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番犬の憂鬱<16>完 

真幸さんを離したのは、すでに明け方に近かった。
自分でもがっつきぶりに呆れるが、それでもいいと真幸さんは云ってくれた。
「真幸さん」
抱き締めてキスをねだると、真幸さんが俺の頭をコツンと叩く。
「馬鹿、これ以上は無理だ」
「そんなことしません。キスだけ」
俺がねだるのに、真幸さんが笑って応えた。
あわせた唇は、子供のキスだけで終わるが、それで良い。それで充分だ。
あっさりと離れたのが意外だと、真幸さんが俺を仰ぎ見る。
「俺、急いで大人になるのは止めます。どう足掻いても追いつけないから」
「ああ。それでいい」
俺が云うと、真幸さんは幸せそうに微笑んで、俺に腕を伸ばす。
頭を撫でられた。細い指が髪を梳く。今までなら、子ども扱いに抵抗していただろう。
でも、今はそれが気持ちいい。
「真幸さん。俺、すごく嫉妬深いです。でも、仕事なら我慢しますし、ヒロさんのことも承知の上です。だから…」
「だから?」
促されて、迷っていた続きを口にした。
「嘘は吐かないで…」
まっすぐに真幸さんの瞳を覗き込む。
真幸さんも、俺を真っ直ぐに見ていた。
「ああ。吐かない」
あっさりと真幸さんは云う。
「ヒロとも、もう寝ない。云ったろ? いなければって」
俺と付き合うようになった最初の頃、確かにそんなことを云っていた。
いなきゃそれなりだが、特定の相手がいれば、寝ない、と。
「まぁ、アイツがぼろぼろになるようなことでもありゃ別だがな。その時は、お前と二人でアイツを慰めるか?」
楽しそうな真幸さんには悪いが、俺は、ヒロさんの逞しい身体を思い出してげんなりした。
「勃ちそうに無いんですが」
正直に云うと、真幸さんはぶっと噴出す。
「何だ? お前、ナチュラルにヒロを抱く気だな」
「へ?」
それって、もしかして…。
「無理です、無理です、絶対に無理!」
「あいつ、上手いぞ?」
上手いとか下手とか、そういう問題じゃないだろ!
クスクス笑いながらの真幸さんの言葉は、悪戯っぽい瞳を見なくても、十二分に冗談だと判るが、想像するのもゴメンだ。
「お、俺、そっちも真幸さんがいいです」
「は?」
真幸さんが呆気に取られた目で俺を見る。
「お前、そんなに俺がいいの?」
「はい。真幸さんだけです」
仕事が出来て、カッコいい大人で、我侭で、酒に呑まれて、優しくて、色っぽくって、可愛くて。
この人の全部を俺のものにしたい。
「こんな、オヤジの何処がいいんだ? 云っておくが、俺はヒロより五つも上だぞ。もう四十近いんだ。お前はまだ、これからなんだぞ。その身体と顔なら、いくらでも女は寄ってくる」
「でも、俺は貴方がいいです。これからもずっと真幸さんがいいと云ってくれるなら、俺は真幸さんといたい」
何でこんなに惹かれたのか。
「子供だな。これから先なんて誰も分からないんだぞ。俺だって、今はいいが、後五年もすりゃ、いい中年男だ」
「十年したら、俺も中年男です。若い女の子なんて、誰も寄ってきません」
抱き締めた真幸さんの細い身体は、俺の中で震えている。泣いてるのかと顔を覗き込んだ俺の耳に聞こえてきたのは、堪えきれない笑い声だった。
腹を抱えて、爆笑する。
「な、何が可笑しいんですか? 俺、本気ですよ!」
ムッとして怒鳴った俺に、真幸さんが手を伸ばした。
「負けた」
負けたって? 何に?
「お前だけだよ。お前だけを俺は見誤る。その時点で本気だって判ってたんだ。ただ、ちょっと、大人の意地で抵抗したかっただけさ」
それって? 俺に本気だってことだよな?
「負けたよ」
あまりの幸運に、自分に都合のいい夢でも見てるのかと、呆然となった俺の頬に、真幸さんの冷たい指が触れる。
そのまま、真幸さんから唇を重ねてきた。
誘う舌に、俺はそのまま口付けを深くする。
そのまま、押し倒そうとした俺の胸を真幸さんが押した。
「腹減った」
云われてみれば、とっくに朝は明けきっている。
「そうですね。シャワー浴びてきてください。今日は何がいいですか?」
真幸さんが来るようになってから、うちの冷蔵庫は結構食材は豊富だ。
「何でもいい。お前の作るものは何でも美味いからな」
真幸さんが立ち上がる。
ベッドの上にあったカッターシャツがさらりと落ちた。
それを拾って洗濯機に放り込み、俺は冷蔵庫を開ける。
朝のいつもの風景だ。


<おわり>


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