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転がり込んだ胸に<転げ落ちた先に> 

新年SS祭りアンケート第一位は「転げ落ちた先に」

【転がり込んだ胸に】
無自覚女王さまは、今日も何気に女王様でした。


バスルームで携帯を受けていた義彦が、ため息を吐きつつリビングに戻ってきた。
俺の家は、1SLDKのワンルームマンションだ。玄関を入ったところにある納戸前の廊下を過ぎたところに扉がある以外は、一切の仕切りは無い。
一人暮らしの頃はそれでも良かったが、恋人と二人で過ごすことが多くなると、少しは互いの空間が欲しいと思うようになった。
実際、今のように電話が掛かってくると、お互いの携帯を握ってバスルームへと向かうしかない。この部屋には区切られた空間はバスルームしか無いのだ。
最新式のバスルームでエアコン付きなのが救いだ。少なくとも、恋人に寒い思いはさせずに済む。
それでも部屋には及ばないので、義彦の為に用意した、カシミアのショールをその薄い肩に掛け、温かな飲み物を用意する為にキッチンへと向かう。
最新式のエスプレッソマシーンで煎れたエスプレッソに牛乳をたっぷりと注いだ。
義彦の前にカップを置くと、一口飲んでほうっと息を吐く。
そんな仕草も色っぽかった。
「なぁ、お前、正月は暇か?」
「当たり前だろう」
今年はクリスマスが終わると同時に長期休暇に入った。本当ならば温泉かホテルをとって旅行でもしたかったのだが、それは目の前の女王様のひとことでおじゃんだ。
「こんな人の多い時期になんか、出掛けたくない。面倒くせぇ」
はいはい。せっかくの予約もぱあにするのはもったいないから、営業部の香坂に半額で売りつけた。今からだと、キャンセル料の方が高くつく。
それならばと、家にクリスマスから篭もって、腕をふるったんだが、そちらの方が女王様はお気に召したらしく、俺からの情熱的な夜の御奉仕も嫌がらなかった。
正直、この部屋からの夜景は絶品で、わざわざ人ごみに出掛けて疲れる必要も無い。
クリスマスの街のイルミネーションも、カウントダウンの港の花火も、初日の出もこの部屋からなら一望できる。
まさに、怠惰な女王陛下にはうってつけだった。
という訳で、当然ながら正月の予定なんか、明けて出社するまで一切無しだ。
「お前さー、うちの新年のパーティに付き合う気ある?」
「新年のパーティ?」
忘れてた。親父が死んで苦学生だった俺とは違って、コイツは確かいいとこの坊ちゃんだった筈だ。
そうだよな、銀座の老舗のテーラーメイドのスーツで会社に出社してくる奴だ。
「いや、別に付き合ってもいいが」
俺なんかが出てもいいのかと不安になる。
「親戚やら、家族の友人やら入り乱れてるし、別に俺が誰を連れて行ったところで、また新しい男かで終わりだよ」
とっくにゲイなのはカムアウト済だとは云ってはいたが、それでもこんなにあっけらかんとしていていいものか。
「ここんとこ、面倒で全然出てなかったんだよなぁ。それに出たら出たで、心配されんのがうざくてさ」
まぁ、当たり前だろう。
輝くばかりの美貌だった頃を知っている奴にとって、胃を患ってからと云うもの、もっさりとして男の影も無いコイツを見れば、大丈夫かと思いたくなるのは解る。
だが、それはコイツを表面だけしか見ていないからだ。
「何か今回はやたらとうるさくって。顔だけでも出さないと不味そうな感じ」
「分かった。何時だ?」
「明日」
本当に出るのが嫌らしい。義彦は、切れ長の目にげんなりした色を浮かべて、カフェオレをすすった。


