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整形美人<13> 

「あれ、松平さん。まだいいんですか?」
さすがにいい時間になっても帰らない松平を、心配したように神楽くんが訪ねる。
「今日から俺もここに泊まるから」
「ああ。そうなんですか」
ちらりと俺に視線を流す神楽くんを、俺は無視した。正直、松平と揉めてまで、神楽くんのご機嫌を気にしなければならない理由は俺には無い。
「じゃ、俺はもう寝るから」
すがるような神楽くんの視線を無視して、俺は切り捨てるように寝室の扉を閉めた。正直、これ以上の気まずい思いはまっぴらだ。
女房が居なくなった今、だだっ広いだけのダブルベッドに潜り込む。
とりあえず、二人だけの時間を作ることだ。
実際、皇姫から神楽くんを庇っていた松平は中々に男前だった。ああいう松平を頼りになると思ってもらえれば、見直す機会もあるだろう。


「おい、勝手に寝るな」
酒臭い息が掛かって、俺は布団をめくり上げたのが松平だと悟る。
「お前、やっぱり昨日、神楽くんと何かあっただろ?」
「何もねーよ」
うっとーしいっつーの! せっかく良く寝てたのに。
俺は布団をかぶりなおして、そのまま丸くなった。それを再び揺り起こして、松平は話を続けようとする。
「本当か?」
「だーッ、うるせえな。お前が今、しなきゃいけねーのは、神楽くんを守ることだろうが!」
しつこく揺り起こす松平に、俺がキレた。
「それとも何か? お前は惚れた相手が惚れてくれなきゃ、守らねーとかぬかすんじゃねーだろーな? 男なら、見事に守り抜いて惚れさせてみろッ!」
怒鳴りつけた瞬間、しまったと思ったが、もう遅い。
すっかりと酔いの冷めた顔で、肩を落として出て行く松平を、俺は我に帰って呆然と掛ける言葉も無く見送ってしまった。
「やっちまった」
しくじったという思いはある。松平は多分、焦っているのだ。理想の骨格の所為か、何時に無く松平は神楽くんに固執していた。
だが、神楽くんの理想とする男は、自分とは掛け離れている。
俺としては、神楽くんみたいな箱入りは、本当の恋をしたことが無いだけで、理想の自分がなりたかった男像を、相手に求めているだけだ。
それは恋情とは違う類のもので、大人になれば判る筈だと思う。
なので、むしろ松平がフラれるとすれば、神楽くんがそれに気付いたときだと思っているんだが。
「大人になってかかる麻疹は治りにくいからな」
考え込んでいても仕方が無い。俺は頭を切り替えて、寝る事にした。もっとも、こんな精神状態で眠れるかどうかは怪しいモンだったが。


「あれ、松平は?」
シャワーを浴びて出てくると、神楽くんが出掛けようとしているところだった。
「もう出掛けてるみたいですけど?」
「おいおい」
それは不味いだろう。
「待て。神楽くん、送っていくから」
俺は急いで着替えて、出て行こうとする神楽くんの後を追った。
「昨日、カッコよかったですよ」
並んで歩く神楽くんが、クスリと笑う。
「云わないでくれ」
「何故ですか? あれで松平さんが引いたってことは、俺のことなんか所詮はその程度ってことでしょう?」
「違う!」
俺は松平を良く知っていた。そんな男じゃない。
「落ち込んでるんだよ。松平は。そんな風に思わないでくれ」
自分のことしか考えていなかったことに気付いて、すごく落ち込んでいるんだ。
「やっぱり、真田さんって松平さんのこと好きなんじゃないですか?」
「嫌いで十数年もつるんでる訳がないだろう」
好きの種類は違うけどな。神楽くんが誤解をしているのは承知の上の返答だ。
「だったら、俺にもチャンスありますか?」
「チャンス?って、何の?」
「俺、真田さんが好きです」
「ああ。そう?」
何となく、云われるかとは思っていたから、驚きは無い。
大人になれば、察しぐらいは付くもんだ。
「本気ですから」
睨みつけるように俺を見るのは、軽くいなされたと思っているからだろう。
さて、この後に松平に何て云おうか。

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