スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


光と影 

カロリーハーフchobonさまのオヤジ祭りに乗ってみました。
こちらのイラストのイメージで。

【光と影】

突き上げられる痛みに交じる快楽。
麻薬のようなそれを感受するようになって、もう数ヶ月が過ぎた。
「いい? 麻耶さん?」
「あ、いいッ、沙耶…」
訳も判らず、耳元へと囁かれる言葉へと、鸚鵡返しに言葉を返す。
「可愛いよ。麻耶さん。貴方、最高だ」
耳朶を噛まれ、受け入れている奥が震えた。


翌朝、だるい身体を起こすと、既に沙耶の姿は無い。
日も高い。とっくに研究室(ラボ)にでも出掛けたのだろうと、俺は食事を取る為に、階下へと降りた。
直行のエレベーターは、上層階のみに設けられている。
こんな時代になっても、まだ、特権階級と云うのは息づいているらしい。
ビル一つに、病院も学校もショップもレストランも全てが揃っている。
中空に設けられた、庭園をぶらりと一周して、空いている店へと入った。支払いはキーと一体になったカード。店の男の視線がちらりとこちらを見た。
俺のような冴えないオヤジが、ブラックカードを持っているのが不思議なのだろう。
そんな視線にも、もう慣れた。
沙耶は必要に応じて、俺を父親だと紹介するが、そんな説明を誰も信じてはいないだろう。
家族制度など、とっくの昔に崩壊したこの地上に、成功した息子が父親と暮らす必要など有り得ない。
俺と沙耶の顔は良く似ている。いや、同じと云ってもいい。だが、整形など数分で出来る。似ているからこそ、疑いは深まるのだ。

俺と沙耶が出会ったのは、沙耶の所属するラボだ。
沙耶は、他の大勢の才能ある若者たちと同じように、幼い頃から見出され、特別な教育を受けてきたエリートだ。
彼らの研究材料は、遺伝学。二十一世紀から、絶滅に瀕してきたレッドラインの生物を、現代へと伝える遺伝子の保管を目的にしている。
その彼らが、遺伝子採取の傍ら、谷底で凍り付いていた俺を発見したのは、偶然に過ぎない。
二世紀以前の遺伝子を、無傷で手に入れられることを、彼らは喜び勇んで研究室に持ち帰った。
俺が目を覚ましたのは、むしろ晴天の霹靂と云う奴だ。誰もそんなことは望んでいなかっただろう。
目を覚ました時に、そばにあったのは、沙耶の魅力的で懐かしい顔。
かつて俺と魂を分け合った相手と同じ顔だ。
二度と会うことなど無い、笑いかけることも無い顔――――。


「麻耶さん。どうしたの?」
「いや」
何を考えても堂々巡りだ。結論など出ない。
ここは俺の生きていた時代から二世紀も隔たった場所だ。
政治の一部さえ思い通りに動かしていた、俺たちの一族は崩壊し、スキャンダルにまみれた俺の名も残ってはいない。
「麻耶さん、キスして」
云われるままに、深く唇を合わせる。
「脱いで、ベッドへ」
少年といってもいい沙耶の言葉に、命じられるままに従う。
「足を広げて。見せてよ、俺が入るトコ」
羞恥など無い。俺は、沙耶がいなければ生きていけない、沙耶の愛玩動物にしか過ぎない。
「いやらしいな、麻耶さんは。俺に抱かれたい?」
「ああ。抱いてくれ」
若くみずみずしい躯が俺に覆いかぶさった。それが夜の合図だ。
舌がくまなく俺の身体を這う。もはや、衰えしか感じさせない躯には、過ぎた奉仕だ。
「麻耶さん。可愛い」
如実に反応を示す肌に、感嘆したような言葉が俺を煽る。
「とても素敵だ」
汚れきった中年男を、まるで大事な宝物のように扱う沙耶を、むしろ俺は憐れに思う。
こんな男を拾ったばかりに、無駄な時間を過ごさせている。
「沙耶…ッ」
追い詰められて、沙耶を呼んだ。
そうされることを沙耶が好むのを知っているからだ。
だが、いつもなら優しい瞳で満足げに俺を見る沙耶の唇に、薄い笑みが浮かぶ。
まるで、……のような、酷薄な笑み。
俺を嬲るときに見せていた、その……。