「ここか?」
想像はしていたものの、本当に想像通りの大きなお屋敷に、腰が引ける。大きな門を潜ってたどり着いたのは、まさしく、鹿鳴館か迎賓館かと思わせるお屋敷だ。もちろん、かなり小ぶりではあるものの、それでも、横浜に現存する洋館くらいはある。
「おかえりなさいませ。皆さま、もうお集まりですよ」
「ただいまー。表の車、何処に置けばいい?」
「移動させてもらってよければ、ガレージに入れますが」
「ガレージなんて、ウチにあったっけ?」
「いま、晶彦さんが大学でバイクに凝っておられまして」
「まったく、母さんも孫には甘いんだからな」
促されて、キーを使用人らしい男に渡す。
奥の広間らしい場所の観音開きのドアの前に歩み寄ると、義彦は、ばんとそれを両手で開いた。
様子を伺うとか、場を読むとかは一切無し。まさしく真打登場。一斉に視線がこちらを向いた。
その中を、まっすぐに両親らしい初老のカップルへと歩み寄る。
俺はもちろん、義彦に続いて堂々と何処のダンスホールかと思うくらいの大広間を横切った。
「ただいま」
「おかえりなさい」
上品に微笑んでいる女も、隣で鷹揚にうなずいている男も、整った顔立ちが鈴木に良く似ている。まさしく親子という奴だ。
「まぁ、この子はコートも脱がないで」
「ああ」
云われて、するりと脱いだコートを受け取り、俺もコートを脱いだ。二人分のコートを腕に掛けたところで、横合いから、使用人らしい女性がそそくさとコートを引き取る。
「こいつ、俺の上司」
お前、それは社会人として問題のある紹介だと思うぞ。
「義彦がお世話になっております」
「いえ、こちらこそ。義彦くんのような優秀な部下で助かっております」
とりあえずの義彦の紹介は、大人として聞かなかった振りをして、頭を下げた。
「顔も出さないで、どうしているかと思ったが、少し肉が付いたな」
「顔を見せてちょうだい。まぁ、綺麗になって」
面倒くさがっているコイツを、きちんと身だしなみさせて良かった。あのまま、無精髭で出掛けかねなかったからな。
大体、痩せていたのは病気の所為で、きちんと食事の管理をすれば、やせぎすなくらいの体型にはなるのだ。元々の顔立ちは整っているんだから、それなりに整えれば、それなり以上には見える筈である。
「そうか?」
もちろん、無頓着なコイツには、そんなことは解らないだろう。今だって、何で自分に視線が集まっているか、よく解ってない筈だ。
大学時代のような女性的な美貌ではないが、痩せたことでシャープさが際立って、男っぽい硬質な感じの美貌になっているのが、男性よりもむしろ女性の視線を集めるようになっている。
「義彦?」
「よう、史生」
おずおずと声を掛けてきたのは、背の低い陰気な感じの男だ。
「従兄弟なんだ」
「そいつは?」
「今の会社の上司で、大学時代の後輩。俺、今、コイツのとこにいるから」
嫌な目線でこちらを見上げる。自己紹介しようとした先を制され、俺はすっと義彦の後ろに立った。つまり、こいつがいるから来たくなかったということだろう。
「義彦さん、お食事は?」
絶妙のタイミングで、中年の使用人が声を掛けてきた。立食パーティなので、皿とグラスを手にしている。俺は二人分受け取り、義彦の促すまま、テーブルから料理をとる。
義彦の舌が奢っている筈だ。
テーブルに並んだのは、何処の一流ホテルだと見紛うような凝った料理の数々である。
義彦は、皿を俺に持たせたまま、フォークだけ動かして料理を咀嚼しているが、それもホンの三口がいいところだ。当然、残りは俺が片付ける。
それでもかなりの品が用意されているので、いつもに比べるとかなり食事の量は多かった筈だ。

そうしているだけで、かなりの人数が声を掛けてきたが、どれもに「従兄弟」「叔父」「姪」と短い紹介を俺にしただけで、俺に自己紹介は決してさせなかった。
俺のことも、「上司で、大学の後輩」としか紹介しない。
二時間ほどで義彦はさっさと帰りの挨拶をはじめ、受け取ったコートを俺はさっと義彦に着せかけた。
要は、顔出しの義理は済んだと云う訳だ。
俺のことも紹介をしたくないくらいの知り合いしかココにはいないと見た。
そうと解れば、俺もこんな落ち着かない場所に用は無い。
最後まで史生と云う男が、じっとこっちを陰気な視線で見ているのは気になったが。


