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憧憬の王城<29> 

誠司を城の使用人部屋へと送り届ける。今日は無理だが、明日からは誠司にも部屋が必要だろう。
「親父。ごめん。俺の所為で危ない目に合って」
しゅんとした誠司の頭を、誠吾は抱え込んだ。
「お前が気に病む必要はない。奴らはいつか手を出そうともくろんでいたんだ。俺の方こそ、巻き込んでしまった。すまん」
「ううん、俺が馬鹿だったから騙されたんだ」
「ちゃんと、王子とサディが護ってくれただろう。俺こそ、お前を囮にしたのと同じだ」
どう言い聞かせても、誠司は頭を垂れたままだ。
「今日は、もう寝る。お休み、親父」
唐突な感のあるおやすみを述べて、誠司はぱたんと扉を閉じた。男には、自分の力の及ばなさに涙する夜もあるのは判っているが、まだ、それは誠司には早すぎるような気がする。
だが、そこまで考えて、誠吾ははっとするのだ。
自分がいない間に、あの子はもう二年の月日を過ごしている。いつまでも、子供だと思っていてはいけないのかもしれない。
「この間まで、ランドセル背負ってたと思ったのにな」
誠吾は呟いて、使用人部屋を後にした。
使用人部屋の区画を出ると、アデイールが待っていた。
身体をすり寄せてくるアデイールに、誠吾は今日が新月の夜だと云うのを、まざまざと意識する。
誠吾は屈みこむと、アデイールの首に腕を巻きつけ、そっと唇に口付けした。
それに応えるように、アデイールが誠吾の唇をぺろりと舐める。ついでとばかりに、首筋にも舌が這った。
「これ以上は、ここでは駄目だ。部屋へ帰ろう」
若い獅子の悪戯を制して、誠吾は階段を上っていく。戦いで疲れた身体だが、身体の奥にくすぶる高揚を冷ますのは、お互いにもっと高揚するひと時が必要だった。


*これより先、15禁。ご承知の上、お進みください。

ベッドへ上がると同時に、アデイールが誠吾に襲い掛かる。
押し倒した誠吾の下衣を剥ぎ取ろうと、裾を咥えるアデイールに、誠吾は自分から下衣を落とした。同時に上着も脱ぎ捨てる。
圧し掛かってくるアデイールの舌が、躯を這うのにも抵抗はしなかった。いつもより、性急に求められるのに、誠吾はアデイールが興奮状態にあるのを見てとった。
さっきまでの戦いの余韻が残っているのだろう。
闘争は獣の血を強く呼び覚ます。息子を護って戦った誠吾もまた血がたぎるのを感じていた。
アデイールの頭が下肢に潜り込む。
ゆっくりと誠吾自身を包み込む舌の動きに、誠吾の背筋が震えた。最初は、たどたどしかった舌の動きも、最近では誠吾の方が翻弄されることも少なくない。
「も、いい…アデ、イール」
それでも、絶対に主導権を渡す気などない誠吾は、訳が判らなくなる前に、アデイールを誘う。
手を伸ばし、アデイールのオスを煽りたて、自ら腰を上げた。
それに若いアデイールが敵う筈も無い。誘われるままに、誠吾を貫いた。
誠吾の手が、白いシーツを握り締める。
強く握り締めたそれが、弛緩する頃には、すでに漆黒の闇夜は徐々に白み始めていた。


