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整形美人<10> 

「そりゃまた…」
気の毒すぎて、掛ける言葉も無い。
見ることさえ出来なくなった神楽くんは、ますます暗く後ろ向きになる。
そして、高校生になった神楽くんの前に、都会からの転校生が現れた。
社交的で明るく、頭も良い。田舎の因習にも縛られず、神楽くんにも分け隔てなく接してくれるその子に、神楽くんは友情と感謝の念で接した。
大学生になって、多くの若者たちが地元を離れていく。地元から大学へと通うのはかなりの距離があり、神楽くんは当然ながら地元へと残り、実家の手伝いをしながら、時折帰郷する友人と、楽しく過ごしていた。
誰も神楽くんの周囲にはいなかった。その子以外は。
唯一の友人に友情を越えた想いを抱いているのは、家族にはすぐにばれる。
引き離され、寂しい想いを抱く神楽くんに、今度は縁談が持ち上がったのだ。
「私たちは神への捧げ物。家族など持つわけにはいかない。当然、神楽に次代の巫女の父親になってもらわないといけないのよ」
「おい、それじゃ、神楽くんの意志は何処にあるんだ?」
反論した松平の表情は非常に硬い。
何の自由も楽しみも与えられず、友人からさえ引き離して、今度は家の為の縁談か?
「勝手でしょう? それで家を出たんですよ」
「当たり前だ。人柱じゃねーか」
俺も思わず、反論していた。
「顔を変えたのは、少しでも明るくなるかと思って」
「お陰で探すのに時間が掛かったわ。神楽、お遊びは終わりよ。帰って頂戴」
居丈高に宣言した女が立ち上がる。今にも神楽くんの手を引いていきそうだ。
俺は女の前に立ち、松平が横から神楽くんの肩を抱く。
「神楽くん、パソコン打てる?」
松平の唐突な問い掛けに、神楽くんが首を捻った。
「教授の研究室で、研究資料をまとめてくれる人を募集している。給料は安いけどね」
成程、目を離さないようにする訳か。
「じゃ、松平と一緒にここに住むか? 部屋は余ってるし」
俺の元女房は夢見がちな性格で、小さいが、いもしない子供部屋がふたつある。
今の状態でアパートへ返すのは、危険だ。
どうやら、姉には逆らえない性格らしく、さっきだって俺たちが止めなければ、ふらふらと立ち上がりそうな雰囲気だった。
「パソコンは出来ます。あの、ここに住むって?」
「冗談じゃないわ!」
皇姫が激しい調子で立ち上がる。
どうやら、気位の高いお姫様はこの展開にはご不満そうだ。
「貴方たち、一体なんなの? まるでナイト気取り。可笑しいんじゃない? こんな地味な子に!」
「地味じゃないと思うがな」
俺は嫌みったらしく、神楽くんの肩に手を置いた。確かに今の神楽くんの顔は、非常に華やいだ美貌である。
皇姫がぐっと言葉に詰った。
「俺はついでだが、松平はどうかな? 殿、どうなさいますか?」
俺は態と松平にそう呼びかける。こんな時代錯誤な女には、松平の名前は有効だろう。
「真田。世話を掛ける」
俺の思惑に乗ったのではなく、松平の改まった頼みごとの時の癖だ。
「承知いたしました」
そう云うだろうことは見越した俺は、素直に頭を下げた。
「神楽くん。コンビニ、しばらく休むかい?」
「いえ、辞めます。迷惑は掛けられない」
聞いていられないとばかりに、荒々しく皇姫が身を翻した。誰も後は追わない。
バタンと扉を閉める音が響き渡った。


「いいのか、真田?」
「いや、やりすぎた。ここまで煽るつもりじゃなかったんだが」
正直なところ、深く関わるつもりじゃなかったんだが、あんまりな皇姫の言い草に、思わず口が滑った。
「お前、そんなことやってるから、奥さんに逃げられるんだぞ」
「解ってる」
お前に云われなくても解ってる。俺は口が過ぎるのだ。女房が出て行ったときの大喧嘩だって、言い過ぎた自覚はある。だが、それが俺である以上、何度も繰り返すのは目に見えていた。
「真田さん。本当にいいんですか?」
「ああ。売り言葉に買い言葉って奴だがな。口から出ちまったもんは仕方が無い」
頭をかく俺に、神楽くんは居住まいを正す。
「お世話になります」
三つ指付いて、マナーの見本のように頭を下げられて、俺は視線をさまよわせるだけだった。


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