スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


遥かなる星の軌道<6> 

目覚めて、誠司の安らいだ顔が目に入る。
あれから、ベッドへ入って、何度も求め合った。誠司は、その間どんなことも逃すまいとするように、サディユースの反応を見極め、いろいろと仕掛けてくる。
それにサディユースは、みっともないほど素直に反応を返した。
全てをさらけ出すのは、自分の中で、どうしてもためらいがあった。それこそが誠司の不安定な要素になっていたことに、今更ながら気付く。
矜持など、あの精神の前にはどうでもいいのだと、もっと早く誠司に示すべきだったのだ。
「セージ」
髪をいとおしげに梳いて、サディは立ち上がる。
シャワーを浴びに行こうとした身体に、背後から誠司の腕が絡みついた。
『イディドルゥ。サディ』
『イディ・ドルゥ。セージ』
答えると、誠司は伸び上がって、サディに口付ける。
それに応えて、サディはベッドを降りた。

身体を洗い流していると、玄関を開く音がする。
聞こえるのは数人の話し声。今日は土曜だが、工期が迫っている現場には、基本的に日曜しか休みは無い。当然、サディも誠司も出勤だ。
「サディ」
風呂場を開けた誠司が顔を出す。
「オヤジたちが来てる。服、ここに置くぞ」
「ああ」
洗い立ての作業服とTシャツが置かれ、それを身につけた。正直、気が重い。
ドアを開けて、居間へと顔を出すと、不審そうにこちらを見る三組の瞳と目が合った。
「お久しぶりです」
頭を下げると、はっと我に返ったのは、女にしては長身の誠司の母親だ。
「サディさん。久しぶりね。今日は誠司のうちに泊まってたの?」
並んだ三人は、誠司の家族だ。母親と義理の父親。そして、片方だけ血の繋がった弟。
にっこりと微笑を投げた、母・ゆかりを別にして、中年太りのいかにもな現場のオヤジと云った風情の父親は、軽く頭を下げただけだったし、弟に至っては、父親そっくりの面差しの小さな瞳で、じっとサディを睨み付けている。
「そうだよ。今、現場が一緒なんだ。で、今日も仕事なんだけど?」
「どうして? 今日はお仕事無い日でしょ?」
小学校で友達にでも聞いたのだろう。まだ、八歳の武司に、仕事には、それぞれの特徴があることなど理解できる筈も無い。
「ごめんな。武司。俺がお勤めしてるところは土曜もお仕事なんだよ。明日じゃ駄目か?」
「うん! 明日は野球の試合があるんだ! 見に来てね!」
「ああ。それは行くよ」
わーい。と立ち上がった武司の小太りな身体が、ぴょんと誠司に飛びつく。
その暖かな風景を壊すのは、自分かもしれない。そう考えて、サディユースはぞっとした。
「母さんも父さんも、そこ退いてくれない? サディがメシ食えないんだけど?」
云われて、サディユースは、やっとそこに用意されている朝食の存在に気付く。
チーズトーストと珈琲。後はゆで卵。焼きソーセージ。いずれもボリュームがある。
朝から妙に張り切ったメニューに、サディが首を捻った。
「夕べはかなり運動したからな。腹減っただろ?」
テーブルの前から退いた家族の前で、誠司は平然とそんなことを云い出し、思わず噴出しかける。
子供の武司にはともかく、絶対に誠司の父母には意味が判った筈だ。凝視する視線を感じながらもサディは顔を上げられず、黙々と朝食を放り込むしかなかった。
朝食を終えたところで、「そろそろ、出るから」と誠司が云い出す。
問いただしそうな雰囲気の二人も、渋々と腰を上げた。
「あ、誠司。母さんが洗って…」
「いいよ。子供じゃあるまいし!」
強い口調で云い放つ誠司に、さすがに皆川がむっとした声を上げる。
「そんな、云い方はねーだろう。母さんはお前の為に…」
「俺の為? 違うでしょう?」
皆川を見る誠司の瞳は、冷たく凍てついた色をしていた。
「ここはオヤジの部屋だ。オヤジと関係の無い人を、俺の留守中に上げる訳にはいかない」
強い拒否の口調に、皆川は鼻じろんだが、これ以上云っても、誠司はより一層頑固になるだけだ。誠司の母も、引き下がる夫に習って、腕まくりし掛けた服を正す。
「誠司兄ちゃん…」
父と兄の剣幕に、泣きそうな顔になった武司が誠司の袖を掴んだ。
「ちゃんと明日は行くから、な。武司」
「ホント?」
頭を撫でられて、武司がやっとほっとした顔をする。
「ああ。約束だ」
約束。と云う言葉に、サディユースははっと思い至った。
確か、この世界に来たのは、桜の花が散るあの公園だ。
そこで自分は誠司に何を云った?
『誠司のそばを離れる気は無い』
そうあの子に約束したのでは無かったか?

「誠司。現場まで送ってやろう」
「いいよ、サディと一緒に行くから」
疎ましそうに自分を見る、皆川の視線に気付いてはいたが、サディはもう譲れなかった。
「サディ、行こう」
誰より大事な想いがそこにある。それに気付くのがあまりにも遅かった自分に呆れてしまう。振り返る誠司の笑顔が、何よりも護りたいものだ。


NEXT

BL小説ランキング
FC2 Blog Ranking

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(-) 


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。