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俺の主治医<9> 

「田沼、後は任せたぞ」
「ああ。了解」
顎と頬に大きな湿布を張った田沼が軽く手を上げる。病院はそう頻繁に人が訪れる訳ではないが、訪れる患者はどう見ても、訳アリだと云うのはばればれという奴ばかりだ。
克利が神田組の子飼いの医者だと云うのは、きっと知れ渡っているのだろう。一日、横で雑用を手伝いながら、神田のオヤジの克利に対する信頼を垣間見た気がした。

地下で、克利の車に乗り込む。
その間も、警戒は怠らなかった。神田の信頼を得ているとなれば、狙うやからも自然と出てくる筈だからだ。
「先生、何処へ」
克利の車が右折したのを感じて、亮が問う。マンションへ帰るのなら、先ほどの交差点は左折する筈だ。
「買い物と食事だ。付き合え」
「はぁ。本気なんすか?」
自分なんかと買い物や食事をして楽しいとは思えなかったが、付き合えと云われれば、従うしかない。


「克利先生、ここっすか?」
「テイラーはもう少し着こなせるようになったらでいいだろう。今日はとりあえず、吊るしで充分だ」
そう云って連れてこられたのは、デパートの紳士服売り場だ。
「ワイシャツが欲しいな。それにスラックスを。ネクタイも見立ててくれ」
「あ、あの、俺の服っすよね? それなら、こんなトコで無くても」
「俺と一緒にいるなら、それなりになってくれ」
そう云われては黙らざるを得ないが、そこらの服に下がっている値札の桁を見て、亮はすっかり腰が引けていた。
「ハンカチ一枚で4桁っすよ。ワイシャツなんか5桁行くんじゃ……」
「普通の男はそれくらいのものを使うもんだ」
「お客様、これなどいかがでしょう。こちらは、おとなしやかなお顔立ちですから、パステル調などがお似合いですよ」
「それ、いいな。ブルー系のバリエーションでそろえてくれないか」
亮が戸惑っている間に、克利と店の男との間で、どんどん話はまとまっていく。
結局、押し切れられた亮は、朝から借りた克利のワイシャツを脱いで、そこで揃えたスーツ一式に着替える破目になった。


何とも落ち着かない。
それが亮の正直な感想だった。
「メシ食うためにホテル来んのかよ。金持ちって解っかんねー」
心の内でそう呟いて、亮は克利の後ろをついて歩く。克利なら最上階のレストランにでも行くのかと思っていたら、向かったのはロビーの噴水を見下ろす、少し砕けた雰囲気の中華レストランだった。
「何が食べたい?」
「何でもいいっす。テキトーで」
克利はボーイを呼ぶと、亮には判らない言葉で料理の名前を並べる。
「中華だと箸が使えるし、気楽だろう。マナーなんか気にしなくていいから、たくさん食べるといい」
並べられた料理を前に、克利はにっこりと微笑んだ。
「いただきます」
箸をつけると、確かに美味い。
こんなに美味い飯を食ったのは久しぶりで、亮の箸は止まらなかった。何しろ、ここ2ヶ月、自分の手料理ばかりで、いい加減飽き飽きしていたのだ。
我に帰ると、亮の食べっぷりを眺めていたらしい克利が、じっと自分の口元を見つめている。
気付いた後は、食べにくくて仕方が無い。何だかチェックされている気分になった。
「あの、食わないんすか?」
「食べているさ」
確かに克利の箸は動いているが、目線はずっと亮の口元に固定されている。
非常に居心地の悪い食事が終わり、今度はロビーの奥にあるバーへと連れて行かれた。
「酒は? イケる口か?」
「強いんじゃねーかとは思いますが」
そう亮が答えると、バーテンダーに頼んだカクテルが亮の前に置かれた。
普段は安いウィスキーかビール。せいぜいブランデー程度くらいしか飲んだことは無い。
カクテルなんて、甘いだけの女の飲む酒という感覚しか無かった。
だが、結構アルコール度数は高いらしい、のどの奥が焼けるような感覚がある。
しかも、すっきりとしていて呑み易い。
「美味い」
「だろう。ここのカクテルはお奨めだ。お代わりは何にする?」
克利は慣れた風に、2杯目のカクテルを頼んでいる。
「いや、俺はいいっす。先生が呑んだら、帰りの運転は俺っすから」
まさか、二人して飲酒運転はヤバイだろう。いや、交通法規云々ではなく、目を付けられてヤバイのは克利も同じだからだ。
「今日は泊まる。気にしなくていい」
カクテルを傾けながら、くすりと克利が笑う。それだけで、亮は克利がどういうつもりで自分をホテルへ連れ込んだのか悟った。
「じゃ、遠慮なく」
むっとした事を隠しもせずに、亮は2杯目のカクテルを煽った。


