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カムアウト?<身勝手な男・番外> 

再びの佐伯の家族登場です。




「こんばんわ」
そうにっこりと微笑まれて、俺はまじまじと目の前の男を眺めた。
微笑んだ顔は、結構な童顔だ。兄貴の同僚だっていうからには三十台前半ってとこだろうが、顔だけ見てると大学生でも通用しそうだ。
但し、ガタイがかなり立派なので、全体的な印象はどうしてもそっちの方が勝つ。

「まぁ、いらっしゃい」
母さんはしごく嬉しそうに、その目の前の兄貴のカレシを出迎えた。
いや、一応カレシだろうと検討はつけているものの、実際問題、英次兄から紹介された訳では無い。

「すみません、俺までお邪魔してよろしかったんでしょうか?」
「ええ。にぎやかな方が楽しいでしょう。でも、この子お友達少なそうなんですもの」
ころころと笑う母さんに、英次兄はうんざりとした顔をしたが、横から口を挟むと余計に長くなるのは経験上よく判っている。
俺たちは母さんに逆らわないように、はしゃぐ姿を横から眺めるだけだ。
「おばさま。準備が出来ました」
リビングから、可愛らしい悠里の声が響く。
それに、英次兄が怪訝そうな顔をした。あ、そうか、兄貴はまだ悠里と会ってなかったっけ。
久しぶりに家に帰ると、子供の声。驚くよなぁ……。

「さぁさ、今日は英次が主役なんだから、入って」
母さんが親父と総一兄貴がいるリビングへと英次兄を押し出す。
途端に、パンパンとクラッカーの音が鳴った。
「英次。昇進おめでとう」
「お前が、昇進できるとはねぇ」
英次兄は、2年前に上司の紹介の見合いを断って、昇進を蹴った。ところが、今度は他部署に移ったにも拘わらずの昇進だ。また巡ってくるとは思わなかった昇進話に、総兄と親父は好き勝手云っている。
「あの、おめでとうございます」
「ああ、ありがとう」
目の前に現れた雛も稀なる美少女が、英次兄に花束を差し出した。また、これが嫌味なく似合う人なんだよなぁ。英次兄って。

英次兄が目線で、『誰?』と聞いてくるが、親父がその前に、後ろから入ってきた兄貴のカレシを目ざとく見つける。
「君が、英次の?」
「同期の久世です。はじめまして」
「同期なのか。まぁ、座りたまえ。とりあえず、自己紹介と行こう」
親父はやんわりと兄貴と久世さんを促した。
「佐伯正一。英次の父だ。城南医大病院で内科医をやっている」
「英次の母親の香澄です。同じく城南医大の外科医よ」
「俺は英次の兄で総一。別の病院だけど、小児科医だよ。こっちは俺の婚約者で」
「悠里です。よろしく、英次さん」
悠里はまだまだ子供子供した動作でぴょこんと頭を下げると、英次兄にも向き直って頭を下げた。
「え? はぁ? 兄貴、いつ婚約なんかしたんだよ」
「お前が帰ってこない間だ。だから、わざわざお前の昇進祝いをやろうって話になったんだよ」
久世さんが、総兄の言葉にしまったと云う顔になった。あ、そうか。英次兄、ずっと久世さんのトコロか。
「それから、こっちが」
そんな久世さんに気付いた筈の総兄は、そ知らぬふりで俺を指し示す。
「あ、弟の五実です。警備員やってます」
「こちらこそ、よろしく」
俺が頭を下げると、久世さんもきびきびとした動作で頭を下げた。
う~~~ん、いかにも体育会系。こんな人がホントに英次兄と付き合ってんの?

俺のイメージだけど、兄貴と付き合ってるって云うと、もっとこう…オンナっぽいっつーか、おかまっぽいっつーか。そういう人を想像してたんだけど。久世さんってホントに見たまんまの男っぽい体育会系の人だな。

「でもさ、総兄、この子いくつだよ? まさか、患者に手を付けたワケじゃねーよな?」
「下品な云い方は止してもらおう。ちゃんとした恋愛だ。子供だろうが本気の気持ちは、きちんと受け止めて話はするさ」
「あ、そう」
英次兄は、悠里に向き直ると、ちょっと考え込むように顎に手を当てた。
「まぁ、この堅物相手じゃ大変だとは思うけど、よろしく頼むな」
にっこりと微笑んだ英次兄に、さすがの悠里もぽわんとした顔になる。やっぱり女の子だよな~。
綺麗なものには弱いらしい。
同じ親から生まれただけあって、俺たちは似てないワケじゃ無いが、親父と母さんのいいところが絶妙に組み合わさっているのが、英次兄の顔だ。女の子どころが、男だってぽーっとする。
「おい、英次。あんまり誘惑するんじゃ無い」
その悠里を、総兄が後ろから奪うように抱きしめた。嫉妬丸出し。みっともねーの。
くすりと笑った俺の耳に、横合いから小さな舌打ちの音が聞こえた。
見ると、久世さんはほんの一瞬だけ、不愉快そのものの顔になっていたが、英次兄が振り向いて、悠里と総兄をちゃかし始めたときには、すでに微笑を浮かべている。
俺は、思わず噴出しそうになるのを堪えた。
可愛い人じゃん。英次兄には、多分こんなとこ見せてないんだろうな。というのが如実に判って、俺はいっぺんに久世さんに好意を持った。

