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特別な男<4> 

「圭吾」
「マスター」
マスターがカウンターに座った圭くんの隣に座り込む。
「今日は仕事中じゃないんだから」
「はい。愁輔さん」
見詰め合う二人の視線に、俺は正直、ケッてな感じだ。
俺が圭吾と寝たのは、圭吾がまだこのエルミにバイトで入ってから一年も経たない頃だ。自分自身の性癖に悩むのは、大抵誰にでもあることだが、マスターの事が好きで好きで、どうしようもない想いを抱えている様が、痛々しかった。まるで、昔の自分を見ている様で、俺はつい手を出してしまったのだ。
優しくしてやると、素直な圭吾は、簡単に懐いてきた。可愛いと思った。マスターじゃなく、俺を見て欲しい。
バージンだと聞いて、思わず鼻息荒くなっちまったくらいだ。絶対に落ちると確信していた。ところが、圭吾はそれほど流されやすい性質では無かったようで、寝た後に会った時には、憑き物が落ちたような顔つきになっていて、俺は自分の当てが外れたことを思い知った。
未だに俺には、あの時、何をしくじったのか解らない。
いや、そんな俺だからこそ、圭吾が落ちなかったのだと、今では判っている。それに、その御蔭で、俺は現在英次と付き合っている訳だから、振られたことに感謝すべきかもしれない。
圭吾のまっすぐな瞳は、今も変わらずマスターだけを見つめていた。
微笑ましいやら、羨ましいやらで、俺は最初に感じた、やってられるかと云う気分も何処へやら、寄り添う二人を呆けたまま見つめてしまう。
「ヒロちゃん。後ろで怖い人が見てるよ」
マスターに微笑まれて、俺はぎくりとして後ろを振り向いた。いや、本当なら後ろの男がとんでもない誤解をしているなど解かりきっていたし、振り向きたくも無かったのだが、それ以上に、マスターの目付きが怖かった。口元は確かに微笑みの形をしてるんだが、目が笑ってねぇ! 

「そんなに未練たっぷりなのか? バーテンに」
耳元で英次が囁く。俺に廻された腕は拘束する勢いだ。
やっぱり、そういう誤解をしてやがる。
「そろそろ帰ろうか? 圭吾」
いや、マスターまで、妙な誤解してるだろ?
「うん。そうだね。今日はありがとう」
俺に囁いた英次の声も、マスターの冷たい目も気付いていない圭くんは、マスターの腕の中で嬉しそうに微笑んだ。駄目だ、コイツはぜんっぜん解かってねぇ。
マスターに促されるままに、圭くんは、幸せそうな笑顔を大安売りして、店を辞した。
「じゃ、俺たちも帰ります」
汚れるからと脱いでいた、ソフトスーツを羽織って、英次が俺の腕を引く。
いかにも、唐突なそれを、真幸と杜さんは心得たとばかりに、見送った。


店の外へ出ると、英次は迷わず、タクシーを止める。
おいおい、まさか新宿からうちまでタクシー使う気か? 万札飛ぶぞ。
「おい、こんな金の掛かる真似……」
「うるせえ。その辺に連れ込まれたくなきゃ、黙っとけ」
俺をタクシーへ押し込みながら云う英次の顔は、既に殺気走っている。俺は素直にそのままタクシーへ乗り込んだ。
この後、何をされるかなんて解かりきっている。
こんな獰猛な顔になった英次に逆らうなんて、馬鹿のすることだ。
今夜は逆らわないに限る。多少のご無体はされるだろうが、嵐が通り過ぎるのを待つしかないだろう。




家の鍵を開けるのも、もどかしいと云わんばかりの佐伯は、ものすごい形相で、俺の躯をベッドの上に突き飛ばした。
俺は上に覆いかぶさってくる英次の躯を素直に受け止める。
息を吐く間も与えられず、唇を塞がれた。
「あいつ、お前に気があるんだ」
長い口付けの間に、漏らされた呟きに、俺は目を丸くしてしまう。そりゃそうだろ? 圭くんのことはとっくに過去の話だ。
「一体、誰に妬いてるんだ? お前、可笑しいぞ」
やっと離した唇で、そう呟く。
「お前、鈍すぎる」
何で分からないんだと云いたげな英次に、また唇を塞がれた。
息も止まりそうなくらいに、激しい口付け。いつも器用に俺の服を乱す英次の指は、今日はその器用さを何処かへ置いてきたように、もどかしく服の上から全身をまさぐる。
強引に胸元に滑り込んだ手に、シャツのボタンがはじけ飛んだ。
スーツも脱いでいなければ、ネクタイも解いていない、なのに、シャツの前ははだけて、胸を晒している。


