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幸せの香り<残り香>番外 

前回、秋のJガーデンの「帰っちゃうのポスター」は「残り香」でした。
本編はこちら

【幸せの香り】

観光バスからわらわらと人が降りてくると、俺たちはこのあたりの観光案内を片手にバスへと向かう。
観光案内の小冊子は、このあたりに伝わる民話や伝承を小説仕立てにして、挿絵をつけ、その小説に出てきた場所へのルートを付けたものだ。
青年団の町おこしの一環で置いているもので、通常の町の観光案内とは違って、ふた月に一回発行される。
なので、道の駅に入ってくるバスや、車の客が降りるたびに、手渡しで配っている。
「一之瀬?」
「あれ、一之瀬?」
聞き覚えのある声に振り返った。
「森本さん? 社長も??」
観光バスから降りてきた全員の顔に見覚えがある。以前勤めていた会社の連中だ。
「お前、こんなところにいたのか?」
「今、ここの観光協会に勤めているんです。社員旅行ですか?」
「ああ。昨日この先の温泉に泊まって、ここで土産を」
近隣の温泉地には提携を結んでいる。ここは空港へいたるルートのひとつだ。帰りに土産物を買うには適度な場所であった。
「なんじゃ、高良。知り合いか?」
「俺と鮎が東京で勤めていた会社の人たちです。俺も鮎も大学出てからずっとお世話になってて」
声を掛けてきたのは、道の駅の店の人たちだ。
「おー、そうか。じゃ、サービスせんといかんな」
ガイドに促されて、店へと入っていく社員たちに会釈をして、俺は小冊子を配り続けた。
「ちゃーちゃんと高良が、東京で世話になった人たちげな」
後ろででかい声が聞こえる。俺は、それに何処かくすぐったい気分が隠せなかった。

「高良。社長たちに会うたて聞いたが?」
道の駅のアンテナショップを兼ねた鮎川の喫茶店は、町の連中のくつろぎの場だ。もう今日の話が入ってきていたらしい。
「さすがに一緒に暮らしてるとは云わなかったけど。赤座さんがでかい声で『ちゃーちゃんと高良が世話になった人たちだ』なんて云うから」
「おばちゃんたちの口からバレとるかもしれんな」
古今東西、中年女性の口に戸は立てられないのだ。
「まぁ、バレたところで、二度と会わないだろうし」
もしかすると、俺たちの関係に気付かれるかもしれないが、嫌悪が無ければ、もう一度町に来てくれるかもしれない。
所詮は通り過ぎていくだけだ。
俺たちはここで生きていく。
「追いかけてきてくれて良かった」
眼鏡越しに、まっすぐに俺を見て、鮎川が云う。
東京からここまで。逃げ出した鮎川を追いかけた。だが、逃げ出させたのは自分だ。
心地いいぬるま湯のような関係に浸かっていた。それが先の無いものだと知っていたのに変えようとはしなかった。
逃げ出すほど思いつめていたことに気付かなかった。
俺があの頃動いていれば。

いや、動けなかったからこそ、今があるのだ。

「どうした? 高良?」
じっと見ていると、鮎川が問い掛けてくる。
「何でもない。幸せだと思ってさ」
幸せはここに。いつでも隣にある。

<おわり>

<冬のぬくもり>

テーマが眼鏡だと寸前に気付いて、メガネ表現つけたし。
さて、春の帰っちゃうのポスターは、ソルとリベアです。

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