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武士の背中<四> 

すみません、今回最初っから、H有りです。



「念兄のお名ですか?」
互いに達した後で、そう訊ねられ、陣三郎は気まずげに、口を押さえる。
そう聞かれるまで、自分が男の名を口にしたことなど気付きもしなかったし、また、口にすることがあるなどとは思いもよらなかった。


これより先15禁。御承知の上、お進みください。

「俺は、誰かの名を呼んだか?」
伊衛門から、視線を外したまま、陣三郎はそう問う。
「いのしろう、と」
「そうか。すまなかった。多分、二度とは口にせぬ」
伊衛門の告げた、ある意味予想通りの名に、陣三郎は深いため息をついて、そんな約定を口にした。少なくとも、他の相手の前で呼ぶ名では無い。
そのまま、身体を起こそうとした、陣三郎を、伊衛門は再び閨へと引き込んだ。
「別に怒ってなどおりませぬよ。可愛いお方」
そう囁いた伊衛門の手が、躯をまさぐりだすのに、陣三郎は目を閉じ、それに身を任せる。だが、それは伊衛門にとっては、まるで思い出を追うかのように感じられた。
伊衛門は、大きく足を開かせると、陣三郎を正面から貫く。苦しい体勢に、陣三郎が苦鳴をもらした。
普段は自分の刻んだ証をいとおしむかのように、刺青を愛でながら背中からじっくりと愛撫する頃が多い伊衛門の、乱暴な仕草に、陣三郎は唇を噛み締める。
「目を開いてくださいませ」
伊衛門の言葉に、うっすらと陣三郎が目を開くと、そこには女よりもたおやかな風情の、呉服屋の主人の姿は無かった。そこにいるのは、紛れも無く、獲物を狩る眼差しのひとりの男だ。
「私の名を呼んでください」
「主人?」
苦しい体勢のまま、陣三郎は疑念を投げかける。居候である陣三郎が、伊衛門の名を呼ぶことはありえない。
「貴方を今、抱いているのは私です」
「あ、端午屋、何故…」
妬心という言葉が、陣三郎の心を過ぎるが、まさかと打ち消した。この容姿も整い、日本橋きっての呉服屋を営む男が、自分の過去の相手などに妬心を抱くなど、それこそ、まさかというものだ。
「名を。名を呼ぶまで許しませぬ」
「端午屋、なにゆえに、俺に…」
そのいらえは無い。ひたすら、伊衛門は陣三郎を攻め立てる手に、力を混める。
「あ、う…ッ、」
「名を。そんなに呼ぶのはお嫌でございますか?」
なにゆえの拘りか判らず戸惑う陣三郎に、伊衛門が訊ねた。陣三郎は首を振る。そうでは無いと伝えたかった。
「あ、い、伊衛門…ッ」
押し殺した声で、陣三郎が呼ぶ。すると、伊衛門の顔が見る間に綻んだ。まるで大輪の花が開くように。
「可愛いお方。今日は存分に可愛がって差し上げます。もう、私以外のものなどいらぬという程に」
「あ、あぁ…ッ」
激しい突き上げに、陣三郎の背がしなった。それを満足そうに眺めた伊衛門は、より激しく求めていく。
その背に自分の証を刻んだだけでは足りぬと云わんばかりに。


「伊乃四郎さま。とおっしゃいましたか?」
「ああ。そんな名だった。隣家の幼馴染だ」
汗の滴る陣三郎の背を、濡れた手ぬぐいでふき取りながら、伊衛門が口を開く。
「何が聞きたい? 伊衛門?」
するりと自然に呼ばれた、己の名に、伊衛門の微笑が深くなった。
「貴方様の念兄だったのですか?」
「ああ。そうだな。いつも共におった。念者の契りを結んだおりも、それが当たり前のような気がしたものだ」
「お別れになったのは、婚儀でも持ち上がりましたか?」
「いや、隣家は改易になったのだ」
あっさりと云い放たれた言葉は、ことの他に重い。改易になった家となれば、家族は散り散りになっているだろう。
「行方は、御存知で?」
「いや、知らぬ。飛騨の代官の預かりになっていると聞いたのは、随分と前だ。今頃は多分、何処かの寺で坊主にでもなっていることだろうよ」
「まだ、未練がございますか?」
「まさか。おぬしがそう云うまで、思い出しもせぬよ。もう、顔さえも定かでは無いのだ」
余程の名家であっても写し絵などは無い。隣家が改易になったおりには、まだ、若造であった伊乃四郎の顔など覚えている筈も無かった。
「それはようございました」
妖しい笑みを刻んだ、伊衛門の顔は、茶室造りの離れの切り窓の明かりを受けて、人ならぬ美しさをたたえている。
陣三郎は、思わず何も身につけていない上半身を震わせた。