親父と母さんは、乾杯が終わって、食事を始めても、久世さんを質問攻めにしている。
あの、人付き合いの悪い英次兄がうちに連れてきたという事実だけで、カレシだと白状したようなもんだ。
多分、気付いてないのは、当の英次兄と久世さん。それに悠里くらいなものだろう。
「いい体格してるなぁ。スポーツは何かやってるのかい?」
「柔道を。週一で道場に通う程度ですが」
「どのくらいやってるの?」
「子供の頃からですから、かれこれ30年近くだと思います」
「あれ、久世君っていくつ?」
「三十四です」
「見えないね。若いなぁ、君」
「あら、英次より年上なのね」
「ああ、久世って、もしかして、久世隆大? 東工業の?」
総兄がふと口を挟んだ。
「ええ。そうです」
「怪我して引退したんだって聞いたけど、柔道は続けているんだね」
「え? 久世さんって有名な選手なの?」
俺は好奇心丸出しで乗り出した。ますます解かんねー。そんな人が何で英次兄と同じ会社なワケ?
「俺と同年代なら結構知ってるんじゃないか? インハイで準優勝したんだよ」
「怪我はすぐに治ったんですが、精神的なショックもあって、一時期はまったく。スポーツ推薦の予定の大学も駄目になったんで、別の大学へ」
「ああ、それで英次兄と同期なのか」
「人には触れられたくない事情ってモンがあるんだよ。もういいだろーが」
俺や総兄が乗り出して会話しているのに、英次兄が割り込んだ。
ちょっと睨むような目つきになっているのに、気付いているのかいないのか。
「久世さん。英次兄ってどうですか? 会社で」
「会社で? 仕事は出来るよ。上司が結構無茶を云うタイプだけど、ちゃんと先回してやれる男だし」
「んなことどーだっていいだろ」
口を尖らせて、すねるような口調で英次兄が反論する。と云うか実際にすねてるんだろう。連れてくるんじゃなかったと思っている筈だ。
「え~、よくねーよ。英次兄が上司だぜ?」
「第一、お前が昇進出来るというのが不思議だろう」
「社長さんも太っ腹よね~」
「一度、蹴った話だろう?」
英次兄に、どっと家族中の反論が集中する。
だが、最後の言葉に、視線を逸らしたのは、久世さんだった。

「久世さん。ご気分でも?」
「ああ、大丈夫。心配しないで」
悠里がそっと覗き込むのに、優しく笑い返すが、その顔には精彩が欠けている。
―――――もしかして……。

「以前、英次兄が見合い蹴ったのって、久世さんと付き合ってたからですか?」
「な…ッ!」
俺の質問に、久世さんは、食後のコーヒーを噴出しそうな顔で固まった。
確定だ。
「ああ。そうだよ。まだ付き合ってはいなかったけどな」
「お、おい、英次…」
普段、そう呼んでるワケね。
「兄貴たちがわざわざ祝ってくれるなんて、珍しいこともあると思ったら、これは久世の身上調査か?」
「まぁね」
母さんは悪びれもせずに、しれっと答えた。
「だって、こんなことでも無ければ、何時連れてくる訳? 子供の相手くらい見たいのが親の心情よ?」
「相手が男でも快く迎えてくれるのか」
「快く迎えたと思うけれど? ねぇ、久世君?」
いきなり向き直られて、久世さんは明らかに慌てている。
「あ、はい、まぁ……」
確かに、母さんたちは待ちかねていたし、態勢的には大歓迎だった筈。
「大体、貴方たち、隣町のスーパーなんかで買い物してるじゃないの。しかも、いちゃつきながら」
「い、いちゃ……」
母さんの衝撃発言に、久世さんは真っ赤になって口をぱくぱくさせている。
「見たなら声掛けろよ!」
「掛けられませんよ。あ~んなラブラブ加減で」
「ラブ…ッ?」
素っ頓狂な声を上げたのは久世さんだ。いちいち過剰に反応するのが、可愛いというか何というか。
「久世さんは恥ずかしがってるんだから、止めなさいね。普通は人目が気になるもんなんだから」
英次兄が母さんに説教されるのを、男連中はひたすらため息を付いて眺めている。
下手に口を挟めば、その矛先は自分に向くからだ。
久世さんは、身の置き場が無さそうにひたすら下を向いている。

親父が久世さんの肩を叩いた。
顔を上げた久世さんの前に、親父からグラスが差し出される。
親父の手にはウィスキーのボトルがあった。
「ま、呑みなさい。しばらく終わらないから」
「は、はぁ」
釈然としない様子で、それでも久世さんがグラスを差し出す。
母さんと英次兄の言い合いは、何時果てるともなく続いた。


<おわり>

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~ Comment ~

もちろん、またやります。

一応、手元にあるものをUPし終えたというだけで、もちろん、まだまだ書くつもりです。よろしくお願いします。
[2008/10/23 21:51] 真名あきら [ 編集 ]

NoTitle

身勝手な男シリーズ、大好きです!!!
暫くお休みとの事ですが又いつかお願いします!お待ちしていま~す♪
[2008/10/21 21:50] あさき夢みし [ 編集 ]















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