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身勝手な男<1> 

酔った弾みか、それとも勢いか。美形同僚に迫られた体育会系男の戸惑い。

シリーズ全編の説明はこちら

<2> <3> <4> <5> <6>完


「酔ってないって~」
俺の隣に陣取った、酔っ払いが抜かした。
酔っ払いはみんなそう云うもんだ。こんなに酒癖の悪い奴だとは思わなかったぜ。
さっきから、俺の肩を抱きこむようにして、佐伯は俺に酒を注ぎ続けている。
最初はあんまり呑まないつもりでいたから断っていたのだが、
「俺の酒が呑めねぇつーのかよ」
と絡まれて、俺は素直に杯を差し出した。酔っ払いの云うことは、素直に聞くしかない。
呑み会に佐伯が出ると聞いて、色めきたった女性陣も、こうなると誰も近寄りゃしねぇ。
まぁ、餌の役割は果たしてくれた訳だし、良しとするしかないのだろう。これで絡まれているのが俺じゃなかったら、疑似餌としては理想的なんだが……。
社内の課を越えた親睦会と云えば、聞こえがいいが、要は『社内合コン』だ。
総務課の俺は、いろいろな課と関わりがあるし、自分で言うのも何だが、面倒見は良い方だと思う。そこを見込まれて、幹事の添田さんから、毎度の声掛けを頼まれていた。
佐伯が参加すると聞いて、添田さんは上機嫌だったのだが、この酒癖の悪さは予想外だった。
考えてみると、こいつがこの手の集まりに顔を出したのは、もしかすると、新入社員の歓迎会以来かもしれない。
俺は、大学の先輩でもある販売部の添田さんが、趣味と云ってもいいくらいの幹事好きなので、会社の呑み会は、ほぼ皆勤賞だが、まったく顔を合わせた覚えが無かった。
最初、佐伯の周りにたむろっていた女どもは、そうなるともう現金なもので、二番人気の辻本や工藤の周りにはべっている。
確かに、こいつ顔だけはいいけど、愛想は無いし、何処のオヤジだと聞きたくなるようなこの酔っ払い加減では、オンナが引くのも解かる。
俺は、みんなの間を走り回っている添田さんをうかがった。添田さんも俺の視線に気付いて、目線で合図する。
「呑み過ぎだよ、佐伯」
俺が促すと、寄りかかっていた状態の佐伯が、意外としっかりとした足取りで立ち上がった。まぁ、酔っ払いなんてそんなもの。何処までこの足取りが持つかは不明だが。
介抱するフリをして、外へと連れ出した。
ごねるかと思った奴は、素直について来る。こんな状態じゃ、とっとと帰すに限る。考えてタクシーを捜すが、そういう時に限って流していないんだよな。
結局、タクシーを捕まえられないまま、駅にたどり着いたが、この時間帯だと、駅前のタクシー乗り場は長蛇の列で、一時間くらいは並ばないと乗れやしねぇ。
「お前、家どっちよ?」
「んー……」
聞くと、このJRの隣の駅の私鉄の駅の名前を挙げる。
ここからだと、電車の方が遠回りになるルートだ。むしろ歩いた方が明らかに早い。つーか、俺もどっちにしたって、帰り道は同じだ。
「歩くか?」
「ん……」
佐伯はおぼつかない足取りで立ち上がる。やっぱ、持たなかったか。
仕方が無く、肩を貸して歩き出した。俺よりも頭半分くらい背が高い佐伯に、肩を貸すと、何だか肩を抱かれているみたいで、やな感じだが、ここで放り出して帰る訳にもいかない。
木にしがみつくコアラ状態で身体を預けてくる佐伯を、半ば力任せに引きずりながら、俺は徒歩で帰途についた。


