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You are my Valentine<1>残り香・その後 

「残り香」の続編になります。
田舎で暮らす事になった、鮎川と一之瀬。
バレンタインイベントの一員として青年団で働く二人だが。

08年のバレンタインネタとして、本館にUPしたものですが、続きを書こうとしたら、いろいろ合わない部分が出てきてしまって、修正UP。


You are my Valentine


<2> <3>完


「バレンタイン・アドベンチャー?」
「また、何ばやる気とですか?」
一之瀬と俺は、声を揃えて疑問を投げかけた。
まだ、松の内も明けないうちに、一之瀬と暮らす我が家を訪ねてきたのは、青年団長の桑畑さんである。
四十半ばの独り者で、子供の頃から近所のガキ大将。高校生になる頃には、年少の子供たちの世話役だった人物だ。俺も町にいた頃には、いろいろ面倒を掛けた。
「ほら、クヌギ山の恋神社を新しくしたろうが。遊歩道も良かとが整備されたし、恋人同士で山に登って貰うなんちゅうイベントはどげんかと、思うて」
「恋神社?」
地元民ではない一之瀬には、何のことか解からなかったらしい。
「クヌギ山の山頂にある、花菱神社のことだよ。祭られているのは木花咲耶姫なんだけどな。ここにお参りすると、どういう訳だが恋人が出来ると云われてて、町の連中の初デートは必ずここなんだ」
「それで、恋神社ね」
「それに、クヌギの神様の伝説を引っ掛けたらどげんかと思うとるんだ。東京におったおまえらの意見ば聞きたか」
俺が、恋神社の説明を終えるのを待ちかねたように、団長が身を乗り出す。とにかく、桑畑団長は、かなりのアイディアマンだ。だが、そのアイディアが必ずしも身を結んでいる訳では無い。
「クヌギの神様?」
「ああ。クヌギ山の神様は女好きで、生贄に毎年、町の一番綺麗な女を求めていた。そこに町でも馬鹿にされていた男が、立ち上がってクヌギの神の元へ向かうんだ。何度も失敗しながら、それでも女を救い出そうとする男に、クヌギの神は女たちを町へ返すんだ」
またしても疑問の声を上げた一之瀬に、俺は簡単にストーリーを説明した。要するに、何処にでもある民話の一つだ。だが、バレンタインに引っ掛けるにはいいかもしれない。
「と、いうことは女の子には先に上っていてもらう訳ですね? それを恋人が助けに向かう」
「当然、障害も少しだけ用意して、盛り上げようとは思うとるが。どげんや?」
腕を組んで考え込んだ一之瀬を、団長が覗き込む。
「イベント自体は悪くなかとは思うけど。CMの仕方が問題じゃなかかな?」
俺は、団長が空廻っているのは、常から、ここが問題だと思っているので、横から正直な意見を述べた。アイディアは悪くないのだ。アイディアは。
「そのストーリー。もっと緻密な話に出来ませんか? それで、絵も付けて。インターネットで流しましょう。町の若い人でそういうの得意な人はいませんか?」
「小宮山の昌子はどげんや? あいつ、漫画家目指しとったやろ。それに、湯山の息子がケータイ小説書いとる」
一之瀬もそこが問題だと思っていたらしい。俺の意見に乗るように云い出した提案に、団長はさっそく乗ってくれそうな人材をはじき出した。このバイタリティーがなければ、中々身を結ばない、こんな町の町興しなどやっていられない。
さっそくと云いながら、一之瀬の提案を実行するために、走り出ていった団長の後姿を、俺と一之瀬は見送りながら、顔を見合わせた。


団長はさっそく、次の青年団の寄り合いで、バレンタインイベントを提案する。
例の民話は、ストーリーは在り来たりではあるものの、切ない恋物語に仕上がっていて、そこに昌子のイラストが花を添えている。漫画家志望だったという小宮山酒店の嫁・昌子の絵は、漫画にすれば地味だが、イラストとして見ると、ふんわりと柔らかな感じで悪くない。
多少の修正を加えて、イベントの概要が決まった。

恋人たちだけでは無くて、恋人募集中の人も参加を募る。
女性たちは、恋神社まで、輿に乗せて行列を行う。
男たちは、女性の後から、恋神社までの障害物競走をしてもらう。
着いた順番に告白をしてもらい、恋人のいる女性にも申し込みが出来る。但し、恋人のいる男は申し込めるのは恋人にだけ。
あぶれた男には、サプライズプレゼントを行う。

俺たち青年団は当然、裏方としての仕事が満載だ。町に帰ってきたばかりで、職の決まっていない俺や一之瀬は、当然のように、中心で働く羽目になった。

帰ってくると同時に、倒れこんだ一之瀬を、俺は覗き込む。
田舎の付き合いに酒は付きものとは云え、相当呑まされていたから、かなり足に来ているはずだ。
「おい、大丈夫か?」
「ああ。すまん、大丈夫。でも、風呂は止すわ」
当たり前だ。この状態で風呂入ったら、確実におぼれるぞ。お前。
「布団。敷くから」
「悪い」
祖母が寝室として使っていた居間の奥の部屋に布団を敷く。ここが、現在俺たちの寝室だ。
長身で肩幅が広く、がっちりとしたタイプの一之瀬を、同じくらいの身長とはいえ、かなり細身の俺が引いていくのには、無理があるが、このままでは風邪を引かせてしまう。
玄関で倒れこんだ一之瀬を、半ば引きずるような状態で、俺は何とか布団まで移動させた。
布団を被せて、ぽんぽんと叩く。
よくばぁちゃんがやってくれた仕草。何となく安心できるような気分がするのは、俺の気のせいかもしれない。でも、一之瀬にもそう思って欲しかった。
酒を呑まされ、上気した頬に、手を滑らせる。
「鮎。気持ちいい」
「そうか?」
外から帰ってきたばかりの冷たい手が気持ちよかったらしい。そっと額に手を置いた。
すうっと一之瀬の口元から、軽い寝息が漏れる。
いつも、精悍な感じのする一之瀬の顔が、眠っていると子供のようだ。
「そんなに無理しなくてもいいんだぞ」
一之瀬と俺は、ここ数年身体だけを繋げるような関係を続けてきた。それに耐え切れなくなった俺は、一之瀬と話し合うことさえせずに逃げ出したのだ。
その俺を一之瀬は、全てを捨てて追いかけてきてくれた。東京でそのまま堅実にやっていれば、今頃はきちんと結果の出せる仕事に就いていただろう。第一、奴の実家は23区ではないとは云え、東京の筈だ。
慣れない土地で馴染むには、かなりの努力が必要だという事も知っている。
一之瀬はかなり、無理をしているのでは無いだろうか? もしかすると、それに疲れて、いつか俺の元を去ってしまうかもしれない。
ちょっとだけの不安を振り払うように、俺はもうひとつ敷いた自分の布団では無く、一之瀬の隣に潜り込んだ。


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