幾度も追い詰められ、焦れた俺に散々懇願させ、一晩中俺をさいなんだ沙耶が、俺から身を離すと同時に、俺は気力も体力も尽き果てて、眠りについた。

「麻耶、お前はお荷物だ。僕には必要ない」
冷たい瞳で沙耶と同じ顔の男が云い放つ。
俺の双子の弟は、沙耶と同じように幼い頃から才能を見出され、特殊な教育を受けてきた。
そんな才能など無い俺を哀れむような視線を向けるようになったのは、何時ごろだったのか。
溢れるほどの才能と、その自信から来る輝きは、俺と同じ筈の顔を秀麗な美貌に見せていた。口元に浮かぶシニカルな笑みも、それに拍車を掛けていた。
俺はいつでも弟の劣化したコピー扱い。
いつでも、俺は「兄の癖に」と云われ続けていた。その上、実の弟は俺の扱いが上手かったと云うべきだろう。持ち上げたり、落したり、日によって扱いは散々だった。
「麻耶と同じがいい」と云ったその口で、夕方には「麻耶といてもつまらない」と零すのだ。
期待しなければいいのだと知りながら、思わせぶりな態度や言動に振り回される。
恋人も友人も必ず最後には弟のものになった。
心は疲弊して、中年に差し掛かる頃には、すっかり諦めが心を支配していた。その筈だった。

冷たい態度も、視線も、向けられることには慣れきっていた筈。
だが、気付いた時には、俺の目の前には、頭から血を流して倒れた弟が横たわっていた。

傷つけられる事には慣れている。俺は平気だ。
そう思っていたのは、俺の逃避にしか過ぎなかったらしい。

その場から逃げ出した俺が向かったのは、幼い頃に共に出掛けた山。
厳しい冬山。碌な装備も無く、死だけを求めた。

吹雪の中、わずかに残った視界が、急に反転する。
落ちる感覚と、叩き付けられる痛み。

思ったような静かな死に様とは遠い。
力を失くして落ちた腕。指先に触れたのは氷のように冷たい水。
空を見上げると、一杯に広がるのは、真っ白な雪のダンス。

俺はそのまま引きずりこまれるように眠りに落ちた。

「おはようございます。気分は悪くないですか?」
「伽耶?」
にっこりと笑い掛ける顔は自分とまったく同じ顔。
二度と笑いかけるはずなど無い、その…。

それが俺と沙耶の出会いだ。


だるい身体を起こした俺は、ベッドの脇の引き出しを開けた。
そこには、俺と伽耶の写真とデータが入っている。
わざわざプリントアウトされた膨大なファイルには、俺と伽耶の誕生からの記録があった。

いや、これも実験の一つだろう。

「麻耶。起きた? 今日は一日一緒にいられるよ」
沙耶が甘えるように、俺の背中から抱き締めてくる。

その甘えたような仕草も、優しい声も、すべてが偽りだ。

『同一人格の環境による形成の違いと、自分自身のクローンに殺意を抱くまでの経過観察』
『環境は同じ人間の恋愛感情を何処まで左右するか』


<おわり>

FC2 Blog Ranking
完結小説一覧

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(6)


~ Comment ~

Re: 凄げぇ・・・

内緒コメYさま>
世界観にどっぷりとはまってもらえて嬉しいです!
>本物がどれでクローンがどれなのか考えてるうちに余計分からなくなっちゃいました~
ええ、態と曖昧なままです。これは麻耶の立場から見た真実で、事実は違うのかもしれません。
[2010/10/26 21:06] 真名あきら [ 編集 ]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
[2010/10/26 14:22] - [ 編集 ]

Re: 柚子季さま

全て知っていて知らぬフリ。
仮初の嘘でもそばにいて欲しい。
そんな刹那を書けたかしら?
多分、長編にするとくどくなると思うんで。
[2010/10/23 20:11] 真名あきら [ 編集 ]

いやもう、深い……。
長編で読みたいような、この長さだから良いような。。。
切なく苦しく、それでも愛おしい。
秋ですねぇ~。
いやぁーやっぱり姐さんすごいっす!!
[2010/10/23 17:38] 柚子季 杏 [ 編集 ]

Re: chobonさま

いや~、ナンチャってSF。
chobonさんのイラストを見た瞬間、ぱっと思いついたものの、上手くまとまらなくて、こんな形に。
え? エロい? うわ、褒め言葉です。
エロを書いてもエロくないと云われるんで、ぼかしてみたんですが(笑
[2010/10/23 14:56] 真名あきら [ 編集 ]

これから始まるのは新たな悲劇か、過去とは違う結末なのか……、
読む人の想像をかき立てる終わり方にしびれますね~~!!

そして、しっかりがっつり、エロ~~イですぅ!
[2010/10/23 14:31] chobon [ 編集 ]















管理者にだけ表示を許可する


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。