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不倫<6>完 

中身のほとんど入ってない薄い学生かばんを小脇に抱えて、校門を出た俺は、JRの駅へ向かって歩いていた。あれ以来、ロッカーを使っていた私鉄の駅には近づいていない。
その俺の前に、車が一台横付けされる。
「ツトム」
降りてきた男を見て、俺はかばんを取り落とした。
「オッサン……ナンで…」
「乗れ、話がある」
オッサンは俺の腕を掴んで、車へ引きずって行こうとする。
「お、俺にはねーよ!」
慌てて逃げようとするが、オッサンの腕はビクともしやしねー。
「俺にはある。乗れ、騒ぎになりたくないだろう」
「なって困るのはアンタだろ! いいのかよ」
俺がじたばたするのに焦れたのか、オッサンはいきなり俺を抱きすくめた。
そのまま、キスされる。しかも、目一杯ディープなヤツだ。舌が唇をこじ開けて、俺の口の中を這い回る。歯の裏側を舐められて、ぞくっとした。
足に力が入らず、その場に座り込みそうになるのを支えられ、まんまと車の中に連れ込まれてしまう。
「シートベルト閉めろ。車出すぞ」
こうなったら、逆らっても無駄だ。俺は、渋々シートベルトを締めようとした、その時―――――車の窓がガンと叩かれる。
「おい、おっさん!! 俺のダチ、ドコに連れてく気だよ!」
「浩二?」
部活中だったのか、ユニフォームのままで、窓を叩いている浩二がいた。
「クッソガキぃ!」
「オッサン! 出してくれッ!」
やばい、二人とも気付いて無いんだ。
「借りモンなんだぞ! お前のダチか?」
「いいから、出して! 頼むよ! 俺―――」
「駄目だ! 事故る」
オッサンは、舌打ちをして、荒々しく車を降りる。
「アンタ、どういうつもりだよ? コイツとは別れたんだろ! 未練がましくうろついてんじゃねーよ!」
浩二がオッサンに怒鳴っているのが聞こえて、俺は慌ててオッサンに続いて車を降りた。
「浩二! 違うんだ、この人は……」
「功が変なオヤジに絡まれてるって、茂木が知らせてくれたんだ。待ってろ、今、ナシ付けてやっから」
「変なオヤジだとぉ、舐めた口聞いてるんじゃない。ガキのくせに!」
「そのガキに振られてストーカーかよ。ケーサツ呼ぶぜ、おっさん!」
今にも殴りかかりそうな雰囲気の浩二に、オッサンも熱くなってる。
「違うんだ! 浩二。俺が一人でアツくなってただけで、コウイチさんには関係ない!」
「馬鹿野郎! ナニかばってんだよ! お前、コイツにもてあそばれたんだぞ!」
「違う! 俺から――――」
「ちょっと、待て! お前ら、注目浴びてるがいいのか?」
校門から離れているとは云っても、まだ下校中の生徒は大勢いる。
「これ以上、ここにいるとマジで警察呼ばれるぞ。警察ならいいが、先生とか来たら、ツトムはヤバイんじゃねーのか?」
確かに、倍も年上の男と不純同性交遊なんて、良くて停学。悪けりゃ退学だろう。
「そっちのも、乗れ。とりあえず、話がある」
「解った。お前なんかどーでもいいけど、ツトムだけ行かせるワケにはいかねー」
話が決まれば後は早い。俺たち三人は、さっさと車に乗り込むと、学校から離れた。