*これより先は15禁ページとなります。それでもよろしければ先へどうぞ。
エレベーターに乗る頃には、亮の足はフラフラで、克利に抱えられるようにして、部屋へと入る。
ベッドに投げ出された躯に、当たり前のように克利が圧し掛かってきた。
「せっかくのスーツがしわになるっす、脱ぎます」
「気にするな。脱がせる為に買ったんだからな。俺が脱がしてやる」
あまりに親父くさい台詞に、思わず亮は噴出した。腹を抱えて笑い転げる。
「何すか、ソレ。エロ親父っすか?」
「暴れるな。こら、酔っ払い」
ゲラゲラ笑う亮を宥めながら、器用に克利は亮のスーツを剥ぎ取った。
「エロ親父に相応しいことをしてやるぜ」
「んッ、は……」
克利の手が、亮の背中を這う。微妙に感じる部分を避けるそれに、亮は躯を震わせた。
「克利、せんせ、い……」
自棄になって呑みすぎた。亮の躯はアルコールが廻っている所為か、やたらに敏感だ。
「どうした? 今日は可愛いな。おしおきしてやろうと思って連れ込んだのに」
「おしおき?」
聞きなれない単語に、亮が酔って潤んだ目を克利に向けた。
「俺以外の男に尻を触らせただろ? ああいうのが好みなのか?」
「な、何すか?」
克利の云うのが黒川のことだと見当はついたが、別に好きで触らせた訳じゃ無い。それに、この云い方だとまるで。
「妬いてるみたいに聞こえるっす」
自分で云っておいて、亮はあまりにも自意識過剰だろう、俺。と心の中で突っ込みを入れる。
「妬いてるんだ。いい加減に解かれ」
「何ッ…を、っす?」
俺に惚れてるみたいに聞こえっすよ? 先生。
頭に浮かんだ単語は、笑い飛ばしたく成る程チープだ。
「まぁいい。躯に思い知らせておいてやる」
そういいながら、圧し掛かってきた克利の表情は、亮が始めて見る優しい顔をしていた。


躯を這う手は優しく、それでいて淫らだ。
亮はもう息も絶え絶えだった。
酔った躯はいつにも増して快感をダイレクトに伝えてくる。亮は喘ぎを殺すこともとっくに放棄していた。
「可愛いぜ、亮」
「か、つとし……せん、せッ、」
もう、何度目なのか。克利が自分の中へ欲望をぶちまけたのを感じる。だが、感じすぎる躯は一向に終わりを示そうとはしなかった。
ゆるゆると動きながら、克利は亮自身へと手を伸ばす。
「感じてるな。嬉しいぜ。やっと俺を覚えたのか?」
耳元で囁かれて、カッと全身が熱くなる。それは、快感でなのか、それとも屈辱でなのか、亮自身にもよく判らない。
「さけ…の、せい…っす…」
「そうか。強情だな」
亮の強がりだと云うのは、躯を合わせている克利には丸判りだろう。軽くいなされた。
「そういう可愛い突っ張りを見ると、突き崩さずにはいられないな」
「せん、せい?」
不穏な声に、思わず克利を振り仰いだ瞬間、激しく揺さぶられ始めた。
「は、あ…ンッ、くッ…」
女の様に高くは無いが、自分でも耳を塞ぎたくなるくらいの派手な声が漏れる。
「せん、せ…、かつと、しッせ…」
掴んだ腕はその動きを止めようとしているのか、すがり付いているのか、もはや亮にも判別がつかなかった。


呑みすぎと、昨夜の激しいセックスとで声はがらがらだ。
起き上がった瞬間、腰の鈍痛と、妙な体位を取らされた所為で痛む関節に、再びベッドに躯を沈み込ませる。
「ちくしょ、」
亮は何が悔しいのか解らぬまま呟く。
まるで自分を好きだと云われているかのような言葉に、思わずほだされそうになった。自分は所詮、玩具に過ぎないことは解っているつもりでも、優しくされれば誤解もしたくなる。
ふと、サイドテーブルのメモが目に付いた。
『今日は病院には来なくていい。先に帰って休んでいるように。身体が辛いならタクシーを使いなさい』
メモの横には一万円札が添えられていた。
まるで小さな子供に対する様な書き置きに、亮の舌打ちを禁じえない。この扱いは女か、せいぜいペットだ。
無理やりに動かない躯を起こすと、つと、内股をどろりとした感触が伝う。克利の残したものだと云うことは、見るまでも無い。
自覚した途端に、泣きたいような惨めな気分になる。這いずるようにしてバスルームへたどり着いた。後の始末をする瞬間は、本当に何もかもが嫌になる。
力の入らない躯を叱咤して、何とか後始末を終えた頃には、もうフラフラだ。
もう一度、ベッドへ戻りたいくらいだが、こんなホテルになど泊まったことの無い亮は、チェックアウトが正午近くであることなど、考えてもいない。朝には清掃が入ると思い込んでいる為、ふら付きながらも支度の手を止めることは無かった。
それでも、シャツはノータイで第二ボタンまでが開いたままだ。
その格好はだらしなさ全開で、とても普通の勤め人には見えない。
だが、ヤクザというよりはホストに近いかもしれない。しかも、勤め明けで朝帰りのだらしの無いホストだ。
亮は鏡に映る自分の姿にため息をついた。
もう少し、凛々しかったり、雄雄しかったりすれば、ここで克利相手にセックスの相手などさせられずに済んだだろうか?

いや、その前に、もっとヤクザとして潰しが効いていたかもしれない。
少なくとも、現在のように舐められることは無かっただろう。
元々、ナイナイ尽くしでコンプレックスを抱えた亮は、ここ数ヶ月で、己の容姿に対するものをますます抱え込みつつあった。


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