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夏休み<前編> 

今週より、すっかり遅くなった夏企画をUP。

続編アンケート、ご協力ありがとうございました!
皆様のご要望を全て叶えるのは、さすがに無理ですが、どれも面白かったです。
じっくり吟味して、消化させていただきます。
その中で「宮川課長や眼鏡‘sを巻き込んで夏らしい話を」というご意見が。
それを中心に、株式会社創技の3カップルの夏休み。
3回ほどの短編ですので、お付き合いください。


【夏休み】

<中編> <後編> <おまけ>


「真幸さん、貰った地図だとこの辺りですよ」
俺のずーっと年下の恋人・上総は駅で借りたレンタサイクルを止めると、不思議そうに首を傾げた。
箱根の別荘なんてものに誘われたのはいいが、この辺りは、高級旅館が軒を並べている。
上総の強脚には、二人乗りの山道など何のことはないらしく、俺を荷台に乗せてすいすいと上ってきた。
「鈴木、あれでいいトコの坊ちゃんらしいからなぁ」
こんな高級旅館街の真ん中に別荘があっても不思議じゃないが。
「あの、すみません」
山道を下りていく老婆に上総が声を掛ける。
「鈴木さんの別荘ってどちらかご存知ですか?」
礼儀正しくはきはきした、ハンサムなスポーツマンに声を掛けられれば、女性(例え年を多少食っていようが)は、大抵親切に、機嫌よく教えてくれるものだ。
「鈴木さんところは、これだよ」
案の丈、にっこりと笑った老婆は目の前の大きな洋館を指す。
「はぁ?」
「すげーな」
思わず、礼を述べるのも忘れて、唖然と建物を見る俺たちを、老婆はクスクスと笑う。
「元華族さまらしいからねぇ。良ければ、これ持っていって頂戴」
老婆に差し出された、手作りらしいジャムのビンを渡された上総が、嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
腰を折って礼を述べる上総に、老婆はにっこりと品良く笑いかける。
「綺麗な坊ちゃんによろしくね」
「はい、ちゃんと渡します」
云われた言葉がわからなかったらしい上総に代わって、俺が愛想を振りまいた。
老婆は頭を下げると、山道をトコトコと下っていく。
「まぁ、ご老体にとっては、四十男でもまだ『坊ちゃん』だろうさ。さ、いくぞ」
俺はバッグを持ち直し、自転車を押す上総を促した。


「おう、よく来たな」
出迎えてくれたのは、カフェエプロン姿のダンディな渥美営業部長だった。
「お招きに預かりまして…」
「挨拶は鈴木にしてくれ。俺の別荘じゃない」
頭を下げようとした俺を制して、渥美部長は俺たちを別荘の中へと招き入れる。
「何を飲む? コーヒーか、紅茶か? それともアルコールもあるぞ」
冗談抜かせ。いくら休日でも、上司の前で昼間からアルコールなんか煽れるか。
「あの、これ。鈴木さんに渡してくれって」
上総にしては珍しく、つっけんどんな調子で云い出す。可愛い奴。俺に近寄るゲイの男には、牽制しまくりなんだからな。
「へぇ、手作りジャムか」
「ここの前で、おばあさんに頂いたんですよ。品のいい感じの、腰の曲がった女性。『坊ちゃんによろしく』だそうです」
「はは。子供の頃から来てたんだって云うからな」
「鈴木さんは?」
不安になったらしい上総が聞く。
「上で昼寝だ」
「張り切りすぎたんじゃないですか?」
当てこすると、渥美部長が苦い顔をして立ち上がる。アタリか。
あの細い鈴木の身体じゃ、この人の相手はたまったもんじゃ無いだろう。
「せっかく、手作りのジャムがあるなら、紅茶にしよう」
「いいですね」
大股で男らしく歩く姿と、カフェエプロンでおさんどんと云う現実が、どうも一致しない。
もっとも、あの人生全てかったるそうな鈴木の恋人だというのなら、一通りの世話は焼いているだろうけど。

俺は通された居間で、隣に座った心配性の恋人にもたれながら、綺麗に手入れされた薔薇とひまわりの咲く庭を眺めながら、上司が紅茶を入れてくれるのを待ってる。
うん、贅沢だ。
「あの、真幸さん」
「うん?」
「困るんですが」
「何が?」
顔を赤くしてこっちを見ている上総に、態と体重を掛けた。ますます、顔を真っ赤にして、もじもじしている。
こういう素直すぎる反応がコイツは可愛いんだ。
二十近く年の離れた子供にハマッている自覚はあるが、それでもこういう反応が見たくてからかってみる。
「キスしたくなります」
だが、そんな俺相手でも、上総は真っ直ぐに欲求をぶつけてきた。
「いいぞ」
どうせしばらくは掛かるだろうし、鈴木も降りちゃこないだろう。
俺は誘うように、唇を薄く開けて、目を閉じた。
降りてくる上総の頭を抱え込むように腕を廻し――――。

「渥美部長。買出し行ってきました~」

ドアが勢い良く開いて、上総の動きがぴたりと止まる。
振り向くと、立っているのは背の高いメガネの二人組。
「葛西、笠置」
「宮川、課長?」
総務の若い連中だ。チッ、鈴木と部長、俺と上総だけだと思ったから、妙な気は使わなかったんだが、他にも客がいるのか。

「あ、お邪魔ですね。失礼しました」
丸いメガネの葛西がぺこりと頭を下げ、唖然とした顔で突っ立ったままの笠置の袖を引いてドアを閉じた。
「真幸さん、見られ…」
見られましたねと続けようとする上総の頭を引き寄せて、そのままの体勢で、強引に唇を重ねる。
あの体勢で見られたんなら、どう取り繕っても無駄だ。
それより、やりたいことを我慢するほうが身体に毒だしな。
「真幸さん、もう一回、いいですか?」
唇を離した上総は、すっかりオスの顔になっている。そう問われて、俺はにっこりと微笑んだ。
「上総」
熱っぽく囁く。
スポーツマンらしい鍛えられた腕が、俺を引き寄せ――――。

ガチャ、と音を立ててドアが開いた。
「悪ぃ、邪魔したな」
固まったままの俺たちを見て、鈴木はそう云ったものの、立ち去る訳でも無く、居間の中へと入ってきた。
日当たりのいい、デカイソファに優雅に身体を投げ出し、ぼうっとした視線で外を見る様は、非常に絵になっている。筈なのだが。
顎に無精髭と、いかにも今まで寝てましたと云わんばかりのよれよれのシャツでは、シャープな美貌も台無しだ。
「あ、続けていいぜ?」
俺たちの視線に気付いた鈴木がそう云うが。出来るか、ボケ。


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