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【共に……】新年SS祭り 

新年SS祭り2話目は同率二位「アデイール×誠吾」です。
二人が共に暮らす街を見つける旅程の話。
ゲストに連載中の二人も出張ってます。
本編「憧憬の王城」はこちら

【共に……】

「マリニャさま!」
一面に広がるセスリムの花を摘んでいた少年が、子供の声に振り返る。
大きな月は、その姿を登ってくる朝日にかき消されていった。
年迎えの儀式。時の王のパートナーは、王と共に古の星術師の塔の跡で子供たちを迎える。
これから来る春に向けて、子供たちの成長を願う儀式だ。
「はい。一番だね。トール」
マリニャからセスリムの花を渡され、トールと呼ばれた子供がはにかむように微笑んだ。
その姿に、マリニャは数年前の自分を思い起こす。
異界から来た先王のパートナーは、頼りなげな細い身体に、力強い意思を秘めた人だった。
常に公正で、良く話を聞き、穏やかな人かと思えば、王の隣に立ち戦う強さを持った人でもあった。
山賊相手にも一歩も引かず弓を射る姿に、憧れない子供はいなかっただろう。
「セイさま」
自分はなれるだろうか。あのように強く、優しく、公正であれるだろうか。
「マリニャ」
隣に立つ金の髪と金の瞳の王が、マリニャを抱き寄せる。大丈夫だと力づけるように。
「グレイル」
抱き寄せられる腕に甘えるように身を寄せた。
遠く旅の空にいる人たちを思いながら。


「凄い人だな」
「はぐれるな。セイ」
古からの魔術に護られた国、ティアンナ。新年に伝わる儀式には竜が現れるという。
それを見に来た大勢の人々で王宮前の広場は埋め尽くされていた。
「大丈夫さ。ティアンナ語なら出来る。穏やかな国民性だと聞いたし、法も整っているなら無茶をやる馬鹿もいないだろう」
山国の砦のような小国の城下を出て、はじめての旅。異界から来た誠吾には、見るもの聞くものが全て新しい。もっとも、それではしゃぐような年でもないが。
「アデイール。みんな南天の枝を持ってるな」
「ああ。俺も来たのは初めてで、細かいことは。兄なら詳しいんだろうが」
「聞いてこよう」
広場の入り口に、南天の枝を売っている屋台を見つけて、誠吾は近づいた。
その辺りの人間を捕まえるよりも、商人なら上手く説明してくれるはずだ。もっともその代わりに一枝買う羽目にはなるだろうが。
『ああ。あれかい? 旅の方なら知らなくても仕方が無いが、南天の枝は魔を払うものだよ。ここらじゃ、冬季にはそれを門の前に飾るんだ。しかも、蒼のソルフェースと、水竜の騎士さまの護りの力も下される』
『水竜の騎士さま?』
蒼のソルフェースには、一度逢ったことがある。ティアンナでは名に聞こえた魔術師だ。
『やれやれ、旅の方は吟遊詩人の歌も知らんのかい? 焔の剣の騎士さまのことだよ』
『ああ。[皇女を救いし、光と焔の剣持つ騎士たち]…だろう?』
一節を歌うと、誇らしげに商人が胸をそらす。
『焔の剣の騎士さまは、水竜を契約者にお持ちなんだ。おや、その顔は信じてないね? 一年に一度、みなの前に姿を見せるんだよ。騙されたと思って、これを持ってあそこの祈りを聞きな。嘘だったら、お代はいらないよ!』
誠吾は黙って銅貨を差し出した。
『いいのかい?』
『そこまで自信があるんだろう? 小ぶりの奴でいい。旅の邪魔になるからな。本当なら、俺たちの旅も護ってくれるだろう。二つくれ』
『おお。おっとこまえだねぇ。毎度!』
屋台の商人がホクホク顔で差し出す枝を、誠吾は受け取って、一本を隣のアデイールへと渡した。
商人と誠吾の会話を聞いていたらしい、周囲の連中も財布の紐を緩めている。
「やれやれ。逞しいことだ」
「いや、あのぐらいでちょうどいいさ」
呆れたようなアデイールに、誠吾は笑った。庶民が元気なのは、国が安定している証拠だ。
「いい国だ」
「ここにするか?」
アデイールは王座を養い子に譲り、誠吾と二人、落ち着く場所を求めて旅に出た。
アデイール的には、自分が王族だとばれなければ何処でもいい。誠吾と二人、穏やかな暮らしが出来れば良かった。
「そうだな……」
ざわめきに支配されていた広場がシンと静まりかえって、誠吾は続きを口にすることが出来なかった。
広場にしつらえられた舞台に進み出たのは、長衣をまとった紫紺の瞳の魔術師。
「魔術師」
「シッ!」
思わず上げた呼びかけは周囲の人々に制された。
蒼の魔術師が歌うように呪言を唱え始める。広場が暖かなものに包まれていくのが、魔術など持たない誠吾やアデイールにも伝わってくる。
「水竜の騎士」
呼びかけは静かな声だった。
後ろへ控えていた騎士が立ち上がる。堂々とした態度で剣を抜く。誠吾はその顔に覚えがあった。
「リベア殿?」
蒼の魔術師と共にトレクジェクサを訪れ、森の歪みを正した騎士。
「成程」
確かにあの場合正しい人選だったのだと、誠吾は理解した。
蒼の魔術師が受け取った剣を掲げ、呪言を唱える。
剣の刀身から、何かがむくりと身を起こした。それはたちまち大きさを増し、空を悠々と飛び回る。
水の身体を持つ竜。
どよめきが広がった。
不思議な光景に見とれ、流れる呪言に酔う。
その中、リベアが魔術師から剣を受け取り、腰から鞘を抜いて、目の前で鞘へと納める。
寸前、身を翻した竜が、リベアの剣の刀身へと姿を消した。
と、ついばむようにリベアの唇に、蒼の魔術師の唇が重なる。
双方共にじっと相手を見たままだ。
「水竜の騎士の護りも祈りに加えられた」
振り返った、蒼の魔術師が静かに告げる。皆、南天の枝を痛いほどに振っていた。
喧騒の中、魔術師とリベアは姿を消し、変って王が進み出る。
広場には、ティアンナをたたえる人々の声が木魂していた。

誠吾とアデイールは、王の話になど興味は無い。
「宿でも探すか」
広場の喧騒に背を向け、ちょっと気の抜けた声で誠吾が呟いた。
「そう、だな」
二人して、ちょっと当てられた気分だ。いまだ若いアデイールなど、そわそわしている。
今夜は少し高い宿でもいいだろうと誠吾は考えて、自分の節操の無さに呆れてしまった。
「いい年して、何考えてるんだかな」
だが、アデイールに我慢させる気も無いのだから、仕方が無い。
これから先、二人で共に暮らすことを思えば頭は痛いが、それでもいいと思う自分がいるのだ。
金の髪と瞳の獅子を思うさま甘やかしたい。
「アデイール」
呼びかけると、怪訝そうに振り向いた。
その唇をそっとすれ違いざまに盗んで、誠吾は荷物を肩に歩き出す。
これから先、何処までもアデイールと共に。


<おわり>

なお、この話は以前同人誌として出した「失くした場所」が下敷きになっています。
限定公開でしたが、完売して2年経つので公開します。こちら

「過ごしたとき」

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