     ◆◆◆


「本当のディオルは俺だ」
出会った当時から、何処と無く卑屈な感じのする男だったジャスティの居候は、口を開くなり、そう訴えた。
誠吾と誠司が森で襲われた翌日。
そこにいたのは、アデイールとサディユースをはじめとする近衛隊の数人、それにストラスである。誠司と誠吾の異邦人二人は、証人としてその場に立ち会うことを許された。
引き出されたのは夕べ捕らえた山犬だ。誠吾の弓で足を射られた男は、単にジャスティの家に身を寄せた、若い一族の一人だった。
「か、狩をするから付き合えと云われたんで。俺はまさか、セスリムを襲うなんて…」
考えてもみなかったと男が頭を下げる。
「セスリムの息子だと名乗ってるガキがいるから、そいつを…」
誠吾の眉がぴくりと動いた。さっきまでは矢で射たことに多少の罪悪感を抱いていたが、男の告白に、その気持ちも、きれいさっぱりと消え去る。
誰がおまえらなんかに大事な息子をおもちゃにさせるか。
「こいつ等…」
押し殺したような声をサディは上げた。初めてやったことではなさそうだ。今までも、何人かをそうやって狩っていたのだろう。
「なんて、不敬な!」
王子の前に、罪人を引き据えた近衛兵が、腹に据えかねたのか、どかりと背中を蹴る。
そちらの裏づけも後でとらねばと思いつつ、アデイールはディオルに向き直った。
「お前がホンモノだと云う証拠は?」
「そんなもの、あいつらが残すわけないだろう」
「では、お前の主張は信用出来んな」
ディオルの主張が本当なら、ここでディオルを拘束していることは、王子と云えども簡単では無い。ディオルが本当に、一族の次期長であるジャスティの息子だと云うのならば、それを拘束する権限は、王にしかないのである。
捕らえられたと云う話は、もう既にジャスティの耳にも入っている筈だ。
「あの男の顔を見ただろう? だが、奴には生まれた時から番いがいた。俺にはいなかったからな」
要するに、ジャスティは番いがいないと知って、息子を入れ替えたのだ。確かにあの息子は、ジャスティにまったくと云って良い程、似てはいなかった。だからと云って、それが真実であると証明することには成り得ない。
「俺にだって、番いさえいれば! そこの男を番いにすれば、次期王の座も俺のものだ!」
「は?」
「それは、どういう意味だ?」
誠吾はぽかんと口を開けた。いきり立ったのはアデイールだ。低くなった声にも殺気が篭もっている。
「次期王の番いだ? 上手くやったもんだな、王子。今じゃ、次期王は王子しかいないって誰もが認めている。この間まで、半端モノだったお前が!」
確かに云われた通り、誠吾が王子の番いとなる前は、王の最有力候補はディオルだったのだ。
「俺だって、そいつを番いにすれば、俺を今まで軽んじていた連中を見返してやる! 俺が王になるんだ!」
「聞きたいことは済んだ! 見苦しい! さっさと連れて行け!」
血走った目で、王になると喚き散らす男は、兵士たちに引き立てられ、出て行く寸前まで呪詛の言葉を吐き散らしていた。
「確かにドラテアは『次代の王の番い』と俺を呼んだが…」
「ドラテアが云うのは、セイが俺の番いになれば、俺が次代の王になると云う意味だろう。ところが、欲に凝り固まった連中には、そう聞こえるらしいな」
深いため息を吐いた誠吾の肩を、アデイールがそっと抱きしめる。誠吾に対して使われた『次代の王の番い』と云う言葉が、独り歩きした結果、『王の異邦人を得た人間は、次代の王になれる』となったらしい。
「俺なんぞ、只の異邦人なのに」
「大丈夫だ、セイ。俺が護る」
自分自身が狙われると云う一般人の誠吾にはありえなかった事態に、さすがの誠吾の神経も焼ききれる寸前だ。
それをアデイールのすっかり逞しくなった腕が支える。
安心させるように唇を寄せるアデイールに、誠吾は腕を突っ張った。さすがに人前だと思い出したからだ。
「誰もいない。セイと俺だけだ」
アデイールの言葉に、慌てて周囲を見回すと、いつの間にか、謁見用の部屋には、誰一人としていない。
アデイールの唇が、落ち着かせるように、頬と額に触れてくるが、それを拒む理由は誠吾には無かった。


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