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王者の後継<14> 

「リベア」
戦う騎士たちを見守るリベアの袖を小さな手が引いた。どうやら、雰囲気におされて怖くなったのだろう。
こういうところは大人びているようでも、子供だ。
片腕に座らせるように、リベアはレイを抱え上げる。
「レイ。良く見ておけ。護る為の決意を」
魔術師としてか、それとも別の道を選ぶのか。まだ子供である筈のレイには、大きすぎる決断を強いなければならない。
「リベア。その子は?」
リベアに甘えたようなレイの様子に、興味を持ったらしいマキアスが声を掛けてきた。
「先日、養子にとりまして。魔術師の素養があるようなので、ソルに預けています」
さらさらとした金髪の利発そうなレイは、リベアの腕から下ろしてもらうと、ぺこりと頭を下げる。
「水の魔術師の見習い、レイサリオです」
「そうか。俺は第一騎士団の隊長でマキアス・ドゥーズだ」
レイは騎士と魔術師の戦いが気になるのか、ちらちらとそちらを見ている。
その肩に手を置いて、リベアは三組の乱戦の様子に目を向けた。

「派手な手を使ったものだな」
「出られない状況なら、それを利用すればいいだけだ」
面白がるようなソルフェースに対して、リベアは憮然としたままだ。魔術師と騎士の真剣勝負など、いくら口止めしても噂になるのは確実だ。
鍛えなおす意味での、手合わせであれば、リベアが相手をしても良かったのだが、それ以上に効果を上げたようだ。
いい意味で、育ちの良い貴族の坊ちゃん揃いだ。少々の荒療治は必要だろう。
それと同時に、リベアと魔術師の宮の密接な関係を位置づけ、レイと云う明らかに王族の特徴である金の髪を持った子供の存在をちらつかせる。
滅多に魔術師の宮から出ないアデレードが出てきたのも大きな効果を生むだろう。
もしかして、アデレードはそれも狙ったのかもしれない。
「碧殿は何を知ってる?」
少なくとも、何か無ければ、碧のアデレード程の大物が、力を貸してくれる筈は無い。
「知っているのは、水の魔術についてだけだ。後は何も知らんさ。ただ、感じているとすれば、レイの顔だな」
「レイの、顔?」
「ああ。マデラに似てるからな」
ソルフェースの瞳が遠くを見るように眇められた。
「マデラ? マデラード妃のことか?」
三代前の王は病弱で、妃が執政を行っていたが、妃は影の存在であると姿を見せず、肖像画なども残っていない。その妃に似ていると何故判るのか?
「アデレードの母親だよ。元第一騎士団の女騎士。マデラがいた頃には、俺もまだ第一騎士団の護りに付くことが多かった」
アデレードの堂に入った剣の扱いを思い出し、リベアは妙に納得した。それに、レイサリオが王家に縁があると云う事も。
「レイには悪いが、囮になってもらうしかない。レイならば、護りきれる」
リベアの大きすぎる寝台で眠るレイに目を向ける。釣られるようにソルフェースもそちらに視線を送った。
「ああ。大丈夫だ。レイならば、俺が護る」
シィドリアでは無理だ。何よりも旅から戻ったシィドリアでは、護るのに情報が不足しすぎている。
「俺が本当に国の重鎮だと云うのなら、どちらにしろ巻き込まれる。レイもお前も、そしてマーロウも」
ならば、護る手を打つだけだ。座して待つ気は無い。
「リベアさま。至急、目通りをしたいと申される方が」
マーロウの声は遠慮がちではあるものの、強い調子で、断れない類の客であることは確かだ。
「通せ!」
腹を括った、リベアが命じる声は、いつもよりも威厳を持ったものだ。
ソルフェースが一歩引いて、レイの傍に立ち、リベアへ従う形を示す。
「リベア殿に、我が主よりの伝言をお持ちいたしました」
深く頭を垂れた男は、見知った顔だ。ただし、今日はいかにも、異国の身分の高い騎士であることが一目で判る服装である。
目を合わせようとしない客に、リベアは名を呼ぶのを止めた。
「お心遣い痛み入る」
客に椅子を勧め、自分もその前に腰を下ろす。
「伝言を伺おう」
リベアが鷹揚に言い放つと、男は優しげな顔立ちに似合わぬ強い視線を上げた。
「ロゼン家のこと。我が主に遠慮は無用と」
「それは……」
腹を括ったつもりのリベアだが、事の大きさに、思わず口篭る。
「何が起こっても、そちらで処理をしてくださると云う意味にとるが。宜しいか?」
「はい。主の命で、この私がどのようにでも」
皮肉に口元をゆがめる男は、優しげな風貌が途端に人を食ったような表情になる。
「やりすぎたのですよ。何事にも限度というものがある。与えられた地位に満足していればいいものを」
幼馴染と嫌味の応酬をしている姿はよく目にしたが、今の男には触れれば切れそうな雰囲気さえ漂っていた。もしかすると、これが王宮で辣腕を振るうという、男の真の姿なのかもしれないとリベアは思った。
「それと、もうひとつ。お耳に入れたい事実がございます」
「もうひとつ?」
男が、チラリと視線をソルフェースに護られたレイへと向ける。
「レイサリオ・アーバン。我が妃の乳母の孫に当たられる」
「今は俺の息子だ」
「その母親ですが、ロゼン家で一時期働いていたことはつかめておりますが、現在は姿が見えません、姿が消えたのは、レイディエ陛下が我が国に滞在なさった後です。奥向きの使用人が全て入れ替えられていて、行方が掴めません」
男が真剣な眼差しをリベアへと投げ掛けた。
言葉を濁してはいるものの、示すところはひとつだ。
「王都の外れに居を構える少女・ローザと名乗っているそうだが」
「おそらくは身代わりでしょう。レイディエ陛下もご存知の上かは存じかねます」
レイは母親を知らない。何処にいるのか、どうしているのかも。
その答えを聞いたときから、リベアはおそらく母親は生きてはいないだろうと踏んではいた。
だが。
「判った。貴重な情報をいただいた。お国で待たれている方にもよろしく伝えて欲しい」
「リベア殿もお気をつけて」
リベアが差し出した手を、男に握り返される。力強く熱い思いが伝わってくるような、そんな握手だった。

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