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憧憬の王城<24> 

「セイ様。トゥルース様よりお手紙です」
「やっとか。結構、掛かったな」
いずれ、何かを云ってくるだろうとは思っていた。大体、レティメイルを誠吾に紹介したのはトゥルースなのだ。これで何も云ってこなかったら、逆に、翻意ありと見なされても仕方が無い。
「お祝いの席を設けるそうです。出向かれますか?」
当たり前すぎることを聞く、レドウィルにうなずく。最も、レドウィルだとて、ここで誠吾がうなずかないとは思ってもいない筈だ。
「まぁ、出方をうかがっていたんでしょう。あの方は用意周到な方ですから」
「どう出たら、自分に有利に働くか。ある意味、解かり易くていいがな」
だが、どうやらトゥルースは、ソラリエの毒殺には無関係らしい。少しでも関わっていれば、即座に申し開きに訪れただろう。その点は抜かりの無さそうな女だったと、誠吾はいつかの茶会での様子を思い出した。
「また、あの疲れる茶会か」
「耐えてください」
深いため息を吐いた誠吾に、レドウィルは容赦ない一言を吐く。確かにそうするしか無いのだが。
「愚痴ぐらい吐かせてくれよ」
と、誠吾は厳しい秘書に聞こえないように呟いた。


「まぁ、セイ様。おめでとうございます」
満面の笑みを浮かべて、誠吾を出迎えたトゥルースに、どっと疲れを感じる。
だが、これでめげる訳にはいかない。誠吾は気を取り直して、まるで窓口でクレーム客の対応をした時のような、最上級の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。トゥルース様」
「まぁ、敬語など要りませんわ。お披露目が終われば、すぐにアデイール様は王になられますわ。そのセスリムが私どもに敬語など必要ないでしょう」
のっけから狸と狐の化かしあい。透けて見える本音を、微笑と云うカーテンで覆い隠す。
今日も誠吾はサディを伴っていた。
敵地同然のところに乗り込むのに、サディ以外は伴うことは許さないと、レドウィルとアデイールは声を揃える。
「お前は気にならないのか?」
レドウィルはともかく、アデイールにとって、サディユースは誠吾という番いの相手を奪い合った当人だ。
「一族の間では、新月の夜のことは、不問に規すことになっている」
要するに、獣になった間の罪は問わないということだ。
「確かに、完全な獣になっている訳ではないが、引きずられる連中は多い。それを逐一あげつらってはいられない。まぁ、当人たちさえ納得すればという注釈つきだがな」
「当人たちさえ?」
その注釈で、誠吾にも想像は付いた。血の気の多い若い番いの無い連中が、獣になってうろついているのだ。何が問題かなど解かりきっている。
一人を争って、相手に怪我をさせるか、それとも知らずにうろついている相手を強姦でもするかと云うところだ。
「なるほどね。じゃ、俺も気にしない方がいいのか?」
振り向いた俺に、アデイールは少しだけ複雑な表情でうなずいた。俺は、アデイールを抱きしめる。
「嫌なんだろう? 気をつけるさ。ちゃんとな」
王者の鷹揚さを求められると知ってはいても、まだ、アデイールは子供だ。誠吾が振った形にはなっていても、不安なのだろう。
それは良く解かっている。アデイールのコンプレックスの一つは、自分が子供であることだ。誠吾が自分を選んだと知っていても、大人の男がその隣に並ぶのはいい気はしないだろう。ましてや、サディは誠吾を己の番いにと望んでいたのだ。
「お前が心配するようなことは、何も無い。むしろ、俺が気まずいくらいだぞ。自分が振った男に警護してもらうんだからな」
複雑な顔をしたままのアデイールの頬を誠吾が包むと、アデイールの表情からこわばりが解ける。
「すまない。セイ」
「まぁ、近衛隊長殿が付いてくれるのなら、あいつらも余計な手出しはしないだろうよ」
誠吾は苦笑いを貼り付けたまま、アデイールの首へ腕を廻した。
明らかな誘いに、アデイールは誠吾に口付ける。それが深くなるのはすぐだった。

ゆっくりと品良く見えるように、誠吾は長いローブのような上衣を落とす。横合いから、サディが恭しくそれを受け取った。
「…!」
その場に集った女たちから、息を呑む気配が伝わる。
誠吾の衣装は、以前に見た異国の衣装では無かった。かといって、普段造りの男物でも、華美な女物でもない。
上等の布は、晴れ渡った夜空のような明るい藍色の布に、同じ色の刺繍の施された、一見するとシックな感じだが、良く見ると手が混んでいることはすぐに解かった。薄い布の下衣に、羽織る形になっているが、ちゃんとした男物だ。
しかも、刺繍されているのは、星の座標図を簡略化した、星術師の紋だ。
「素敵な衣装ですわね?」
まだ、半ば呆然としながらではあるが、トゥルースは誠吾の衣装に手を伸ばす。手触りからも、最高級のものだとは解かった筈だ。
「ドラテア殿より頂きまして。少しは身なりに気を使えと説教されてしまいました」
にっこりと誠吾が笑う。ドラテアから貰ったのは本当だ。実は、開けるまでは何が出てくるかどきどきしていた。儀式用正装と、こういう場で使う着飾り様に、外向けの執務を行う際の簡易正装。
どれもが男物だった時には、ほっとしたものだ。どうやら、ドラテアは誠吾をからかっただけだったらしい。
ドラテアの云う通り、この衣装ひとつで誠吾の立場は確定されたようだ。
星術師の塔の長が認めた、王子の番いであり、次代の王のセスリムに、贈り物をすると云う行為は、誠吾の立場が公的に星術師の塔をバックにつけていると明言したも同様である。
トゥルースを始め、一族の女たちは、おずおずと祝いの言葉と贈り物を差し出し、その日は早々に解散となった。
この間まで、馬鹿にするような色が強かった女たちの、いきなりの変わりようは、誠吾に思わず嫌味の一つも云いたくさせる。
ただ、その中で、相変わらず自分を睨みつけてくるラウラジェスの視線が、むしろ心地いいくらいだった。


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