」
カウンターで眠り込みそうな真幸の頭をぽんと叩いて、久世が背をむけた、その時。
「ホント、鬱陶しいくらいに愛されちゃってるよね。いいなぁ、ヒロちゃん」
ぽつりと呟いた真幸の台詞に、久世が固まった。
いつも思うけど、俺の愛情、一番信じてないのはお前だろう。
俺は固まった久世を促して、勘定を済ませて店を出た。
「そいつに飽きたら、声掛けて。いつでも、いいから」
背中から祥の能天気な声が掛かる。だが、おそらく久世は聞いてもいないだろう。


店のドアを開けると、出会いがしらに一人の男とぶつかった。
「す、すいません! ヒロさん」
顔を上げた男は、これまた久世好みだ。お前、ホントにソレ目当てで通ってたんじゃ無ぇのか?
「カズ、真幸の奴、カウンターで寝そうだぞ。早く行って来い」
「うわ、やばい。すみません、ヒロさん、また」
口早に詫びを述べると、カズと呼ばれた男はさっさと店の中へ入っていった。

「上総は真幸目当てだよ。俺は結構敵視されてっから安心しろ」
背中を向けた久世は、俺の心を見透かしたように、口を開く。
まったく、解っているんだか解ってないんだか。
俺は、久世と肩を並べて歩き出した。


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