スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


武士の背中<壱> 

時代物風でございます。
久しぶりなので、とんでもない間違いをしているかもしれません。

大店の主人と、そのお気に入りの用心棒の話です。

<弐> <参> <四> <伍> <六> <七> <八>完
<番外> <宵闇の鐘> <番外・弐> <番外・参>




武士の背中―もののふのせなか―


「とんでもないことをしてくれたなぁ? 端午屋さんよぉ?」
日本橋に店を構える大店端午屋は、その名の示すとおり、元は鯉のぼりを扱う染物屋問屋である。それが先代の頃に商売換えをして、呉服屋となった。
その、押しも押されぬ大店の店先で、騒ぎ立てる男が一人。
「花見に出掛けた先で、この綺麗な着物の尻が、ばりっと破れて、うちのお嬢さんは大変な大恥をかいたんだぜ。どうしてくれるんだ?」
品性卑しいことの露呈した面構えの男が差し出す着物は、柄こそ似てはいるが、明らかに染めの劣った品で、端午屋のものではあり得ない。
「それは申し訳ございませんでした。品物は買い戻させていただきます」
主人の伊衛門は、役者のような美しい面差しに、おだやかな微笑を浮かべ、頭を下げた。
男ではあるものの、そのそんじょそこらの女では敵わない、たおやかな風情に、男が一瞬頬を染める。
「何、わかりゃ、いいんだよ」
懐紙に包まれた金子(きんす)を、そっと手渡される際に、ついっと主人の手を撫でたのは、男にしてみれば、役得と云うものだ。
だが、金子を確認した男の顔が、どす黒く変わる。
「何だ、こりゃあ? ふざけてんのか?」
包まれたのは二朱。端午屋で扱う呉服の一枚どころか、紙入れさえ買えるかどうかという金額だ。
「おや、ふざけているのはそちらさまでござんしょう? こんな安物をこの端午屋の品だとおっしゃるんで? こちらが穏便にすませているうちに、とっととお帰りなさいませ」
美しい顔に、凄みのある笑みを浮かべた端午屋の主人には、何処から見ても、先ほどのたおやかな風情は欠片も見あたらない。
「野郎ッ!」
懐からドスを抜き出した男が、伊衛門に襲い掛かった。
それをするりとかわした伊衛門の後ろから、ぴたりと刀の切っ先が男の喉元へ突きつけられる。
「先生。店先を血で汚すのは勘弁してくださいよ」
伊衛門の後ろから現れたのは、ざんばら髪を無造作に括った浪人だ。こんな場所に大店を抱えるからには、用心棒の一人くらいは飼ってなくてはやっていけない。
「わかった」
大柄な男は、ぶすりとひと言だけ応じると、くるりと刀を返す。
いくら、峰打ちとは云え、こんな大柄な男の太刀を受けては、たまったものでは無い。落とした金子に目もくれず、逃げを打つ男の腰に、用心棒の太刀が叩き込まれた。
もんどりうって男が倒れ付す。
「与吉。片付けとくれ」
既に白目を向いている男を、店の小僧が、主人の命で外へと引きずって行った。
「こりゃ、既に片付いた後か」
そこへ顔を出したのは、町廻りの同心で、ここらを持ち場にしている男だ。
「これは、安藤さま。何か御用の向きで?」
「いいや、ここで何か騒動があってるって云うんで駆けつけただけさ」
にやりと嫌味な笑いを浮かべた安藤に、伊衛門は満開の花のような笑顔を向ける。その伊衛門の後ろで、用心棒は、物騒な表情で、まだ刀の柄に手を掛けたままだ。
「何にもありゃしませんよ。ちょっと、通りすがりの男が店に入ってきたと思ったら、ばったりと倒れまして。小僧につまみ出すように命じたところです」
「ふーん、そうか。用心棒の先生がひと暴れした訳じゃねぇんだな?」
「先生は、うちの帳簿をつけておられます。店にいたところで不審な向きはありゃしません」
刀を抜いたことが知れれば、どうとでも理由をつけて引っ張っていくつもりなのは目に見えている。この同心は、そういう言い掛かりで小金を稼ぐ類の性質の良くない男だ。
「ふん。困ったことがあれば、そっちの先生じゃなく、俺に云うんだぜ?」
「困ったことがありましたら」
伊衛門の如才ない答えに、今日はつけこむ隙が無いと判断したのか、肩をいからせて安藤は帰っていった。
「まったく、あんなサンピンに払う金なんかありゃしないよ。与吉! 塩まいとくれ!」
吐き捨てるように云う、主人の命に、慌てて小僧が台所へ走る。それを横目に、用心棒はようやく刀の柄から手を離し、奥へと引っ込んでいった。


