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通り雨<4>完 

散々痛い腹を探られて、警察を出たのは夜中に近い。
当然、既に克高の姿は無く、しつこい警察の尋問にうんざりとした表情の亮は、とぼとぼと歩き出す。もう終バスも終電車もとっくに出た時刻だ。これから、マンションへ帰ることを思うと、心底ため息が漏れる。
と、亮の目の前に高級車が横付けされた。
「乗れ」
顔を出したのは、克利だ。
「先生。どうして?」
今の今まで拘束され、連絡も出来なかったのに、何故克利がここにいるのか。
「克高が何をやるか判らなかったからな」
「人付けてたんすね」
おそらく組の連中だろう。それを廻してもらうくらいの信頼を、克利は組長から得ている。
車はマンションへと向かうことなく、途中で道を外れてしまった。何処へ向かうつもりなのかは謎だが、自分の所為では無いとは云え、克利に無断で帰宅しなかったことは事実だ。
大人しく車に乗っていると、港にある古いビルの地下駐車場で、車が止められる。先に降りる克利に従って、車を降りた。克利は勝手知ったるとばかりにある部屋のドアをノックした。

「誰だ?」
押し殺したような声が響く。その声の調子に、亮はサッと克利の前に立った。ヤバイ連中だとカンで判ったからだ。
「俺だ」
だが、克利はあっさりと応じる。旧知の仲であることは明らかだ。亮は納得して身を引く。
「これは、先生。どうぞ、遅かったですね」
ドアを開いた向こうからしたのは、亮には聞き覚えのありすぎる声だ。
元々の亮の兄貴分である、久川の獰猛な姿がそこにあった。
「お前、また先生に迷惑掛けたそうだな?」
じろりと久川が亮を睨めつける。
「はい、久川の兄貴。すんません!」
亮は殴られるのを覚悟して、頭を下げた。だが、常のような蹴りも拳も飛んでこない。
「お前は、今、先生の気に入りだからな」
代わって、いやらしげな笑いを含んだ声が掛けられた。亮は唇を噛み締め、その屈辱に耐える。
「で、先生。どうします?」
「腕の一本も折って、放り出せばいいだろう。懲りただろうからな」
物騒な会話に、亮ははっと顔を上げた。


*これより先、18禁。御承知の上、お進みください。

周囲にいるのは、数人の顔見知りの久川のところのチンピラだ。だが、その向こうに椅子に縛られて座っている男の顔を見た瞬間、亮は、思わず目を見張ってしまう。
「…かっちゃ、ん?」
「亮、ちゃ…」
たどたどしく自分を呼ぶ男は、確かに克高だ。殴られたのだろう。頬は腫れ上がり、唇の端を血が伝っている。
「舐めた真似しやがるからだ。本当なら、先生に害が及ぶ前に、お前が始末をつけなきゃいけねぇ筈だぞ」
確かに久川の云う通りだ。本来なら、亮が追い払わねばならなかった筈である。それを組の手まで煩わせたのは、明らかに亮の手落ちだった。
「で? どう詫び入れる気だ? あん?」
久川がずいっと顔を近づけるが、稼ぎがある訳でも、何らかの仕事を任されている訳でも無い亮には、詫びの入れようなど、土下座でもするしかない。
「すんませんでした!」
膝を折って、その場に這いつくばり、頭を下げる。
「頭なんぞ、下げても、何の役にもたたねぇんだぜ? え? 解ってんのか?」
久川が亮の襟首を捕まえて、立たせる。今度こそ殴られるかと覚悟を決めたとき、横合いから克利の声が掛かった。
「そのぐらいにしておけ」
「先生がそう云うんなら」
久川は渋々と云った風に従い、亮の襟首を離す。一気に空気が入ってきて、咽こんでしまった。
「良かったなぁ。先生がお優しい方でよ」
嫌みったらしい久川の台詞は、妙に芝居がかって聞こえる。
「お前ら的には、示しが付かないって訳か」
「まぁ、そりゃあそうでしょう。指詰めろたあ云いませんがね」
自分のことが話し合われているのだろうが、どうも現実味が薄い。久川はもちろん、克利の云い様さえ、予め示し合わせたような按配だ。
「仕置きがいるか?」
「もちろんですよ、先生」
仕置きと云いながら、こちらを見る克利の視線は、冷たく凍り付いている。何をさせる気なのかと、亮は周囲をうかがった。
周りのチンピラどもが、ニヤニヤとしながら、部屋の明かりを絞る。まるで中央にスポットライトが当たっているような具合になった。
「こいつ相手じゃ、勃たせるのも骨っすよ」
「馬鹿野郎。出来なくてもやるんだよ」
チンピラ連中の手にしたビデオカメラに、まさかといぶかる。
だが、そんな亮の肩を、男たちが押さえつけた。
さすがの亮も、肝を抜かれて、暴れだす。
「な、何すんだッ、止めろ!」
「何と云われてもなぁ。見当付いてんだろうが」
「そうそう、大人しくしろや」
暴れる亮を押さえつけ、その口にタオルがねじ込まれる。
「縛っちまいますか?」
「いや、その御面相じゃ、陵辱っぽい設定でもなけりゃ売れねぇだろ。暴れさせとけ」
「は、そうっすね」
久川の指示に、縛られることは免れたが、体格のいい数人に押さえ込まれてしまえば、亮の抵抗など子供と変らない。喧嘩慣れはしているが、それも自由な状態でのことだ。
「あんまり傷つけるなよ。俺のモノだって云うのは忘れるな」
「に、兄さん。アンタ、こんな真似してッ…」
恐怖で大人しくなっていた筈の、克高が声を上げる。だが、声が震えているのは隠しようが無かった。容赦の無い暴力の後で、自我を保っていられる男はそういない。
「ふん、俺のモノをどう扱おうが、俺の勝手だ。それを承知で、こいつは俺のところにいる筈だからな」
克利の冷たい声に、亮は克利を見上げた。
確かに、接待の道具として克利のそばにいる。この躯をどうこうする権利は、亮自身にさえない。
だが、あの執着だけはホンモノだと信じていた。タオルを詰め込まれている為に、うめきしか上げられない口で、亮は何事かを呟く。
押さえつけられた腕は自由にならない。指先だけを克利へと伸ばした。

