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守ること<銀杏の実り>*R15 

「う、…ん、」
唸るような声が、俺の耳を刺激する。
声の主は言わずと知れた。俺の隣に眠る弘毅の大柄な身体が、細かく震えている。
俺は腕を回して弘毅を引き寄せた。
苦しげに眉間にしわが寄った弘毅の顔が、安堵の表情を浮かべる。
同時に、俺に身体をすり寄せてきた。
自身にも覚えのある感覚に、俺は気が重くなるのを感じる。
大柄な弘毅は、荒事には慣れていそうな風貌ではあるが、さすがに弁護士などという職業とあって、そんな経験は学生時代でとっくに卒業だろう。
たとえ荒事に慣れていたとしても、命の危険を感じることなどある訳がない。
道を歩いていても、時折、何に反応したのか身体をびくつかせたり、突然振り向いたりすることもあった。
その度に、俺は弘毅の心に負わせてしまった傷の大きさに強い後悔を覚える。
『守りたい』
何者からも。それを弘毅は、志信を守れなった俺の心残りだと感じているようだが、むしろ弘毅ゆえだ。
志信のときは気付かなかった。だが、弘毅の場合は俺は気付いていた。これで守れなかったならば、俺はとんでもない馬鹿野郎だ。
「弘毅」
俺は隣に寄り添い眠る弘毅の額へ口付ける。
そのまま、腕に抱え込んで俺も眠りについた。

「おい、穣。すまん、大丈夫か?」
揺り起こされて目を薄く開くと、弘毅の男らしい顔が目の前にあった。
ドキリとして目を見開く。
「腕しびれてるんじゃないか?」
しきりに腕を擦る。おそらく、腕枕をしたまま眠ってしまったことを気にしているのだろう。こういうときの弘毅って困るんだよな。
「おい、みの、」
ぼっとしているように見えたのだろう、こちらを覗き込んで来る弘毅を、俺は身体の下へと引き込んだ。
いきなり深く唇をあわせる。強引に舌先で唇を割って、弘毅の口腔を思うさま味わった。
「何、みのり、いきなり過ぎ……」
「ごめん、抑え利かない」
口早に謝り、パジャマ代わりのスウェットをたくし上げる。現われた逞しい胸に舌を這わせ、強引に足を開かせて、身体を入れ込んだ。
「穣」
乱暴なくらいの俺の行動に、弘毅は優しく名前を呼んでくれる。それにますます調子に乗って、俺は身体を高まらせるのも程々に、強引に欲望をねじ込んだ。
「あ、うッ、」
苦痛を訴えながらも、弘毅は必死に身体の力を抜いて俺を迎え入れようとしてくれる。慣れない行為は弘毅にはかなりの負担を強いているはずだが、それでも弘毅は俺を抱こうとはしない。
知っているのだろう、きっと。俺と違って、弘毅にはきちんとした人脈と職がある。俺の以前のことも、俺が話した以上に知られているに違いない。
俺の最初の男は最低な奴だった。
田舎を追い出された、まだ十代の小僧だった俺に出来る仕事は、精々日雇いのアルバイトくらいで、そこで知り合った大学生に俺は良い様に使われた。
恋人だと思っていたのは、きっと俺だけだ。
死ぬ前には、通っていた大学にも殆ど行かず、俺の稼ぎで酒を呑み、パチンコや競馬に明け暮れる毎日。
気の弱い男だった。俺に暴力を振るっては、優しくなりの繰り返し。
犯されるのと変わりのないセックス。
死んだと聞いても、感慨など無かった。もう、恋人や恋愛なんて懲り懲りだと思っていた。
そんな俺に入り込んできたのは、志信だ。
明るい笑顔と、それを裏切る鋭い口調。俺みたいな学のない馬鹿じゃない。頭もすごく良かった。
惹かれて、口説き落として、さあこれからとなってから、俺は自分が抱かれることに嫌悪を覚えていることに気付いた。
志信は引きも切らず相手がいて、振られるだろうと思っていた。そんな面倒な男の相手などする必要も無い。だけど、志信はプラトニックで済ませるなんて出来ないと言い張り、俺に抱かれてくれた。
まぁ、そういうところも志信が俺に本気だとは思えなかった原因だ。
志信は、明らかに渋々といった風だったし、俺も志信に無理をさせている自覚はあった。
だが、弘毅は違う。
恥ずかしがりながらも、懸命に俺を受け入れてくれる。腕を回し、俺に縋りついてくる。
全身で俺が必要だと訴えかけてくる。
それが嬉しい。
「あ、みのりッ」
「弘毅、可愛い」
耳元へと囁きかけると、弘毅はそっぽを向いてしまった。それがより一層可愛いと思う。
弘毅が考える以上に、俺は弘毅に惹かれているのだ。
決して弘毅が考えるように志信の代わりでもないし、自分の中の後悔を取り戻すための相手じゃない。
「弘毅ッ!」
叩きつけるように欲望を注いで、弘毅を抱きしめる。
そのまま倒れこむ我侭な俺を、弘毅は笑って受け止めた。
「穣」
「弘毅。好きだよ」
ストレートな告白は何度してもし足りない。その度に、弘毅は虚を突かれたように目を見開き、苦笑い交じりの照れた表情になる。
「まったく、お前は」
呆れたような弘毅の声に、俺も笑った。
笑うこと、泣くことすら罪悪のように感じていた。だが、弘毅がいれば思い出せる。

<おわり>

これで本当に「銀杏の実り」は最後です。
今回の話は、皆さんにとても応援していただけて、嬉しい限りです。
コメントは掲示板にて返信させていただいています。

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