スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


想いを縛りあうとき 

BL観潮楼夏のお題「夏―心を焦がす恋―」第二段は「優しい雨が降るとき」の続編です。
みなさま、お待ちかねの初夜バージョン。
参加作品一覧はこちら


【想いを縛りあうとき】


「暑っー」
腕でぐいっと流れる汗を拭った。
駅から徒歩十分。目指すのは晶彦のアパート。
四月から、地方都市に単身赴任をしている部屋。

幼い頃からの約束どおりに、十八の誕生日に、晶彦は俺をお嫁さんにしてくれると云った。
約束の証の腕時計は、晶彦とお揃いだ。男の俺が(しかも、俺はまだ学生だ)、いつも身につけていられるもので晶彦とペアに出来るものを。と晶彦が一生懸命に考えてくれたもの。
腕に着けられ、誓いのキスを交わして。
俺は、本当に晶彦のお嫁さんになるんだな。って思ったのに、その日のうちに晶彦は帰ってしまった。
はっきり云って、拍子抜け。

でも、晶彦が帰った後で、俺の机に残されていた包みに気付いた。
リボンに包まれたそれを開くと、中身は皮製の大人っぽいキーケース。だけど、鍵は既にひとつ付いていた。
同封されていたのは、新幹線のチケットと地図。
「何、コレ?」
疑問で一杯になった俺の横で、メールの着信音が鳴り響く。
「晶彦だ!」
携帯を開いて、メールを確認した。ハッピーバースディのデコメが踊る。

龍樹へ。
机の上に置いてあるのが、本当の誕生日プレゼントだ。
これから、龍樹にもそういうものが必要になるよ。
同封したチケットと地図で、僕の家までおいで。
僕が夏休みの間、一緒にすごそう。
ただし、龍樹が来たら、本当にお嫁さんにするからね。
覚悟の上で来ること。

何度もメールを読み返した。
最初は、恥ずかしくて嬉しかった。晶彦はホントに俺をお嫁さんにしてくれるんだ。
もう一度読み返して、青くなった。それって覚悟が出来ないなら、来なくていいってこと?
こんな時まで俺を待ってくれる、晶彦の優しさが恨めしい。
もう少し、強引でもいいのに。
「晶彦の馬鹿野郎…」
こんなのどうしたらいい? でも、俺が引いたら晶彦はきっと笑ってこういうんだ。
『ごめんな。龍樹にはまだ早かったかな?』
それで、その先は?
「うわーッ、駄目だ。そんなことしてる間に、晶彦誰かにとられる!」
ベッドの上で、のたうちまわる。嫌だ、そんなの。
「晶彦のお嫁さんは俺だもん」
呟いて、シーツを被る。ぐるぐると考えているうちに、眠ってしまった。


結局、メールの返事は出せないまま。
渡されたチケットを使って、俺はここへと来ている。
深呼吸して、呼び鈴を押した。
だけど、いくら待っても応答が無い。
どうしようかと考えて、思い当たったのは、キーケースについていた鍵だ。
「もしかして」
鍵を差し込むと、かちりと軽い音を立てて開く。
「これで開けて、自分で待ってろってこと?」
言葉に出すと中々恥ずかしい。
ドアを開けて中へ入ると、ムッとした空気が暑かった。あわてて、エアコンを探す。
エアコンを付けて、改めて部屋の中を見回した。
ベッドとパソコンラックと、テレビとテーブルだけの部屋。
テーブルの前には、俺の部屋にあるのと同じクッションがある。
「えへへ」
俺の場所がここにあるんだって、嬉しくなって、俺はそのクッションに顔を埋めた。

