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整形美人<16> 

最近使わない家の前のコンビニの扉を神楽くんが開いた。
無言で棚の酒類を無造作にかごへ放り込む。
半分くらいが一杯になったところで、ちょっと立ち止まり、スナック菓子やから揚げや焼き鳥を入れた。
そのままレジへと向かう。
「自棄酒モードかよ」
俺は自分も右に倣って酒を買い込んだ。
しらふで酔っ払いの絡み酒の相手をするほど、馬鹿馬鹿しいことは無い。
松平は静かに帰っていく神楽くんの後を追った。

酒を山のように買い込んだ俺が、遅れて居間へ入ると、すでに酒の匂いが充満していた。
「遅いです!」
「悪い」
いきなり怒鳴りつけられ、俺は素直に謝った。酔っ払いには逆らわないに限る。
「飲んでください!」
日本酒のコップを差し出す神楽くんの目は完璧に座っていた。
俺は素直に注がれた酒を飲み干す。
その合間に、神楽くんもコップ酒を煽った。
良い呑みっぷりだ。
「何で判ったんですか?」
「ああ?」
「アイツが姉さんから金を貰っていること」
「知らねーよ。んなこと」
「は?」
俺の答えに、神楽くんは目を丸くしている。
「単なるあてずっぽうだ。大体、おかしいだろう。帰省シーズンでもないこんな時期に、偶然都会に勤めていた男に、皇姫が会えるか?」
「会えないでしょうね」
「わざわざ、皇姫が連絡を取ったとして、平日の夕方だぞ。その男はどれだけ都心に勤めてるんだ?」
いくら、友人が男に騙されているらしいと聞いても、普通の人間はほとんどが仕事中の筈だ。それに。
「仕事を早退もしくは休んできても、君に逢いたいと云うのなら、もっと必死さがあってもいい」
そういう状態なら、神楽くんのことを本当に無くしたくない親友だと思っているか、神楽くんに惚れてるかだ。あの男には、まったくそんな感じは無かった。
後は人間の動く理由なんて、簡単だ。
「腹が立つ人ですね」
「悪いな。酸いも苦いも噛み分けた汚い大人で」
松平がそっと下を向いた神楽くんの手を取る。
神楽くんはきっと泣いているに違いない。肩が震えていた。
俺はそれに気付かないフリで、酒を煽る。
「神楽くん、食わないんなら、貰うぞ」
焼き鳥に手を伸ばすと、その手を捕まれた。
「やっぱり、俺、貴方がいいです。貴方が誰を好きでもかまいません」
「気持ちだけ、貰っておく」
ニヤリと神楽くんが笑った。強かな男の顔だ。作り物めいた綺麗な顔より、そういう顔の方が好感は持てる。
笑い掛けようとして、顔を上げた瞬間、松平の悲しそうな視線とぶつかって、俺はやばいと我に帰った。
乱暴に神楽くんの手を払い、口に入れた焼き鳥は、味も判らない。
煽るように酒で流し込み、俺はひたすら酒を呑み続けた。


ベッドに倒れこんだのは覚えている。松平が支えてくれたのも。
「松平。早く、あの可愛い子ちゃん、モノにしちまえよ」
「ああ。そうだな」
判っている。これは多分に俺の逃げだ。
松平の好きな相手だからではなく、俺自身が好意を持ちはじめている。
もちろん、それはまだまだ、友情以前のものでしかないが、松平が諦めはじめているのが分かる。
松平が神楽くんを応援する立場になったとき、二人に押されて逃げ切れるかどうか。
非常に、分が悪そうな気がした。

誰かの息が身近にあるのに、俺は不穏な感じがして、目を覚ます。
酔っ払っている所為か、身体がろくに動かない。
重いまぶたを開くと、そこには神楽くんの顔があった。
「どういうつもりだ?」
押しのけようとして、果たせないのに気付く。
腕は後ろ手に縛られ、身体の上には神楽くんが乗っている。
「貴方が誰のことが好きでもかまわない。そう云ったでしょう?」
「だからって、力ずくってのは、どうかと思うぞ」
「貴方にもいい思いはさせてあげますよ」
「もっとグラマーな女なら、俺もこの状況下も楽しめたんだがな」
ニヤリと笑う神楽くんは、作り物めいた顔に、一気に生気が吹き込まれたようだ。
だが、好感が持てるからと云って、いきなりその気になる訳がない。
「貴方の好みは、松平さんから聞きました」
松平、お前口説く相手に、ライバルの情報与えてどうするんだ?
「じゃ、諦めてくれないか。俺も乱暴な真似はしたくない」
「この体勢だっていうのに、余裕ですね」
押さえ込まれてはいるが、腕が固定されているわけでも無ければ、足は自由だ。
反動を使って、腹の上の神楽くんを跳ね上げると、自由になった足で、思い切り蹴りを食らわせた。

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