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番犬の憂鬱<8> 

隣でごそごそと動く気配の主に、俺はびくりとして飛び上がる。
身体を起こすと、離れて寝ていたはずの課長は、布団からはみだして、俺の隣へしっかりと寄り添うように眠っていた。どころか、俺の胸を枕にしているような状態だ。
俺は頭を抱える。こんなに人肌が恋しいタイプの人だとは思わなかった。今までの連中だって、こんなんじゃ理性保てなかったんじゃないか?
俺は、夕べから何度目かの深いため息と共に、課長の頭を乱暴に押しのけた。それでも、課長はすやすやと眠っている。
とりあえず、朝飯の準備だ。
考え込んでも仕方の無い時には、普段通りの行動をとるに限る。
洗面所で乱暴に顔を洗い、ぶるりと頭を振った。両手でパンと頬を叩き、台所へと向かう。
冷蔵庫の中身を確認した。ヒロさんの家よりはずっとマシな食材が入っているのは、一応自炊をしている所為だ。学生の頃から、弟たちの面倒を見てきた俺は、大抵のことは実家住まいのそこいらの同年代の女よりも、上手くこなす自信がある。
それでも、同年代の大学生に比べて、少しはマシって程度だ。
キャベツを山ほど刻んで塩をふり、卵を茹でる。ハムは生でもいいのだが、焼いた方がボリュームが出た。ゆで卵と、搾ったキャベツを混ぜて、ドレッシングで和えるだけで、サラダが出来る。それを焼いたハムの横に添えた。もっとも見栄えとしては、山盛りのキャベツの横にハムが添えられていると云った方が正しい。
今時珍しい貧乏学生を地で行く俺の家の食卓は、夏はキャベツ。冬は白菜か大根、それが無ければ、もやしが食卓を占有する。はっきり云って、安いからだ。
バリエーションは多くないが、それと肉があれば、大抵は何とかなるものが出来上がる。
今日も、それに白い飯ともやしの味噌汁が付いただけのものだ。
「ん~、いい匂いするなぁ」
「課長。起きました?」
「ああ。また迷惑掛けたみたいだな。ヒロはどうした?」
「出張だそうですよ」
いつも、後ろに流している長めの髪はすっかりセットが乱れている。それをかき上げながら、課長が台所へと顔を覗かせた。
「左のドアが風呂なんで、シャワー浴びてください」
「すまん、酒臭いよな」
そんなことは無い。が、頼むからシャツ一枚でうろうろしないで欲しい。足が長くてスリムな課長が、広い肩幅に見合ったシャツを着ていると、足しか見えず、まるで下に何もつけてない様に見えるんだ。
「げ、…!」
課長が起きたことで、布団を片付けようと振り返った俺の目に飛び込んできたのは、風呂場の前で、勢い良くシャツを脱ぎ捨てて、素っ裸になった課長の白い肌だった。
「か、課長…、その脱ぐのは」
「狭い風呂だし、脱衣所なんか無いんだから、別にいいだろう?」
その場でブリーフまで脱ぎ捨てて、さっさと風呂に入る姿は、どっからみてもオッサンの行動だと思うのに、目の前をあの白い身体がちらつく。
うわ、勘弁しろ。俺。
ばたんと風呂場の扉が閉まった後、俺は改めて頭を抱えた。
まさか。いや、その兆候ははっきりあった。

風呂場の前に、自分のジーンズとトレーナーを置く。さすがに、下着は買い置きを出す。
課長は、そう小柄と云うわけでは無いから、ぴったりとは行かないまでも、それでもぶかぶかと云う訳でもないだろう。

そう、体格だって、そんなに違わない。自転車競技は軽い方が優位なことも多く、俺はヒロさんほど逞しい身体つきでは無いのだ。股だけは異様に発達してはいるが、それ以外は普通のスポーツ選手に比べると頼りなげに見えるくらいである。

確かに色っぽいと思ったことは認める。それに、綺麗だ。仕事もできるし、尊敬できる上司だ。俺は幸いバイト先で横柄な上司や、先輩に当たったことは無いが、友人どもの話を聞けば、そんな奴はざらにいる。
だが、だからといって、ソレが即、そっちに結びつくか????

「お前、何百面相してんだ?」
不思議そうに課長が、たくあんを口に放り込みながら、首をかしげた。
「ええ~、っと…、その…」
いきなり話を振られて、俺は焦りまくってしまう。上手いいい訳が思いつかず、しどろもどろになる俺を見た課長が、くすりと笑った。
あの笑いだ。何処か人の悪い、小悪魔の笑み。
「何処かずれてるのか、それとも天然なのかと思ったが、そういう年相応の慌てた面もするんだな」
「は、はぁ」
何を云われたのか判らずに、ひたすらうなずく俺に、課長がずいっと顔を近づけた。
「ふふ。この顔が気になる? それとも、俺のカラダ?」
メガネをはずした課長は、目もとの泣きボクロがあらわになって、凄絶に色っぽい。口調も、ヒロさんや店の連中に対するものと変らなくなっていて、俺は焦りまくった。
「どうなの?」
甘い息を吹きかけるように、俺を誘う声に、俺の理性が砕け散ったのは、仕方が無いと思って欲しい。
誘われるまま、フラフラと妖しい笑みを全開にした課長に襲い掛かったのは、もう必然だった。


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