いつの間にか眠っていたらしい。ドアの開く音で目が覚めた。
「おい、小松。ドア開いてるぞ?」
「開いてる?」
晶彦の声だ。もう一人は誰だろう?
「龍樹? いるのか?」
部屋へと走りこんできた足音は間違いなく、晶彦のものだ。
「うん、晶彦。おかえ、」
おかえりと続けようとした俺の身体は晶彦に抱き締められる。
「龍樹。来たんだな」
「うん」
恥ずかしくて、うなずくことしか出来ない。
「大丈夫なのか、小松。お前酔っ払って足立たなかっただろう?」
晶彦を追って入ってきた男が、呆れたように呟いた。
「大丈夫です。何よりの薬がここにいますから」
「晶彦?」
晴れやかに晶彦が笑う。見たことが無いくらいに幸せそうに。俺以外にそんな顔、見せないでよ。
「龍樹」
振り向いた晶彦が、急に真面目な顔で俺の名を呼んだ。
「僕のお嫁さんになりに来たんだね?」
え? こんな奴の前で云うの?
「答えてやれば?」
男がちゃかすように、ニヤニヤ笑って口を挟んだ。
「龍樹、僕は彼に交際を申し込まれている。龍樹次第で僕の答えは変るよ?」
「え?」
「龍樹はそれでもいいの?」
「嫌だ…」
反射的に口から飛び出した言葉は、嫉妬。
「晶彦は俺のだ。俺が晶彦のお嫁さんになるんだ」
「覚悟はしてきたね?」
「うん」
俺は、晶彦のお嫁さんになりにきたんだ。
「龍樹」
晶彦のキスは、苦い。お酒の匂いがした。あの人が酔った晶彦を送ってきたんだ。
誰にも渡したくない。晶彦の首に、しがみつくように腕を廻した。
頭がくらくらする。足がガクガクして立っていられない。
晶彦が、俺の身体を抱え上げた。
ゆっくりとベッドへと下ろされる。
そのまま、覆いかぶさってくる晶彦に、俺は慌てて腕を突っ張った。
「晶彦、待って。俺、外歩いてきたままだ、汗臭いよ」
「いいよ。龍樹の匂いだ。それに僕だって酒臭いだろう?」
晶彦が酒臭いと云った事で、俺はもう一人の存在を思い出した。
「晶彦、あの人は?」
「もう、いないよ」
晶彦の手が這い回る。その度ごとに、俺の躯が跳ねた。
交わしていたキスは、激しいものになって、晶彦の舌が俺の中を探るだけで、俺の躯から力が抜けていく。
まるで、晶彦の操り人形みたいに、晶彦の手で動かされる。
「晶彦…」
怖くなって、晶彦の腕にしがみついた。
「お前は、もう僕のお嫁さんだよ。旦那様にまかせていなさい」
優しい筈の晶彦の声は、いつもの晶彦のものなのに、いつもとは違う。
「龍樹は僕のものだよ。ずっと昔から、僕のものだ」
抱き締められて、貫かれる痛みは、晶彦が俺を独占したがっている証拠。
「晶彦…」
リアルに感じる晶彦の存在感は、俺に痛みさえ忘れさせる。
「龍樹。もう、おばさんたちが何を云っても、龍樹は僕のお嫁さんだ。解ったね?」
繰り返し囁かれる言葉。それはゆりかごのように俺をあやす。
だけど、晶彦。晶彦も俺のものだ。
俺を甘やかして、晶彦無しでいられなくしたなら、晶彦が責任とって。
晶彦でずっと縛り付けて。
晶彦だけ、それでいいから。


<おわり>


FC2 Blog Ranking
完結小説一覧

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(2)


~ Comment ~

Re: はう~~~

相変わらずの甘やかしっぷりですが、普通は自分の部屋の鍵を渡した途端に連絡がなくなるって
結構、龍樹ヒドイです(笑
そんな相手を前に冷静ではいられませんよ。
同僚の話は、また後日譚で。
疲れも吹き飛ぶくらいになってくれたら、嬉しいです。
[2010/07/25 22:08] 真名あきら [ 編集 ]

はう~~~

飛んできました!!ああ、ステキ!甘い!
初夜!!
晶彦さん、大人で冷静で余裕ある態度で、
じっと龍樹くんの覚悟ができるの待ってたようですが、
内心実は、結構焦っていたのかな~?
戸惑いつつも、嬉しさのこみあげる龍樹くんが
可愛い~~。謎の同僚さんが気になりますが。
(強力ライバル?)
もう、ステキで幸せで、くねくねしちゃいました。
あきら姐さん、ありがとう~~~!!
[2010/07/25 06:31] るか [ 編集 ]















管理者にだけ表示を許可する


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。