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遥かなる星の軌道<13> 

この場にサディがいなくて良かったと、誠司はほっと息を吐く。
外国人たちがこういう現場では、かなりの作業の担い手だと云うことは、警察も承知の上だ。だからこそ、知らないフリをするのだが、あの現場にいたとなれば、そうは行かないだろう。
誠司は、最初の話を繰り返すのみだった。
少しでもぼろが出れば、それはパスポートの無いサディにとって最悪の事態なのは判っている。
家に帰る途中で二度、留守電を入れた。
明るいうちに帰りたかったのだが、警察で結構な時間を拘束されてしまったし、ここのところ落ち着かなかった所為か、仕事は山のようになっている。
さすがに遅くなってしまった。
サディは家にいても、電話が取れないのは判っている。
「今から帰るよ。何か買っていくから」
駅から自宅の留守録に入れた。それだけで、緊張してささくれ立った神経が休まっていくような気がする。
単純な自分を笑いつつ、アパートまでの道を辿った。
商店街を抜け、中学校の脇を通って、裏通りに入る。アパートはそこに見えていた。
ふと、気配を感じて立ち止まりそうになる。だが、誠司は気力を振り絞って、足を動かした。
明らかに、悪意をもった何者かが、つけてきている。
誠司の全身が緊張で満たされた。
一歩、一歩近づくアパートを眺め、そこにいる男のことを考える。
きっと、部屋の中で手持ち無沙汰に寝そべっている筈だ。
それとも、自分が帰ってくるのをずっと待っているのか。
肩からすっと緊張が抜けた。胸の奥が暖かい柔らかな気持ちで、ほわりとなる。
「大丈夫」
自分に云い聞かせるように、呟いた。
この闘いは負けられない。負けるわけにはいかない。だから、大丈夫。
背後から忍び寄る気配に気を配る。
買ってきた、コンビニの袋からコーラを取り出した。
身体の前で、しっかりと振る。
襲い掛かる気配に、振り向くと、目の前でリップルを開けた。
勢い良く、泡状になったコーラが飛ぶ。
ひるんだ相手に、缶を投げつけ、逆の方向に走り出した。
後ろから追ってくる気配はあるが、これなら引き離せる。商店街まで出れば、追っては来れない筈だ。
だが、その誠司の視界を銀色の影が横切る。

「サディ?」

中学校の堀の上を走り抜けたのは、夜目にも鮮やかな銀色の狼。それは、誠司を追ってきた男に、一目散に飛び掛った。
噛み付いた腕から、ぽとりと拳銃が落ちる。
その二人の攻防を、誠司は全て見ることはしなかった。
今、自分がやることは一つだからだ。
「サディ、待ってろ!」
アパートまで駆け戻る。押入れから、長い袋を取り出した。
そのまま、きびすを返す。
走りながら、袋の紐を解く。もどかしげに取り出したのは、高校時代に部活で使っていた和弓。
サディに押さえ込まれながらも、男が必死に拳銃に腕を伸ばした。
誠司が、弓をつがえ、引く。
腕を伸ばした先に、矢がつき立った。
男の動きがぴたりと止まる。
「動くな!」
誠司の凛とした声が、裏路地に響いた。
そこで、騒ぎに気付いたのだろう。住民が幾人か、窓を開ける音がする。
サディは、腰を抜かした男からさっと離れ、風のように走り去った。
誰かが通報したのだろうか? 警察のサイレンが段々と近づいてきていた。

警察で事情を話し、家に帰宅したのは、もう夜中に近い頃だ。
ドアを開いて中へと入る。
月明かりの無い、部屋の中だが、頼りない街灯の明かりは入ってくる。
その中で、銀色の獣がのそりと身体を起こした。
「サディ、ただいま」
首へと手を廻し、その身体に抱きつく。
「やっと片付いたよ」
襲ってきたヤクザ者は、拳銃を握っていた。
銃刀法違反と、誠司に対する殺人未遂で警察に拘束中だ。
少なくとも、これで一連の事件は片が付くだろう。数度は警察に出頭しなければならないかもしれないが、現場を警官がうろつくことはなくなる筈だ。
ヤクザ者の男は、誠司が犬を使って襲わせたと言い張っているらしいが、このアパートで大型犬が飼える訳が無い。

ぺろりと誠司の顔が舐められた。
慰めてくれるつもりなのかと、誠司は狼の尖った口に、ちゅっと音を立てて軽いキスをする。
ぎゅっと抱き締めて、何度もキスを繰り返すうち、自分が興奮してきているのを感じはしたが、今のサディをどうこうする程、獣でも無い。
素直に自分でどうにかするつもりで立ち上がる誠司の裾を、サディが咥えた。
「サディ?」
見上げているサディと目が合う。
じっと自分を見つめるその目に、じわりと欲望が滲むのを感じた。
柔らかな身体を摺り寄せられる。
誠司はその首に腕を廻し、抱き寄せた。
前を探ると、確かに勃ちあがったものが手に触れる。
ゆっくりと探り、煽り立てる。
より一層、獣の息が荒くなる。
誠司も今や一頭の獣だった。


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