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身勝手な関係<身勝手な男> 

「身勝手な男」のSSです。
オフ本にした際の、無料配布本。
佐伯と久世はちょい役です。
昔、佐伯にフラレタ男の話。


【身勝手な関係】


「じゃ、またな。ユウ」
朝もやの街角で、唇に触れ合うキスをして別れる。
それが男同士であるのは、ここがそういう街であるからで、珍しいことでもない。
恋人同士ではなくても、出会いを求めて、もしくは欲望の解消としての行為は、若い男ならば、当然あるのが普通だ。
秋原雄介は、たった今キスをした相手に背を向けた瞬間に、でかいため息を吐いた。
「ち、何がまただ。二度とやるか」
さわやかそうな外見に似合わず、結構しつこい男だった。ここのところ、ツイてない。好みの相手にはことごとく振られ、引っかかる相手にはハズレてばかりだ。
駅から地下鉄に乗り込む。
ひとつ乗り換えて、自宅近くの駅に降り立った。
新しい地下鉄の駅から近い、このマンションは所謂の高級住宅で、親の遺産をもてあます雄介が、駅に近く、通勤に便利だという理由だけで買ったものだ。
シャワーで身体を洗い流し、ゆっくりと風呂に浸かる。バスルームの上半分がガラス張りになっていて、空がみえるところがお気に入りだ。
「あそこの店もそろそろ代えるか」
『黒薔薇』と云う名の、半地下のバーはハッテン場としては有名で、その割には客のレベルが高く、雄介のお気に入りだったのだが、どうも最近はいいのが当たらない。
「俺も年をとったってことかなぁ…」
雄介は鍛えた身体の割には、細身で、綺麗な顔をしている。
二十歳そこそこの頃から、あそこに出入りしているが、その間、誘いが切れたことなど無かった。
自分に自信もあったし、誘いを掛けてくる中から、これはと思うものを選ぶ選択肢もあった。だが、二十代も後半の頃から、それも段々減ってくる。
当たり前だ。若い男は年々供給されるわけで、それを上回る程の美貌があるなどとはうぬぼれてはいない。
三十過ぎた今では、おっさんたちばかりが引っかかる。渋いと云えば聞こえはいいが、要は若い男には、格好付け過ぎでアウトオブ眼中にされる類だ。但し、金も経験も豊富なので、それなりのいい思いはさせてくれるが。
風呂から上がって、ラフな普段着に着替えた。


すぐ近くにある水族館の前は、ちょっとした公園になっていて、奥の方に海を見渡せる場所がある。
そこが雄介のお気に入りだ。雄介は意外と動物好きで、そこには近所の連中が犬猫はもちろん、手乗りの中型鳥などを連れてくる散歩場でもあった。
くさくさした気分を晴らすにはちょうどいい。
雄介は、さっそうと出掛けていった。
受付の女がにこやかに微笑む。女に興味の無い雄介にしてみれば、ウザイだけの視線をそそぐのも、いつもならば気分を害する充分な理由になるのだが、今日はそんなこともなく、軽い会釈で出て行ったくらいだった。



芝が青々としているのが、すでに初夏を感じさせる。
ぽーんとボールを上に投げた男の犬が、飛び上がってボールをキャッチすると、一目散にご主人様の元へと駆け戻ってくる。
ベンチで日向ぼっこをする老人の肩には、九官鳥がいた。
数匹の子猫たちがじゃれあって、だんごのようになっている。それを数人の女性が囲んでいた。
あちこちへとすばしっこく走り回るフェレットを、追い掛け回す男の子もいる。


芝生に寝そべって、その様子を眺めた。
一途な犬も可愛いし、高慢な猫もいい。勝手なフェレットや、自分がご主人様の小鳥も可愛い。
動物たちの行動はどれもこれも癒される。
出来るならば飼いたいものだが、世話が出来ないだろうし、そのために一軒家に移るのも抵抗があって、結局今に至っている。

