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特別な男<1> 

身勝手な男番外編です。BARエルミタージュとのコラボになります。


特別な男


<2> <3> <4> <5>完 <おまけ>


「おい、久世。葉書来てるぞ」
「葉書?」
俺は、珍しいこともあるものだと、英次から渡された葉書を受け取った。
親戚とは疎遠だし、学生時代の親しい友人とは、逆に今も密接な付き合いがある。まず、送ってくるならメールの筈だ。
裏を返すと『パーティのお知らせ』とある。
「エルミ?」
俺が妙な声を上げたのに、英次も何だ?と覗き込んで来た。
「エルミでパーティやるんだと」
「『エルミタージュ』で? あそこ、そう云うイベントとは無縁な感じだったけどな」
エルミタージュと云うのは、俺が学生の頃から常連になっているゲイバーだ。
マスターとバーテンの二人でやっている、落ち着いた雰囲気のいいバーで、結構お気に入りなのだが、英次と付き合いだしてからは、とんとご無沙汰している。
まぁ、俺だって健康体の男であるからには、そういう欲求を解消する場所に行く事だってあるワケで、そのひとつが『エルミタージュ』であったことは認めよう。
だが、エルミはゲイの男たちが集まるだけの、普通のバーだ。出会いの場ではあるので、時折いいなと思った相手とホテルへ出向くこともあったが、それはあくまで『時折』であって、大抵は大人しく呑んでシモネタの一つもかまして帰るのが、通常だ。
「で? 行くのか?」
「う~ん」
考え込んだのには訳がある。クールそうな外見に似合わず、英次はかなり嫉妬深い。お互い会社の同僚に過ぎなかった頃の下半身事情に妬かれても、困ってしまう。
ただ、エルミタージュという場所でのいつにない、初めてのパーティというシチュエーションに惹かれるものはあった。


「で、結局、お前も付いて来るのか?」
週末の新宿で、ソフトスーツを着込んだ英次は、妙に目だっている。正直、一緒に歩きたくは無かった。
自分にコンプレックスのある俺は、面食いの傾向がある自覚はある。俺の過去の恋人たちはどいつもこいつも派手だった。
かといって、そいつらが自分に金を掛けていたと云う意味では無い。自分を演出する方法を心得ているのだ。自分に似合う色見やスタイルを知ってか知らずにか使っている。
しかも、顔は男にしては妙に綺麗なタイプが多いから、目立つ事この上なかった。そこで俺が『どうだ。俺の恋人は綺麗だろう?』と主張するようなタイプだったら、良かったのかもしれないが、俺はそんな彼らに気後れし、街を闊歩する男の後ろを一歩下がって歩くのが精々だ。
ところが、英次はいつも並んで歩きたがる。今日もそうだ。
「開店祝いって、あんなもんで良かったのかな?」
今日のパーティは、マスターの主催では無い。新装開店を祝って、真幸と杜さんが企画したものだ。
杜さんはマスターの友人で、真幸と同じく、開店当時からの常連だ。マスターと似た筋骨隆々の男っぽいタイプだが、マスターと違い牡の匂いをぷんぷんさせているような男で、正直、俺は苦手だ。
ただ、マスターは店を共に作ったと云う、別れた恋人に対する意地なのか、あの当時からまったく店の様子を変えることをしなかったから、『新装開店』と云う言葉には、興味を惹かれた。
「俺たちの周りには店を持つような甲斐性のある奴なんかいなかったからなぁ」
俺はつくづく、自分をはじめとする周囲の人間たちが、サラリーマン体質であることを嘆く。開店祝いと云われて思いつくような品はまったく無かった。
「確かにな」
仕方なく、俺と英次が選んだのは、樽をモチーフにしたペアの木製のカップだ。マスターと圭くんが店で使えるように。
エルミの前に行くと『本日貸切』の札が下がっている。
表から見る限り、エルミは改装したような様子は無かった。
木製のドアを開くと、黒で統一されたインテリアも元のままだ。俺は拍子抜けすると同時にほっとした。やはり馴染みの店はそのままであって欲しい。
「よう、ヒロちゃん。久しぶり」
「そっすね。何時以来でしたっけ?」
「お前が顔出さなくなるちょっと前だから、かなりになるな。あ、そいつが噂のカレ?」
結構単純な杜さんは、俺が避けていたなんて考えも付かないようだ。俺は身体をずらすようにすると、英次を紹介した。
「英。マスターの友達の杜さん」
「よろしく」
挨拶はしたものの、英次はあいも変わらず、ぶすっとしたまま、手を差し出す。
コイツ、妙にカンがいいんだよな。杜さんは俺に迫っていた男の一人だ。もっとも、俺は筋肉系は御免なので、応じたことは無い。
「マスターと圭くんは?」
「後で来るよ。真幸に足止めしてもらってる」
「足止め???」
「二人には内緒ってことだろう。何を企んでるんですか?」
英次の言葉に、俺はぎくりとなった。真幸がいると思って安心してたんだが、不味かったか? 見回すと、他に客の姿も無い。
「妙な顔しないでくれよ。何も企んでないって。真幸に聞いてないのか?」
「何を、ですか?」
英次が、俺と杜さんを遮るように、間に立った。
「やれやれ、カレシも怖いなぁ。とりあえず『新装開店パーティ』は嘘じゃ無い。何が新装開店なのかは、全員揃ってから」
「マスターのお祝いって訳っすか?」
「ま、そういうことだ。酒はいいモルトを揃えたから、マスターも満足してくれるんじゃないかな。料理はちょっとしたつまみくらいしか出来なかったけど。真幸の出張土産のチーズが結構イケる」
「お祝い」
呟いた英次は、じっとカウンターに並べられたつまみの皿を見ながら、何か考え込んでいたかと思うと、ぱっと顔を上げた。
「おい、隆大。マスターってうるさい人か?」
「え? 何だよ、ソレ」
「キッチンいじられるの嫌がるとか」
何だ? 質問の意味が判らねぇ。
「いや、結構、大雑把。酒にはこだわりがあるけど、料理はさほど得意な方でも無いし」
俺がきょとんとしているのを見て、隣から杜さんが質問を引き取った。
「お祝い、なんだろ。これじゃ、寂しいと思わねぇ?」
にやりと笑った英次に、杜さんはやったとばかりに手を叩く。
「材料だけは揃ってるんだけど、結局、簡単なものしか出来なくって。悪いな」
カウンターに入った英次に頭を下げてはいるものの、杜さんの顔はちっとも悪いとは思っていなさそうだ。
確かに、カウンターに並んでいるのは、野菜を敷いた上に、チーズやクラッカーを並べたようなものばかりで、華やかさに欠ける。


英次はうちのキッチンにいるときと同様に、慣れた手つきで料理をし始めた。
「人数は?」
「十三人」
必要最小限の質問に、杜さんは澱みなく答える。何を考えているのかは知らないが、少なくとも、ここでパーティをやるのは本当らしい。
俺はやることも無いので、煙草に火を点けた。呑んだときくらいしか吸わないのだが、英次の料理になんぞ、俺は手は出せない。時間を潰す方法が無かった。


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