「おい、佐伯、靴脱げよ、お前!」
結論から云うと、佐伯は立派な酔っ払いだった。
「お邪魔しま~~~す!」
馬鹿丁寧に頭を下げると、片方だけ靴を脱いで玄関に上がろうとする。
俺は大慌てで、佐伯のネクタイを引っ張った。佐伯の縦にデカイが細い身体は、簡単に玄関に座り込む。
靴を脱がしてうながすと、何が可笑しいのか、へらへら笑いながら、部屋へと上がりこんだ。男にしては綺麗過ぎる顔立ちなだけに、そうやってへらっと笑っていると、より一層馬鹿っぽい。
「なぁ、久世ちゃん。呑み直そうぜぇ」
「今からかよ! お前、呑み過ぎ! っつーより、呑まれてんじゃん!」
何時から、お前に『久世ちゃん』なんぞと呼ばれる程、親しくなったんだ? 俺は!
こんな様子で、家の位置を聞いても判然としないわ、寄り掛かってくる身体は重くなるわ。終いには、道路に座り込んで寝ちまいそうなこいつを、俺は本当に『仕方なく』家に連れ込んだ。
シャワーのみ風呂無しの2Kとは云え、一応は一軒家だ。いくら佐伯が標準よりデカくても寝かせるスペースくらいはある。
散らかった荷物を適当に片側に寄せ、佐伯が座る場所を作った。
「佐伯、座ってろ。すぐに布団敷くから」
奥の部屋を開けて、万年床のベッドの脇に布団を敷こうとした俺の身体が、ふいに後ろから抱きこまれた。
「久世――――」
耳元に囁かれる声には、性的な色合いが混じっている。
「何だ? 気持ち悪いのかよ?」
まぁ、男の生理として、呑んだらヤりたくなると云う奴は多いし、こいつもその類だろうとはぐらかした。
「おら、早く寝ちまえ。これ以上、具合悪くなっても、俺は面倒見ないぞ」
抱きしめてくる腕をはずして、押入れを開ける。
しかし、この布団、最後に使ったのって、何時だっだっけなぁ。まぁ、匂いもしないし、いいか。それに使うのは佐伯だし、俺が好きで招いた客じゃ無い。
「パジャマなんて上等なもん、無ぇからな。服脱いで寝ろよ」
言い置いて、俺はシャワールームへ逃げ出した。
間を置けば、頭は冷えるに違いない。
第一、あの酔い具合じゃ、明日になったら全部忘れてんじゃ無ぇのか? 覚えていたら、数々の失態に赤面ものだろう。
「あいつ、ちゃんと服脱いでっかなぁ。いくらなんでも、地面に座り込んだスーツ着たままは勘弁して欲しいぜ」
シャワールームから出た俺が、まず考えたのはソレだった。奥の部屋へ戻ると、佐伯の脱いだスーツの塊が、布団の脇にある。さすがに汚されたら、クリーニング代を請求しようと思っていたので、ほっと胸を撫で下ろした。
酔っ払いのしたことだ。あまり騒ぎにはしたくない。
俺は濡れた髪を拭きつつ、ぜんべい布団に丸くなる佐伯の顔を見つめた。
「しっかし、綺麗な男だよなぁ……」
女みたいだと云うのでは無い。ちゃんと鋭角な男の顔をしているんだが、その容貌に一番相応しい形容詞は、やはり『綺麗』と云う言葉だろう。
思わず、ため息が漏れる。好みの顔だ。これで、もう少し――――
考えを巡らしていた俺の腕が、布団に引きずり込まれた。
「わッ、……!」
意外に力強い腕に引き寄せられ、唇を塞がれる。
俺は、佐伯に覆いかぶさるような形で、キスをされていた。
佐伯の舌が、俺に絡まる。痛いくらいに激しい、お互いをむさぼり合うようなキス。
佐伯の眼が、まっすぐに俺を射抜く。
「な? いいよな?」
「何が?」
聞き返そうとした俺の言葉は、佐伯の唇に吸い取られていた。


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