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通り雨<3> 

「何すか? アレ?」
狐につままれるとは、まさしくこんな感じを指すのだろう。亮は、警官が何を目的に探りに来たのかを、必死で考えた。
ここは神田組の持ち物では無い。マンションの契約者も、もちろん住民票も克利の名義だ。表向き、克利はカンダコーポレートの嘱託医の町医者である。
もちろん、その筋にはカンダコーポレートが神田組のフロント企業であることなど知れているだろうし、知っていて克利に目を付けたとすれば、何らかの揺さぶりであると思ってもおかしくない。
「さぁ、何だろうな」
だが、克利は明らかに何が目的なのか知った上で、空っとぼけていることは確かだ。
「先生、何が起こっているんすか?」
「さてな。とりあえず、寝るぞ」
克利は、亮の腰を抱いて、そのままベッドへ横になる。後ろから、まるで拘束のように絡みつく腕の暖かさに、亮はいつの間にか眠りに落ちていた。


それから、三日ほどは、拍子抜けするくらいに何も無かった。
克利と共に病院へと行き、患者や出入りの業者に目を配るが、メンバーが変っている業者も無く、変った様子の患者もいない。相変わらず、裏通りの喧嘩沙汰やら、従業員同士や客とのトラブルの怪我で、面倒は避けたいシマ内の連中の山だ。
警察への通報が怖い連中にすれば、保険の適用などより、多少高めの薬代を払っても、腕のいい医者の充分な手当てが受けられる方が、重要視されるのは当然のことだ。
「おい、どうした。最近えらく難しい顔してるな」
からかう様な口調で、看護師の田沼が聞いてくる。
田沼は克利の医大時代の同期らしい。医者の資格を持ちながら、看護学校に通って、看護師の資格も取った変り者だと云うのが、田沼に対する克利の評価だ。
「アンタにゃ関係ない」
一度ならず、克利との関係を揶揄されている亮には、田沼は煙たい存在でしかない。
「まぁまぁ、そう云わずに、云ってみろよ」
冷たく言い放ったつもりだったが、田沼はそんな亮の態度など気にも留めず、肩を抱いてきた。
「亮! ここはもういい。お前、今日は先に帰れ」
じゃれている田沼を、克利は目ざとく見つけたらしい。厳しい声で、亮に帰宅を促した。
「まったく、そんなに縛り付けていると逃げられるぞ」
「余計な世話だ!」
それを田沼がつつくものだから、克利のご機嫌はあっと云う間に下降する。
深く刻まれた、眉間の皺に、何を云っても無駄だと判断して、亮はため息を吐いた。


家路を辿る亮は、後を付いてくる不審な気配に気付いて、歩みを留める。
確かにつけられていると確信して、亮は再び歩き出した。
どうやら、警察に目をつけられていたのは、克利では無く、自分の方らしい。
マンションそばの公園に差し掛かったところで、周りを囲まれた。
「本間亮だな?」
正面に立った刑事がこげ茶の手帳を開く。警察のマークと、所属などが書かれた証明書。
うなずくと、刑事が歩み出た。
「ある人物が、君の保護を申し出ている。一緒に来てくれるか?」
「俺の保護?」
亮としては笑い出したい気分だが、そうもいかない。実際、刑事の一人は知った顔だ。
「そうだ。来てくれるね?」
もう一度、念押しされてうなずく。おそらく、誰が仕掛けたことかの見当は、さすがの亮にもやっと判ってきた。

「亮ちゃん!」
警察へ付いて行くと、案の定、そこには克高が待っていた。だが、走り寄ろうとした克高を刑事が止める。
「まぁ、落ち着いて座ってください」
亮と離れた状態で、ソファへと座らせられた克高は不満そうに唇を尖らせた。
「彼で、間違いありませんか?」
「はい。俺の幼馴染です。本間亮」
「本間、彼はああ云ってるが?」
顔見知りの刑事が、克高に対するのとは、まったく違う態度で接してくる。だが、克高が何を云っているのか判らない限り、うかつな返事は出来なかった。
「さぁ。知りません」
「亮ちゃん!」
立ち上がろうとする克高を、周囲の警官が制する。
離れたソファで見守る克高と、刑事の正面に座らされている亮は、とても、『保護』された人間と、警察に保護を依頼した一般人と云った構図には見えなかった。どう見ても、亮の立場は容疑者扱いだ。
「彼の申し出では、君はあのマンションで脅迫によって軟禁されているそうだが?」
「軟禁? 刑事さんだってそんなこと信じてるわけじゃないでしょう?」
克高の取った、あまりにストレートな手段に、亮は呆れ返るばかりである。神田組に手を出したい警察にとっては、絶好の機会だろう。
「あのマンションは、神田組の持ち物では無い筈だ。そこに、何故お前が住んでいるのか、聞かせてもらいたいもんだな」
本音を覗かせた刑事に、亮がクスリと笑った。
「俺らみたいなチンピラが女に食わせてもらうのなんか、よくある話だろうよ。まぁ、相手が男ってのは、変ってるかもしれないがな」
「成程、金づるって訳か」
ニヤリと笑った刑事が、亮から克高へと視線を移す。
「これで、判ったでしょう? 草野さん。むしろ、救うべきなのは貴方のお兄さんだと思いますが」
「亮、ちゃん…」
呆然とつぶやく克高を見ずに立ち上がる。これ以上の茶番に付き合う気は無かった。
「これで帰らせてもらっていいでしょうかね?」
「いや、まだ、聞きたいことがあるんだ。ゆっくりして行って貰おうか」
有無を云わせぬ刑事の態度に、渋々と亮が腰を下ろす。目の端に、恨みがましい目でこちらを見る克高の姿が映ったが、きっぱりと無視をした。


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