「なぁ、今日はしないのか?」
スーツを脱いで、ベッドに横たわった女王様が、俺の首に腕を巻きつけた。お誘いがあるとは珍しい。
「陛下がお望みなら、御奉仕させていただきます」
「今日の優秀なガードドックぶりに褒美をとらす」
ガードマンならぬ、ドッグか。それでも、こんなご褒美を袖にするほど馬鹿じゃ無い。
「それはありがたき幸せ」
腕の中の細い身体を抱き締め、あらわにした胸元に舌を這わせた。
「きっと、今頃史生の奴、話が違うって、うちの親に詰め寄ってるかもな」
「何だ? それ」
息を乱しながらの言葉に、俺は疑問を唱えた。話?
「見合いを兼ねてたんだよ。せめて男でもいいから、相手を決めろって」
成程、俺の詳しい紹介をしなかったのは、探られるのを敬遠してか。
「じゃあ、俺はお前の相手だって認識されたのか?」
「何だ? 不満か?」
ギロリと切れ長の瞳が俺を睨みつけた。
「いいえ。めっそうもございません」
もちろん、不満なんかある訳がない。光栄至極だ。
「来週、引っ越してくるからな。身体、開けとけよ」
「え?」
俺はガバリと身を起こす。聞き間違いじゃないよな?
「ここの一階が空いたんだ。寮の荷物なんかお前のセルシオで充分だ」
確かに、義彦の荷物は布団と服と本しかない。一階は、小さめのワンルームだ。義彦の稼ぎなら充分に買える。
「さすがに同じ部屋じゃ、会社に届けが出せない」
にっこりと笑った女王さまの顔は、かなり凶悪だ。
触れれば切れそうな氷の美貌が一瞬で溶ける。
「光栄至極です。女王陛下。一生、お仕えいたします」
「うむ。よきにはからえ」
優雅に差し出された手に口付け、俺は改めて義彦を抱き締めた。


<おわり>


すみません。Hまでは入りませんでした。
これにてお正月SS祭りは終了です。
今年も「酒場のたわごと」をよろしくお願いします!


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~ Comment ~

Re: 素敵です~vv

女王様は年を負うごとに面倒くさいに拍車が掛かってます。
たまに番外は書きますので、お楽しみに。
[2010/01/07 21:40] 真名あきら [ 編集 ]

Re: 一押しカップルです~。

女王様は、つれない素振りですが、結構渥美のことは好きです。
ひたすらお仕えして幸せな渥美なので、結婚したも同様なんていわれると、浸ります。
J庭は無理せずに。でも楽しみにしてます。
[2010/01/07 21:38] 真名あきら [ 編集 ]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2010/01/07 20:40] - [ 編集 ]

一押しカップルです~。

大阪もうすぐですね。
ああ、このCPは、もう結婚したも同然だぁああああ。
ツンツン女王さまは、最後にデレを見せてくれて大満足です。
J庭新作出せるかなぁ、引っ越ししながら努力します。
[2010/01/07 07:23] アド [ 編集 ]

Re: 本年も

まったくもって、無自覚に女王陛下です。
こんな男がいいとは、ホントに下僕だ。渥美。

事務事項。了解です。
アタシこそ、会えるのを楽しみにしております。
[2010/01/03 11:43] 真名あきら [ 編集 ]

本年も

ヨロシクお願い致します♪

う~~ん女王健在ですね!w
久々のこの2人、堪能させて頂きました~(*´∀`*)
今年も真名さんのお話を楽しみにしております!
3月の再会も楽しみにしていますね~♪

あ、年末に振込みは致しましたので、4日以降に振り込まれるかと思います。
お手数お掛けしますがヨロシクお願い致します(*・ω・)*_ _)ペコリ
[2010/01/03 01:43] 柚子季杏 [ 編集 ]

Re: タイトルなし

お正月SS満足いただけたようで嬉しいです。
さすがに他のカップルまで書く暇はありませんので、この辺りで(笑
こちらこそ、今年もよろしく
[2010/01/02 22:45] 真名あきら [ 編集 ]

あけましておめでとうございます。
昨年は、J庭でお会いできて嬉しかったです。
正月ss、大好きなこの3カップル、大満足です。
贅沢言ったら、
他のカップルも読みたかったですが、我慢します。
(偉そう)
ごちそうさまでした。今年もよろしくお願いします!
[2010/01/02 21:40] るか [ 編集 ]















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