*コレより先15禁。御承知の上、お進みください。

「先生」
用心棒の部屋は、店の隣に位置する、離れの一室だ。庭も見渡せ、いざと云うときのための用心も怠り無い。
そんな部屋に深夜訪れるのは、主人の伊衛門、その人である。
「この時期は、この庭も見ごたえがございましょう?」
開け放った障子にもたれかかるように、庭を見ながら酒を傾ける用心棒の隣に、どっかりと腰を下ろす。言葉こそ、丁寧な商売言葉のままではあるが、昼間のおだやかで女よりたおやかな呉服屋の主人は何処にもいなかった。男臭い仕草で、庭のしだれ桜を眺める男の肩に手を掛ける。
するりと用心棒の肩から一重が落とされた。
背中一面に彫られた桜があらわになる。
それを満足げに眺めて、伊衛門は唇を首筋に落とした。
伊衛門の、男にしては細い指が桜を辿る。用心棒の背がぶるりと震えた。
「止せ、伊乃四郎。いつまでこんな」
「ふん、俺の名前はまだ覚えていたか? だが、やめる気はないぞ」
伊衛門の指が裾を割り、用心棒の男に絡みつく。
「お前が弟に家督を譲りたいというから、出奔に手を貸してやったんだ。その背なの刺青では、家にも帰れまい?」
今は、すっかり商売人へと身をやつした用心棒の幼馴染は、残酷に用心棒を追い詰める。
下帯を解いて潜り込む指は、すでに用心棒の中を探っていた。
唇を噛み、愉悦に酔う自分をたしなめる。
「抵抗は無駄だぞ。お前は、俺を知っているだろう?」
指で用心棒を犯しながら、伊衛門は耳たぶを軽く噛んで、そう囁いた。
確かに知っている身体はもう男を求め始めている。後戻りは効かない。この背の桜と同じに。
背を倒し、這い蹲らせた格好で、伊衛門自身が用心棒の中を貫いた。
最初はゆっくりと、だが、その動きは段々と激しさを増し、容赦なく用心棒を蹂躙する。
唇を噛み締めて耐えながらも、その抵抗が長くはもたないことを、用心棒自身が知っていた。


幾度か達した後で、ようやく伊衛門は身を起す。はだけた胸元の合わせを、軽く直した。
蹂躙されつくした用心棒の方は、帯は辛うじて絡まっているものの、背なの刺青は全て月明かりの元へと晒されている。

刺青イラスト梟目金色さま

一面の桜と、その下にいるのは、蝙蝠だ。
伊衛門が彫師に命じて、桜に付け加えさせた絵。
それは伊衛門自身の象徴だ。
出奔しても、尚、侍であろうとする幼馴染と、商売人として生きているつもりであるのに、商売人になりきれない自分と。

けだるい仕草で、用心棒が身を起す。

背なの桜が隠されていくのを、伊衛門はじっと見つめていた。


<おわり>


NEXT

BL小説ランキング
FC2 Blog Ranking

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(0) Tag List  [ * ]   [ 漢受け ]   [ 時代物 ] 


~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。