「で? どういうことだ? 聞かせてもらおうか?」
港に近い駐車場はだだっ広いだけの人気の無い場所だ。
「どういう…って?」
「あんなメール一本で終わりにするつもりか? それとも、そっちのガキの方が良いって訳か?」
オッサンは、火の点いてない煙草を咥えたまま、そう切り出す。
「え?」
「新しい男が出来たならそう云え。何も云わずに終わりにするのはルール違反だ」
「新しいオトコ? 何ソレ?」
俺は泣きそうになった。オッサンはそんな風に思ってたんだ。
「そういう云い方はねーだろ! 第一、アンタ、奥さんいんだろ! 何ツトム攻めてんだよ!」
「はぁ? 俺は独身だ! 大体、ゲイの俺に、何で女がいるんだよ」
後部座席から乗り出すようにして怒鳴る浩二と、ソレを睨みつけるように怒鳴り返すコウイチさんに、俺は今までの考えが全て間違っていたことを知る。
「待てよ、オッサン! それホント?」
「お前、まさかそう思ってたのか?」
俺は素直にうなずいた。
「週末は会えないって云うし、妹の子供のためなんて云われても、信じらんねーじゃん。妹じゃなくて、奥さんだと思ってた……」
もうひとつの誤解は、俺にはとても云えない。特に、浩二の前では。
「妹は出戻りなんだ。いま、再婚の話が進んでる。それが済まないうちはお前を紹介する訳にはいかない。あいつは俺がゲイだってことも知らないんだ」
「おっさん、マジでちゃんとツトムのこと考えてんだー。ホントに嘘ついてんじゃねーよな?」
念押しするように聞く浩二を、オッサンは睨み付けた。
「お前こそ、ツトムに気があるんじゃないだろうな? ツトムは俺のだぞ」
「俺と功はダチ! ここんとこ功が悩んでたから、心配してんだよ!」
オッサンも、浩二もお互いに牽制しあってる。
「じゃ、覚えとけ。ツトムの彼氏だ。佐藤耕一」
「サトウコウイチー? うちの兄貴とおんなじ名前だな。俺は佐藤浩二。功の同級生だよ」
「コウジ? 偶然だな。俺の弟も耕治だよ」
「……」
妙な沈黙が流れる。
「あのさー、もしかして、とは思うけど、間違えてたとか云う? 功?」
「あ、あはははー、そ、かなぁ?」
俺の笑いは明らかに乾いていた。こいつ変な所で勘がいいんだよ。
「アンタさ、その弟って年離れてる?」
「ああ、まだ大学行ってる」
何を聞くんだという口調だ。こりゃ、素直に吐くのが得策かな。
「そーだよ。お前の兄貴だと思ってたんだよ!」
「だよなー! 悩んでたワケが解ったぜ」
「はぁ?」
俺の告白に、浩二は合点がいったと云う口調で、オッサンはワケが解らないと云った風だ。
「同じ名前で、年の離れた弟がいて、しかも、両親は交通事故で死んでて。弟の甥っ子の名前が『コウタ』だぜ。間違うだろ普通!」
「うちの甥っ子は浩太郎だけどな」
「ツトム、お前なぁ……」
二人とも呆れたような口調だ。やっとワケが解ったということらしい。
「サトウコウイチとコウジなんてありふれた名前の兄弟が、この東京だけで一体何十人いると思う?」
「だって、あんまり偶然過ぎて、違うなんて考えなかったんだよ!」
オッサンは、苦笑して手を伸ばしてきた。俺の頭をくしゃっとかき混ぜる。
「今度からはちゃんと聞け。俺が今、夢中なのはお前だけだ」
「耕一さん」
「第一、俺が何でここにいると思う?」
云われてみると、耕一さん、何で俺が高校生だって知ってるんだろ?
「駅前のホテル、従業員に聞かれたぞ。伊勢崎さまは工藤設計に転職なさったんですか?って」
「ゲっ?」
もしかして、見られてた? バイト中。
「取引先だって誤魔化したが。何で、工藤設計とメシなんか食ってるんだ? ああ云う男が好みなのか?」
「ち、違うよ! バイト先の本社の人だって!」
見られてたのはそっちか!
「後つけて。探偵社に依頼した。今日だってやっと休みを貰って、友人から車を借りた。あんなメールひとつで終わりにしないでくれ」
切なげな瞳が俺をじっと見る。
「ごめん。俺、苦しくて、早く楽になりたくて……」
「ツトム―――――」
そっと引き寄せられて、唇が重なった。
「ん、うん…」
だんだんと激しくなってくるキスに、吐息が漏れる。
「ツトム。仲直りするのはいいが、そういうコトは、俺を送ってからやれよ」
「こ、浩二!」
「悪い、坊主。忘れてたぜ」
慌てる俺とは対照的に、耕一さんはニヤニヤ笑っていた。くっそ、ワザとだろー!
「じゃ、学校まで送って行くか」
「そうしてくれ。その後はホテル行くなり何なり好きにしろよ」
「こぉじぃ……」
怒ってるだろ? お前。
「怒ってねーよ!」
俺が顔色伺ってたのに、気付いた浩二が背中を叩く。
「シュミ悪ぃーなと思っただけだ。こんなおっさんを兄貴と間違えたなんて、うちの兄貴に超シツレイだぜ。兄貴まだ三十三だぞ!」
「俺は、二十八だ!」
「にじゅうはちぃ? ジョーダンきついぜ。どっからみてもただのおっさんだろー!」
耕一さんは、ソレには反論せず、免許証を後ろに放りなげた。
「うっわ、ホントに二十八だよ。いーのか? 功?」
「え? 二十八? ホントに??」
「お前が言うな!」
だって、俺も三十過ぎだと思ってたし。
「おい、ツトム。後で、ベッドの上で証明してやるからな。覚えてろ」
「エロオヤジ! んなコト云うからオヤジだと思ってたんだよ!」
俺は真っ赤になって反論したが、どこから見ても痴話喧嘩だったらしい。
「ケッ、勝手にやってろ!」
そう浩二は言い捨てて、そっぽを向いた。


<おわり>


番外編


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Re: こそこそと参上して

内緒コメYさま>
ここのオンリーワン隙間産業が普通のBLに見えたら、
オヤジ菌と漢菌に冒されてますね(笑
「身勝手な男」「武士の背中」あと「悪い大人いけない子供」
あたりがウチではもっとも隙間だと思っているのですが。
[2010/10/06 20:35] 真名あきら [ 編集 ]

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[2010/10/06 02:02] - [ 編集 ]















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