スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


整形美人<11> 

その日の内に神楽くんが荷物を持ち込んできた。
家出してきたのに相応しく、大き目のドラムバッグひとつに全ての荷物が入っているらしい。着替えと、暇つぶし用に文庫本が数冊。モバイルパソコンに携帯電話。身の回りの品意外に広げられたのはそんなものだ。
コンビニのバイトは、さすがにすぐに辞める訳にはいかず、シフトの入っている週末までは続けるらしい。
その間は、松平が送り迎えをするということで片がついた。
「お前は来ないのか?」
「ああ。俺まで迷惑を掛ける訳にはいかんだろう」
遠慮する松平だが、別にそんな必要は無いのにと首を捻る。
「あのな、俺はこれから神楽くんとお付き合いしようと思ってるんだぞ? やっぱり、不味いだろ?」
あ、そう。割と硬いんだな。お前。
俺が意外そうな顔をしていたのが判ったらしい。松平は口を尖らせたまま、
「これが女相手ならいいがな。俺も神楽くんも男相手は初めてだ。勢いにまかせてなんて出来るか」
「お前、判ってはいたけど、真面目な男だな」
女相手にはかなりモテていた男だっただけに、もっと遊んでるのかと思っていたんだが。俺もかなり自分基準で物を見ていたらしい。
それとも、それだけ本気と云うことか。
「上手くいくよう、祈ってるぜ」
ぽつりと告げた言葉だが、松平はかなり感激したようだ。
いきなり、俺にがばりと抱きついてきた。
「真田、お前は何て…」
感激しすぎて言葉にならないらしい松平の背を、俺はぽんと叩く。
まったく、むずがゆいぜ。俺は口の過ぎるただのお調子者なのに。
「あの、真田さん。台所使わせてもらっても」
片づけをしていた神楽くんが部屋から顔を覗かせた。ソファの前で抱き合っている俺たちを見て、目を逸らし、パタンと扉を閉める。
「おい、神楽くん、誤解したぞ」
気付かなかったらしい松平に、俺はきちんと忠告をしたが、それさえ今は耳を素通りしているらしい。デカイ図体で、男泣きに泣き続ける男を、俺はひたすらやり過ごすしかなかった。


「お風呂頂きました」
頂きましたなどという古風な挨拶も、いかにも神楽くんらしい。
「いや、勝手に使ってくれ。俺は、基本シャワーしか使わないし」
むしろ、風呂の掃除までしてもらっているんだから、ありがたいくらいだ。
「ビール、呑むか?」
「ありがとうございます」
向かい合わせに神楽くんが座る。俺を見る目がなんとなく据わっているような感じなのは、俺の気の所為じゃないだろう。
「やっぱり、あなた方ってそういう仲じゃないんですか?」
ビールを煽って、切り出した神楽くんに、俺は天井を仰いだ。
あの後、神楽くんが簡単な夕飯を作ってくれて、俺たち三人は食卓へとついたのだが、松平に対しての神楽くんの態度の冷たいこと。
あてつけなのか、俺に対してはやたら愛想がいいものだから、松平はすっかりと萎縮して伺うように神楽くんを見ている。
それを神楽くんは、また綺麗に無視していた。
「あのな。俺はまったくそっちの趣味は無い。ちなみに松平もまったくないぞ。あいつが男がいいって言い出したのは、君が初めてだ」
俺の言い訳を、神楽くんは冷めた目線で見る。あれを熱い抱擁とか言い出すなよ?
「その割には、あなた方ってホントにべったりに見えるんですが?」
「高校の頃からずっとセット扱いだったんでな。俺としちゃ、松平と一緒にいると見劣りするんで遠慮したいが、奴の骨格フェチを聞いてやる相手が俺しかいないんだから、仕方無いだろう」
骨格に関する情熱は認めるが、世のオタクの常で、その情熱的な言葉の奔流からは誰しもが逃げ出す。俺だって聞いている訳じゃない。そこは付き合いの長さで受け流しているだけだ。
「俺だけじゃないんですね」
軽く頭を振って、神楽くんがため息を吐く。
「何が?」
「俺、何でデートの途中で、貴方の家に寄ったと思います?」
あちゃー、アイツ、デート中に語りだしちゃったのかよ。
「いつもの休日はどう過ごしているんですか?って聞いたら」
俺の家で、呑んでるって云った訳ね。さもありなん。ん? ということは。
「それって、君の中で答え出てるんじゃないか?」
松平と二人じゃ気詰まりだって云うんだろ?
「まぁ、そうなんですけど。こうなった今、俺に拒否権ってありますか?」
あそこで皇姫に会ったことが番狂わせか。
「ここまでお世話になって、真田さんにまで迷惑掛けて。それにあの人、悪い人じゃないのは判りますし」
ナンとも義理堅いことで。
「君の願望なんだろ? 俺と松平が出来てればいいってのは」
申し訳無さそうに、神楽くんがうなづいた。


NEXT

FC2 Blog Ranking
完結小説一覧

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(-) 


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。