*これより先、15禁。ご承知の上、お進みください。

何をそんなに焦っているのかは判らないが、英次は現れた胸にむしゃぶりついた。
味わいつくすように舐めまわし、舌を使う。
「真幸も、恭平も、圭吾だって、もうパートナーがいる、だろ? 何が、っあ、そんなに」
歯を立てられて、俺の反論は口の中で吐息に変わった。
「真幸は、お前の童貞喪失の相手で、恭平って野郎はお前に未練たっぷり。バーテンにはお前が未練がましいじゃねぇか。そんなに、バージンは良かったか?」
「真幸は本気じゃ無い。恭平は俺が中途半端だったからだ。圭吾はマスターのことを思いつめてたから…」
お互いの怒張を押し付けあいながら、囁く言葉はお互いに同じだ。解ってくれと。
「じゃ、あの杜って野郎は? マスターはすっかりバーテンに骨抜きって風だったが」
「杜さん? 勘弁しろよ。迫られたことはあるが、好みじゃねぇ」
この野郎は、どうしてこう鼻が利くのか。俺の昔のオトコ関係モロばれじゃねぇか。
「美月とか云ってたな。野郎はどうだ? 好みだろう」
首筋に舌を這わせながら、時折、噛み付くように吸い付き、痕を残す。そうされる度に、俺の躯に震えが走った。
「美月? アイツは俺が気に入らないんだ。喧嘩のあげくに殴り倒したことだってあるんだぜ」
確かに容姿的には、美月は俺の好みかもしれない。冷たい感じのする容貌に、人を食ったような微笑。ただし、抱いて可愛がりたいタイプじゃ無い。抱くのなら、もっと可愛い系の子の方がいい。例えば、圭吾や恭平のような。
「それは聞いたよ。祥と寝てた奴だろう。お前、本当に鈍いんだな」
「、ッう」
本気で耳朶に噛み付かれて、俺はうめいた。それを癒すように、英次の舌が這う。
「あの野郎はお前に抱かれたいんだ。祥と犯ってんのは、間接セックスって奴さ」
「んな、訳、あるかッ、ん、」
敏感な部分をすり合わせながら、耳元で囁かれた。焦れったい動きが妙に俺を煽り立てる。
「お前だけだぜ。気付いて無いのは。多分な」
まさかと思いながらも、思い当たる節が無い訳じゃ無い。
美月が俺に妙に絡むのは、俺が抱かれている時だけだ。オトコの好みがかぶるのかと思っていたが、そう考えれば納得が行く。
「お前、ああいうオトコは嫌か」
「好み、だよ。お前とタイプっ、似てんだろッ」
やっと、ジッパーが下ろされて、俺自身に細い指が絡んできた。
「でも、俺が、今、抱かれてんのは、お前、だけだッ」
俺は英次の首にしがみつくように腕を伸ばす。英次は俺の上でにやりと人の悪い笑いを閃かせた。
「そりゃ、光栄だ」
しがみついた腕を外して、間を入れず、英次の舌が、おれ自身を舐め上げる。
「ん、ハッ、」
いきなりの直接的な愛撫に、焦らされた俺の躯は、みっともないくらいに素直な反応を返してしまった。
「光栄ついでに、お願いがあるんだがな」
俺を咥えたまま英次がしゃべるのに、今にも達しそうな俺は、そのままうなずく。
ところが、俺の願いを知っている筈の英次は、無常にも俺から唇を外した。
俺は思わず、何故と、すがるような視線を向けてしまう。だが、英次は俺を真剣な眼差しで見下ろしていた。

「お前、俺は抱きたくないか」
「英次?」


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