一人が気ままでいいものだと思えるのは、若い頃だ。年を食えば、それなりに寂しくもなってくる。
夜毎に違う相手の体温を感じるのも、うっとおしい。
相反するそれらを満たすには、特定の誰かを作るしかないのだが、その相手として『コイツならば』と思った男は、今は殆ど店にも顔を出さない。
相手は、どうしてこんな男を選んだのか不明なくらいの平凡な男。
若いわけでもなければ、綺麗な訳でも無い。鍛えた身体と、童顔気味の顔が、スタンダードな男の好みにぴったりと嵌っていたのは理解できるが、それだけだ。
だが、黒薔薇でも格段にモテていた、秀麗な美貌の男の隣に並べるには、あまりにも不似合いだ。
「英――――」
呟いた瞬間に、涙が零れる。
かすんだ視界に移った影を、だから、雄介は一瞬、自分の感慨が見せた幻だと思った。
「おい、引っ張るなって」
「下手だな。俺にやらせろよ」
大型犬を引いて、散歩する二人は、楽しそうな声を上げて、広場を歩いている。
大型犬に引きずられるように、歩いていた男から、背の高い男が紐を受け取った。
百九十近いだろう男が、紐を引くと、大型犬はぴたりと止まる。
まるで、ご主人様の隣に寄り添うようにたたずむ様は、男のクールで華やかな容姿と相まって、非常に絵になる風景だ。
周囲の人間たちから、ほうっとため息が漏れた。
「ああ? レジー。お前、俺と英次に対する態度違うぞ」
「レジーに凄むなよ」
頭半分ほど低い男が犬に向かって、抗議を申し立てるが、顔は笑っている。
それを呆れたようにいなす男も、また笑っていた。
黒薔薇では、いつも静かにグラスを傾け、表情も殆ど動かず、氷の美貌などと称されていた。誘いを掛けるときも、その顔が欲望を滲ませているのが、かすかに感じ取れる程度で、本当にこの男に欲望などあるのだろうかと、抱かれながらも現実感が無かった。
だが、いま、その男は笑っている。
隣にいる選んだ相手の横で。
自分の見たことの無い、全開の笑顔で。
再び、背の低い男が紐を引くと、レジーと呼ばれた犬は、男を傍若無人に引きずっていく。
それを見た『英』が、腹を抱えて笑った。
「馬鹿野郎。助けろよ!」
笑いながら英は男に近寄る。紐を受けとると、またしてもレジーは大人しくなった。
「やっぱりこいつ、選んでるぜ」
「おいおいヒロ、うちの犬に凄むなよ」
「ヒロさん。こんにちは!」
男の後ろから、英に良く似た男が声を掛けた。横の美少女がぺこりと頭を下げる。
「悠里ちゃん、こいつ、いつもこう?」
「レジー、駄目よ。ちゃんとヒロさんの云うこと聞いて?」
美少女に話しかけられた途端に、レジーは大人しくなった。それを見た英が、ますます腹を抱えて笑い転げる。
その頭を、隣にいる良く似た男が叩いた。
「兄貴、いてぇなぁ」
「いくら何でも笑いすぎだ。大丈夫か? ヒロ」
「ちょっと手がすりむけた程度です」
「え? 大丈夫かよ?」
英が真面目な顔になって、手のひらを覗き込む。
「ホントだ、ちょっと血が出てる」
ぺろりと手のひらを舐めた英に、男は耳まで真っ赤だ。
こんな風に、甘い英なんて初めてだ。
好きな相手にだけ見せる顔。雄介には向けられなかった顔。
遠ざかる四人と犬を見送って、雄介は立ち上がった。


いつまでも寂しいままでも仕方が無い。
とりあえず、引越しをして、犬でも飼おうか。



<おわり>


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~ Comment ~

Re: タイトルなし

諦めというのは、一種の切り替えではないかと思っています。楽しかったと云っていただけて、とても嬉しいです。
[2009/11/13 00:00] 真名あきら [ 編集 ]

皆さん感想も深いですね。デモ読んだ後に明るい光景が印象に残って幸せな気分になれたので、これが希望を現してるんだろうなって私も感じることができました。楽しかったです。ありがとうございました。
[2009/11/10 22:13] [ 編集 ]

Re: すてきな短篇

自分に似合いの道を諦めとともに見つけていくのが、年齢ではないかと。
ささやかな幸せを掴んで欲しいです。
[2009/11/08 15:12] 真名あきら [ 編集 ]

すてきな短篇

滲む苦渋とすこしの希望……
これが希望全開ではないところが「年齢」というものなんでしょうが、それがこの短篇の味になっているような気がします。
すこしの希望……ある一定の年齢にきたものたちの、苦笑とともにむかえることばかもしれません(笑)
[2009/11/08 12:36] 7月 [ 編集 ]















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