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クリスマス・キャロル<俺の主治医・番外> 

季節はずれのクリスマスネタですが、これを入れないと、連載中の「通り雨」に繋がらないことに気付きました。
と云う訳で、「俺の主治医」番外編です。



「お疲れ様です」
俺は、九十度に頭を下げたまま、両手で克利先生の荷物を受け取った。
頭を上げて、コートを受け取ろうとすると、先生が苦い顔をしているのが目に入る。長年身に染み付いたチンピラ生活の習い性で、どうしても出てしまうこれらの仕草を、先生はひどく嫌っていた。
「いや、コートはいい。それよりもソレ傾けるなよ」
克利先生に云われて、俺は慌てて、ビニール袋を水平に保ったが、そうすると、いつも通りに、先生の先を歩いて、扉を開けることが出来ない。
俺がどうしようと考える間もなく、先生はさっさと自分で扉を開き、荷物をテーブルへ置くように指示した。
「いいシャンパンを買ってきた。グラスと、皿を出しておけよ」
云い置くと、先生はさっと身を翻し、寝室へと向かう。その姿も、颯爽としていて、俺は密かなため息を吐いた。
克利先生は、俺の組のビルに入っている病院の医者で、組長の主治医だ。もちろん、ソレはあくまで表向きで、実のところは、表ざたには出来ない患者を運び込む為に、組で飼っている医者である。
中規模の総合病院で、堅実な医者をやっていたはずの先生が、何を思ってそんなモノになったのかは、俺にはまったく解らない。
云われた通りに、グラスと皿を二つずつ並べた。
シャンパンなんぞ開けたことが無い。下手なことをするよりも、先生を待った方が賢明だ。ビニール袋の方に手をつける。
夕飯の支度はするなと命じられていたので、袋の中身は夕飯だろうと見当が付いた。俺は、中学さえ出ていない馬鹿だが、そのくらいは判る。
がさがさと袋を開けると、四角い箱が大小二つ。一つは、街角でよく見るカーネルオヤジのイラストが描かれたでかい箱。もう一つは、赤と金のリボンの掛かった紙箱だ。
戸惑いながらリボンを解く。中身は何処から見ても、ケーキだ。
チョコレートの濃い色の上に、金粉らしきものが掛かっている。高そうなケーキだ。
ケーキにフライドチキンに、シャンパンと並べば、いくら、俺がそういうものに疎い生活をしているといっても、これが何を表すかくらいは判った。
「つまり、クリスマスだよなぁ」
「どうした? 亮」
着替えを終えた克利先生は、さっさとシャンパンを開け、席についた。
「メリークリスマス」
グラスを掲げる仕草も優雅で、俺は慌ててグラスを手に取る。
「メリー、クリスマス…」
同じように返しはしたが、どうしても馴染みの無い光景に、声もつい小さくなった。
綺麗に切り分けられたケーキが、俺の前に置かれる。
先生はチキンを手に、シャンパンを傾けていた。にこにこと笑って、俺を見ている。
期待の視線に、俺は仕方なくケーキを口に運んだ。
苦味のあるチョコレート独特の甘さだが、洋酒が混ぜてあるのか、そんなに甘ったるい感じは無い。
「どうだ?」
「あ、美味いっす」
甘いものは苦手だが、そう食べられない味でもなかった。
「チキンは?」
「頂きます」
やたらと機嫌の良いらしい、先生の様子に、俺は警戒しながら、チキンにかぶりつく。


*これより先、15禁。ご承知の上、お進みください。

ひとしきり、食事が終わると、そのまま寝室へと連れ込まれた。
俺は、克利先生の接待役なのだ。組に命じられて、この役目に就いてから、半年以上経っているが、一向に先生が飽きてくれる様子は無い。
「克利、先生…」
「亮。ベッドの中の呼び方はちゃんと覚えているだろう?」
俺にのし掛かり、服を脱がせながら、先生が問う。云いたくないが、仕方が無い。
「とし兄ちゃん…」
「可愛いな、亮」
三十男の俺に、そんな呼び方をさせて何が嬉しいのかは不明だが、先生は、必ずこの呼び方を強要するのだ。
幼馴染だった頃の呼び名は、幸せな記憶と相まって、チンピラヤクザな俺には似合わない。
普段もそう呼んで欲しいと云う克利先生に、俺はアニキやオヤジ(組長)の前でも、そう呼びそうだと理由を付けて、そのまま『克利先生』で通している。
俺の躯の上を、先生の唇が隙間無く這っていった。覚えさせられた快感に、躯の奥が物足りないと訴える。
唇を噛み締めると、指が優しく唇を辿り、俺の口腔に入り込んだ。
先生の指を噛む訳にはいかない。開いた口からは、だらしの無い声が漏れるが、それがどうも先生を煽るらしい。
ニヤリと、意地悪く笑うと、ゆっくりと、まるで形を覚えさせるように、俺の中へと入ってくる。俺は、噛み締めて殺したい声を上げ続けながら、先生に煽られるまま、己を解き放っていた。


「亮。そこの箱、開けてみろ」
いつの間に置いたものか、枕元に小さな箱が置かれている。命じられたまま、箱を開くと、中には高級そうな腕時計が入っていた。
「ありがとうございます」
形ばかりの礼を述べると、先生の片眉ピクリと動く。
しまった。とは思ったものの、もう遅い。
先生は、すっと表情の無くなった顔で、俺を抱きこんだ。
「亮。お前がどんなに嫌がったところで、お前は俺のものだ。いいか、忘れるなよ。お前が大人しく俺の腕の中にいる限り、俺はお前と組は裏切らない。解るな?」
表情の無い瞳の中に宿る本気に、背筋が震える。
この執着が、心地いいなんて、俺は何処かおかしいんだ。
とし兄ちゃんさえ、俺のそばにいてくれれば、何もいらないと思っていたガキの頃のことを思い出す。
クリスマスだって、女としての自分が大事だった俺のハハオヤは、男とホテルへしけこんで帰ってきやしなかった。
ケーキを買ってもらった子供をうらやましく眺めていた俺に、コンビニのケーキとチキンを買ってくれて、一緒の布団で温めてくれたのは――――
「あ…っ」
「どうした?」
色素の薄い瞳が、俺を覗き込む。
『大人になったら、俺がちゃんと大きなケーキを買ってやるからな』
そう約束してくれたあの時と、同じ瞳だ。
「いや、何でも無いっす」
布団へ潜り込むようにして、克利先生へ身を寄せる。
「おかしな奴だ」
そういいながら、抱き寄せてくれた腕は、昔と同じに温かい。
メリークリスマス――――。


<おわり>


続編「通り雨」

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