「毎日、飽きもせんな」
夜毎訪れる伊衛門を、陣三郎は呆れたように眺める。
今日も伊衛門は、名を呼べと最中に五月蝿かった。
何が伊衛門をここまで駆り立てるのかが判らず、陣三郎は不安を覚える。だが、当の伊衛門はといえば、あいも変わらず陣三郎の背中を愛でていた。
「飽きる? 私が、貴方様に?」
陣三郎の背を辿る指の動きが止まる。
「飽きる訳などございますまい? 背に私の印まで刻んだ身で、そのようなつれないことを」
再び、伊衛門の指が背の桜の枝をいとしむ様に辿る。傷の上にうまく枝をのせ、判らないようにしてはあるが、そこに触れることを伊衛門は好んだ。
辿りながら、脇腹の蝙蝠に口付けを落とす。
唇で食むように、そこを刺激されると、陣三郎の男が反応を示した。
「やめ、ろ。もう…」
幾度も達したというのに、これ以上の情交を求める伊衛門に、首を振って陣三郎が拒む。だが、それは余計に伊衛門を煽った。
「つれないお方には、私がどれほど貴方様に焦がれているのか、思い知っていただきましょうよ」
「おぬしが、俺に焦がれると申すか?」
あり得ない。どんな女よりも美しいこの面ならば、おそらくは求められて断る男も女もいないだろう。
それが何を思って自分のような男にと、陣三郎が自嘲の笑みを漏らす。
「本気になさってはおられないようですね」
「おぬしのような大店の主人が、俺のような居候の素浪人に?」
大声で笑い出したいのを、夜も深いのを思い耐える。
それを抱きすくめた伊衛門が、ゆっくりと欲を押し当て、開いていく躯を楽しんだ。
「う、伊衛門、ッ…」
苦しいのか、陣三郎が唇を噛み締める。
そっと伊衛門が耳たぶを宥めるように食んだ。
「お前は、いつもそうだ。昔もそう云っていたな。『伊乃四郎さまのような立派な家柄の方が、俺などといつまでも一緒の筈がございませぬ』」
柔らかな商売言葉をかなぐり捨てた『男』の声に、陣三郎が硬直する。

まさか、そんなはずは無い。だが、自分はいつもそう云っていた。
あれは、二人の閨の睦言。
誰も知るはずの無い、二人だけの。

「まだ、判らぬか? そうか、俺の顔など忘れたのだったな」
振り仰ごうとした陣三郎の腕を絡めとり、背後から激しく責め立てられる。
「あ、あぁ、…ッ」
切れ切れの喘ぎが、陣三郎が、確かに苦痛だけではない快楽を追っていることを示していた。
「………」
耳元で囁かれた己の名に、陣三郎は、既に自分が捕えられたことを知る。
今日も、切り窓の形に、淡い月の光が閨に投げ掛けられた。


<おわり>


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~ Comment ~

Re: キタコレ!!

誤字の指摘ありがとうございました。
役とかれて謹慎と、お家おとりつぶしじゃ雲泥の差です。
あと、三話ほどになると思います。お付き合いください。
[2009/05/10 15:10] 真名あきら [ 編集 ]

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[2009/05/10 10:39] - [ 編集 ]

Re: 本にするのかな?

この話は、多分、本にします。
いつになるかは判らないけど。
[2009/05/10 08:40] 真名あきら [ 編集 ]

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[2009/05/10 07:18] - [ 編集 ]















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