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その距離<整形美人> 

「整形美人」の松平から見たこぼれ話。
これで本当に整形美人は終了です。

【その距離】

荒い呼吸を噛み締める男は、本当に真田なのだろうか?
俺のお気に入りの肩から腕のラインはもがいても自由になることは無い。
服を絡ませて、上からガムテープを巻いただけだが、意外と固定は出来るものらしい。
この間まで、俺が好きだと思っていた男の律動に合わせて、真田が微妙な表情を見せる。
それに俺は、奇妙な興奮を覚えた。

ともすれば襲い掛かりそうになる衝動を抑えて、俺は何とか真田の身の回りの世話を終えた。
目の前にいる男は、長いこと俺のツレだった男で、それ以上でも以下でもないはずだった。
ただ、その男が俺の好きになった相手をやたらと大事にするのが気に入らなかったことは確かだ。
元々、男前な発言の多い男だが、こいつが神楽くんを護る姿は最高にカッコよかった。長年の付き合いの俺でも見惚れちまうくらいだ。
我慢の効かない性格の真田が、神楽くんに対する姉の態度にキレた挙句なのは判ってはいるんだが、それだけに本心からの台詞であるのに間違いは無い。
ますますまとわり付く神楽くんと真田の姿を目にするたび、俺が感じたのは早く離れて欲しいという自分勝手な感情だった。
「協力だと?」
「ええ。一度だけです。それで諦めますよ」
何処か思いつめた様子の神楽くんに、俺は当然そんな協力は出来ないと断った。
「判りました。じゃあ、貴方の協力が無くてもやりますから」
「何をやる気だ?」
「方法なんかいくらでもあるでしょう? ネットの裏掲示板とか」
「馬鹿なことを考えるな! そんな連中に真田を…!」
そんなところで集まった連中が、タダで済ませるとは思えない。
「協力、してくれますよね?」
俺の目をじっと覗き込んだ神楽くんに、俺は不承不承うなずくしかなかった。

だが、俺の頭の中で汚い思惑も渦巻いていた。
こんなことをした神楽くんを真田は決して許さないだろう。
「俺も、だな」
思いついてため息を吐く。
思惑通りに、真田の身体が反射的に神楽くんを拒否したのを見た時は、安堵を覚えた。
これで二度と真田が神楽くんを受け入れることは無い。
安堵と共に湧き上がったのは、覚悟だ。俺は真田に土下座して床に頭をこすり付けた。
殴られる覚悟もあった、半殺しにされても文句は言えない立場だ。
「お前、何故?」
「お前が神楽くんに優しくするのが嫌だった」
本音を吐露した俺に、呆れるような真田の声が掛かる。
「お前が俺に惚れているみたいに聞こえるんだが?」
「云うな!」
真田の指摘に、俺は青くなった。そうだ。結局そういうことだ。
いつの間にか、好きになっていた。それを思い知らせたのは、神楽くんだ。真田が揺れているのが判った。女のときとは違う、すぐ隣で見せ付けられる感情。
「俺の半径二メートル以内に近寄るな!」
言い渡されたときにはホッとした。そんなことで許してもらえるのならば、いくらでも聞く。

それから真田は俺から逃げ回った。
いつも一緒にいたのが長かっただけに、隣にいないのが不安で仕方が無い。
落ち着くまで待つつもりだったが、我慢しきれずに追い掛けた。
俺の好きな肩から腕にいたる綺麗なラインが揺れる背中。
見つめ続けるうちに、真田の背中の脊柱のラインも絶妙だと気付いた。
これきりだと云った筈の神楽くんも、まだ真田を諦めていないようで、未だに真田の周りをうろついている。
「どういうことだ? 諦めると云っただろう?」
俺はコンビニが終わるのを待ちかねて、神楽くんを捕まえた。
「松平さん。俺に嘘付きましたね?」
「何が?」
真田について、俺は何も神楽くんと約束した覚えは無い。
「貴方、真田さんとは何でも無いと云ったじゃありませんか。なのに、俺がいなくなったら真田さんを追い掛け回して。貴方でもいいのなら、俺でもいい筈でしょう」
成程、俺を決定的に振らない真田を見て、欲が出た訳か。
「俺が真田に惚れたのは君が出て行った後だ。未だに近寄らせても貰えない」
双方とも神楽くんの所為で、俺の自業自得だ。
「お預けされているんですね。いい気味ですよ」
「そのうち、懐には入れてもらうさ」
「懐に入れてもらうだけなんですか?」
馬鹿にしたように神楽くんが顎を引く。
「ああ。俺はそれだけでいい」
アイツと俺の結びつきを取り戻せればそれでもいい。あの背中を眺める俺から逃げ出さないでいてもらえれば。
どうしても身体が欲しい訳じゃない。というか、正直男の抱き方なんぞ知らない。
抱き締めて、あの背中にキスしたいとは思う。でも、それから、どうしたらいい?
やっていられないとばかりに頭を振って立ち去る神楽くんの背中を見つめながら、俺は自分の気持ちを持て余すだけだ。
いつか。そう思うことはいけないことだろうか?
「いつか、その距離を縮めてみせる」
俺たちの距離は、今は言い渡された二メートルからも遠い。
だが、いつか―――――。


<おわり>


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