「止めろ」

克利の声が、狭い部屋に響く。
久川が不満げに声を上げた。
「困りますよ、先生。稼がしてやるって話になっているんですから」
「撮影は続行だ。せっかく仕込んだのにもったいねぇ。俺がやる」
ニヤニヤと笑いながら、男たちが亮の上から退く。
亮は呆然と克利を見ていた。
「俺の顔、映すなよ?」
「もちろん、心得ていますよ。おい、」
久川が、ビデオを構えた男に何事かを囁く。
「じゃ、ごゆっくりどうぞ」
ドアに張り付いた見張りの一人と、ビデオを構えた男を除いて、男たちは全員が出て行った。
だが、亮の前には、もっと剣呑な雰囲気を漂わせた男がいる。
「に、兄さん。おかしいよ、兄さんは」
震える声で、なおも克高が言い募った。
判っている。克利は何処かおかしい。だか、その怖いほどの執着の行方は知っている。
亮は、自由になった腕で、自分の口に押し込まれたタオルを外した。命じられるまでも無く、克利の欲望に舌を這わせ、それを煽る。
自分を苛む男を、受け入れる為の行為。
それをカメラは余すところ無く写し撮っている。
「亮ちゃんは、知らないんだ。そいつは昔からとんでもない奴だった。親切ごかして、亮ちゃんを庇ってるフリをしていただけだ…」
母親に虐待を受けていた亮に、食事を与えてくれたのも、追い出されていくところの無い亮を自室に招いてくれたのも、当時、隣に住んでいた克利だ。
迷惑そうな克利の両親の視線からも、亮を庇ってくれた。戸惑うだけの子供であった克高は、そんな亮と克利を黙って見ていたものだ。
「もういい。亮、足を開け」
充分なほどに育った欲望から、口を離す。命じられるままに足を開いた。
ゆっくりと克利が亮の中を訪れる。
慣らしもしないままの行為に、痛みが勝るが、それでも克利を拒否しようとは思わなかった。
「先生…」
「こういう時の呼び方は教えたな?」
「とし、兄ちゃん…」
聞いていられないとばかりに克高が頭を激しく振る。
「兄さんは昔から、亮ちゃんを狙ってたんだ! 亮ちゃんが寝てる隙にいたずらして…」
「それが、どうした?」
ぴたりと克高の動きが止まった。
「第一、そんなこと、亮も知っていたさ。なぁ?」
ゆすり上げられながら、亮がうなずく。
そう、知っていた。だが、この腕を失ったら、どうなるかなんて、子供心にも判りきっていたのだ。
「お前の思っているような、可愛そうなだけの子供じゃなかったさ、コイツは。それに、もう子供でもない」
「あ、とし、兄ちゃ、…」
感極まりそうな亮の欲望を、克利の指がせき止める。
「これは、仕置きだ。そう、簡単にはいかせんぞ」
感じすぎた躯は、最後を求めて足掻いていた。だが、それを無常に取り上げられ、亮はひたすら翻弄され続ける。
ビデオを撮られていることも、克高の存在も、どうでもいい。
亮の目の前の男の執着だけが、亮の真実だった。


目を覚ましたのは、マンションのベッドの中だ。
痛む節々を押さえて起き上がると、珍しく克利の姿があった。
しかも、リビングには久川までいる。
「おはようございます」
頭を下げると、克利が亮を手招いた。
「出演料だ」
久川の言葉に、亮は、あれが夢ではなかったことを知る。
「ビデオは今日からネットで流してる。本番モノだからな、お前みてぇな面でもちったあ売れる」
言い置いて、部屋を出て行く久川を、亮は呆然と見送ってしまった。まさか、本当に流すとは思わなかったのだ。
「お前が逃げたら、どうなるかは解っただろう?」
耳元で囁く克利の声は、冷たく、だが甘く響く。がんじがらめに縛られた、心の拘束を解くつもりは、亮には無かった。


<おわり>


「門出の朝」

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