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整形美人<15> 

なるべく神楽くんと時間を合わせないように、尚且つ、神楽くんを見守れるように。俺は帰宅と出勤の時間をずらすことにした。朝はなるべく遅めに起きて、神楽くんのいるコンビニで買い物をして大学へ向かい、夜は神楽くんと松平が家に戻った後に帰る。
このときも、一応コンビニには寄る。
今となっては、早く皇姫が仕掛けてきてくれないかと思っていた。出来れば、神楽くんがコンビニに勤めている週末までに。
さすがに利己的過ぎて嫌になる。自己嫌悪に陥りながら、俺は家路を辿った。

角を曲がって、もう少しで家に着く、筈だった。
そこには神楽くんと松平が立ち尽くしている。
「おい、松平。一体、何が…」
そこにいたのは、皇姫と知らない男だった。だが、神楽くんの青ざめた顔を見れば判る。
俺とちょっと似た体型の若い男…。
「山神」
「湯島」
お互いに呼びかけたまま、無言で向かい合う。こいつが多分、神楽くんの初恋の相手だ。
「山神。お前、家出したって本当なのか?」
「ああ。本当だよ」
「皇姫さんは、お前が妙な男に騙されたって」
「それを信じて、連れ戻しに来たんだ」
神楽くんの横顔は何処か寂しそうだった。唯一無二の友人だった男が、自分ではなく、姉のいう事を信じたのがショックだったのか。
それを支えるように、松平が神楽くんの肩を抱いた。
「お前が山神を誑かしたのか?」
男が松平に食って掛かる。
「神楽くんは立派に一人の男だ。自分の生き方は自分で決めるだろう」
松平は冷静にその男と対峙した。こういう時に、松平は神楽くんを後ろに庇うような真似はしない。
隣に立ち、しっかりと肩を支えるだけだ。
息を吸い込んだ神楽くんが、しっかりと前を見る。
「俺は、二度と村には戻らない」
「山神…。二度と? じゃ、村に帰っても、お前はいないのか?」
呆然と訴える男に、ちょっとだけ神楽くんが揺れたのが判った。応えてもらえない相手でも、いや、そんな相手だからこそ、可能性にすがりたくなる。
多くを望まなければいいのではないかと。
「好きでも無い相手と、無理やり結婚させられても、お前は神楽くんに自分の為に、村にいろと云いたい訳だ」
「真田さん?」
神楽くんが驚いて俺を見あげた。
俺がずいっと前に出ると、本当に同じようなタイプであるのは明確だった。
似たような体格と、似たような容姿。俺の方が少しだけ厚みのある身体つきをしているだろう。確かに皇姫が勘違いするのも判る。
「自己中もいいところだな」
「だが、男なんかといるよりはいいだろう!」
図星を指されたようで、男はむっとして反論してきた。自分が地元に帰ったときに、迎えてくれる友人たちには変らずにいて欲しいってか。
徹底的に頭が足りない。最も俺の嫌いな人種だ。
「それは神楽くんが決めることだ。お前じゃない。何の為に神楽くんは顔まで変えたと思う?」
「それは…」
男が言葉に詰る。後ろでは皇姫が俺を刺すような視線で睨み付けている。
暴力沙汰にでも訴えてくれれば、こっちも楽だったんだが、こういうからめ手で来られるとはね。
確かにこれならば、神楽くんは自分の意志で田舎へ帰りそうだ。
「神楽くんは、ここで新たに生き直したかったんだよ」
「真田さん…」
もういいと云う風に、俺の腕を神楽くんが引く。
だが、それでは俺の気がすまない。
「神楽くんは、何も与えられなかった。自分で何かを掴む為に家を出たんだ!」
男がうな垂れた。神楽くんの前だが、こんな奴は叩き潰しておかないと、為にならない。
「お前、皇姫からいくら貰った?」
ずばりと切り出した俺に、男が目をそらした。
カマを掛けただけだが、確信はついていたらしい。
「まさか。嘘だろう? 湯島ッ!」
親友であった男に、神楽くんが詰め寄った。箱入りのお坊ちゃん。信じたくないだろうが、人生はそんなもんだ。
「もう、いいわ!」
皇姫がくるりときびすを返す。今日のところはこれで引き上げという訳か。
男も慌てて、神楽くんの腕を振り払った。
神楽くんは呆然と振り払われた手を見つめている。
しばらくして、大きなため息を吐くと、そのまま俺の家に向かって歩き出した。

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