スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


納期の祈り<水の魔法陣・焔の剣>*R15 

新年SS祭り。アンケート第一位・渥美と鈴木を抑えたのは、『ソルフェース×リベア』でした。

新年の祈りの中、リベアとソルフェースが確認する互いの想い。

【納期の祈り】

「水竜の騎士」
静かにソルは後ろへ控えた俺へ、優雅に手を差し出す。
俺は立ち上がり、腰の剣を抜き放つと、その手に柄を握らせた。
掲げるように捧げもったその剣を前に、流れるような呪言の詠唱が始まる。

王宮前の広場には大勢の民が集まっていた。手に手に南天の枝が握られている。
収穫期の作物を年貢として収め、厳しい冬の間、残った作物を保存用にしたり、春の市で売り出す為の商品を作ったりするのだ。
そのため、篭もりがちになる家の戸口には、南天の枝が魔を払うものとして置かれる。
もちろん、王都にはすでに四方に陣が敷かれているので、地方と違ってこの南天の枝に込める魔術は、ほんの気休め程度でいい筈なのだ。
だが、数年前にこの『納期の祈り』に顔を出した俺の剣まで使った大掛かりな祈りをやらかしたソルは、次の年から毎回、それを求められる羽目になった。
噂が噂を呼び、今じゃ立派に王宮の新年を迎える行事の一つに数えられるようになり、王宮前の広場には、篭もりがちになる筈の納期の時期だと云うのに、地方からやってきた旅人まで加わっている。
柔らかくまるで子守唄のように響くソルの詠唱がふっと途切れた。
俺の剣・魔封じの力を持つ焔の剣から、ゆっくりと何かが身を起こす。たちまちのうちに数メートルになった水の身体を持つ竜は、上空へと身をくねらせ、広場を睥睨した。
それを見送るように、ソルが詠唱の間、閉じていた紫紺の瞳を開く。
魔術師だけが持つ瞳が上空の水竜を捉えた。
ソルの力を半分わけたソルの半身はぐるりと上空を廻り、剣の中へと姿を消す。
そのまま、剣を持ってソルは俺に近づいた。俺を真っ直ぐに見る瞳に、金縛りにあったように動けない。
そのまま、ソルの唇が俺のそれをついばんだ。
「水竜の騎士の護りも祈りに加えられた」
くるりと振り返って云うソルの言葉と、それに和する広場の怒号に、俺は我に帰って剣を収める。
胸のざわめきは収まらないが、平静を装い、そのまま後ろへと控える。国王が広場へ出て、挨拶を始めるのを潮に、俺とソルはその場を辞した。


「あの口付けは止めろ」
「何故だ?」
広場で大勢の前での口付けなど、儀式的な意味があっても慣れるわけでは無い。
大体、俺たちが契約を結んだ間柄であることは、魔術師たちの間でだけの秘密だ。国王陛下でさえ知らない。
「役得だ。そのくらい許してくれてもいいだろう。何で、納期の祈りなんて退屈な仕事が俺に毎回廻ってくるんだ?」
元々納期の祈りは、そう大きな力を使うものではない。もっと下級の魔術師でも充分に役割は果たせるのだ。だが、新しい年の護りの意味を込めて、魔術師の宮では上級魔術師の一人をその役に振る。
もっとも、数年前からその役割は、目の前の俺の契約者・蒼のソルフェースが行っているが。
「お前があんな大掛かりな魔術を使うからだろう。自業自得だ」
「お前があんな目で見るからだ」
俺の言葉に、拗ねたようにソルが反論した。
「俺だけを見つめていただろう。まるで魅入られたように」
数年前の納期の祈り。まだ、俺がこの剣をソルへと捧げる前。高く低く繰り返される魔術の詠唱。まるで母親の胸にいた頃を思い起こさせるその響き。
閉じていた紫紺の瞳が俺をまっすぐに射抜いたとき。俺は今日と同じくただ、ソルを見つめていた。
この男に魅入られていると自覚した。
魔術師としてのこの男と、魔物としてのこの男。双方に魅入られている。
重なる唇をただ受け入れた。広場であることさえ忘れて。

「リベア」
呼ばれて振り向くと、秀麗な顔がすぐそばにあった。
そのまま唇が重ねられ、俺の呼吸さえ吸い取られる。
そのままベッドへと押し倒されると、粗末な木のベッドが軋んだ。
「いきなりか?」
「でないと、とんでもない抵抗に合うからな」
胸元を晒し、腕を押さえつけて、ソルは俺の肌に印を刻む。
「く…ッ」
声を殺し、腕をソルの背に廻す。
「殺しきれなければ、俺の肩を噛んでもいいぞ」
あっさりと云うソルだが、この美しい魔術師の肌に傷をつけたりする気は無い。
俺はすぐに快楽に負けた。
どうせ、魔術師の部屋には結界が張られている。俺の嬌声など何処にも聞こえはしない。
出会った頃と変らない、まだ若い貌。魔術師であり、魔物でもあるこの男の年は判らないが、俺は年を重ねた。
なのに、出会った頃と変らぬ欲望に濡れた瞳が俺を見下ろす。
「リベア。俺の騎士」
そう、俺はお前に剣を捧げたお前の騎士だ。
「ソル」
俺に魔術の全てを預けた俺の守護魔術師。
俺たちは互いを互いの契約で縛りあう、唯一無二の関係。
どちらかが死ぬまで、その契約が破られることは無い。

人として俺が死ぬ、そのときまで。


<おわり>


FC2 Blog Ranking
完結小説一覧

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(2)


~ Comment ~

Re: 柚子季さま

そう、このCPが一位です。
実は僅差で誠吾とアデイールが四位につけていました。
あと、2,3作書いたら、またファンタジーを書こうと思います。

幸せだけど、同じ時は生きられない。
終わりが決まっている二人です。

皆さんへのお年玉になったら、嬉しいなと思います。
[2011/01/05 21:33] 真名あきら [ 編集 ]

出てこないなーと思っていたら、このCPが1位ですか!
納得。。。

幸せなのに切ないお話ですね。
同じ時を過ごしていても、流れる時間は違っていて。
よし、また本編を読んできます! ←

SS特集ありがとうございました♪
楽しませて頂きました~!!
[2011/01/04 23:05] 柚子季 杏 [ 編集 ]















管理者にだけ表示を許可する


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。