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身勝手な男<2> 

俺のポリシーのひとつに、『社内及び取引先の人間とは関係しない』と云うのがある。当然、どんな好みのカワイコちゃんでも、ナンパなどはご法度だ。
俺は完全無欠のゲイである。女を好きになった事なんか、これっぽっちも無い。いや、友人としてならあるが、そこに色気を含んだ瞬間に拒否反応を起すのだ。
そういう男である俺にとって、身近に『知られる』ことは、危険をはらんでいた。
『男も』相手に出来るのと、『男しか』相手に出来ないのは違う。
佐伯は、どっちなんだろう?


*これより先15禁。ご承知の上、お進みください。「最中に考え事たぁ、余裕だな。久世?」
いつもは男どころか、女にも興味はありません。と云う冷たい感じの美貌が、熱を滲ませて俺を見下ろしていた。
そう、俺はこともあろうか、佐伯に『抱かれて』いたのだ。
ここの所、『抱く』方ばかりで、『抱かれる』方はとんと御無沙汰だった。
大体が、中学から大学まで柔道部に所属していた俺は、大学の一時期を除いては、175センチ、75キロという柔道選手としては小柄だが、普通に考えるとかなりがっちりとした体格だ。
若かった十代の頃ならともかく、三十過ぎた今では、俺を抱こうという物好きは、一部のマニアックな趣味の奴を除くと、プロレスラーもかくやと云うかなりマッチョな連中ばかりになっている。
でも、俺は自分が筋肉質な所為か、『マッチョ』は嫌いなんだよ!
俺の好みはかなりうるさい。
まず、美少年タイプが駄目。基本的に女が嫌いなので、昨今の女みたいな男は、見た目で既に拒否反応。禿げもデブも嫌だし、かといって、細すぎるのもバツ。
佐伯が見た目通りのガリだったら、いくらキスが上手くても、即座にお断りだったんだけど、脱いだら奴はすごかった。
ちゃんとトレーニングしているんだろう。無駄な肉のまったく無い、俺の理想の体型だった。まるで、ギリシャ彫刻のような、細身だがしっかりと筋肉の乗った身体。
「あ、っ……」
弱い首筋に吸い付かれて、思わず上げた声は、自分でも恥ずかしいくらいに甘い。
「ん? ココ弱いのか?」
そういう確認すんなっての。
まぁ、酔っ払いの云うことだと、あえて聞き流す。どうせ、明日になれば覚えちゃいないだろう。
こんな好みの男とヤれる機会なんか、そうあることじゃ無いんだから、楽しんじまえ。
ポリシーを横に置いておいても良いと思ったのは、所詮、相手は『酔っ払い』だという安心感だった。


「佐伯、コーヒーでいいか?」
翌朝、昼近くになって起きだして来た佐伯は、一瞬キョトンとした顔になる。
「あ、ああ……」
夢から覚めたような表情に、俺は思わず舌打ちしそうになった。こいつ、記憶残ってやがるな。
「シャワー浴びてきたらどうだ? まだ酒臭いぞ、お前」
取りあえず、平静を保って、奴をシャワールームへと押し込んだ。水音が広くも無い部屋に響く。
その隙に、幾通りかの言い逃れのパターンをシミュレーションして、コーヒーを口に含んだ。時間稼ぎにトーストも用意する。
しばらくして水音が止んで、佐伯が顔を出した。
「ありがとう、久世。さっぱりしたよ」
服は昨日と同じだが、タイを外してシャツの前を開けているだけで、佐伯の印象は随分と違う。
「しかし、酒癖悪すぎだよ。今まで呑み会に出てこなかった訳が、よく解かったぜ」
差し出したコーヒーを受け取って、佐伯が苦笑を浮かべた。
くっそう、こんなトコロまで絵になるなんて、いい男は得だよ。
「昨日の幹事、販売部の添田さんだったか? 週明けに謝っておくよ」
「あー、そりゃ止めとけ。下手に謝ったりしたら、また何度か餌にされるぜ。功治先輩、そーいう人だし」
最後のつぶやきは、佐伯に向けたものでは無かったが、何故か聞きとがめられた。
「名前で呼ぶほど、添田さんと親しいんだな」
「あん? 大学の先輩だよ。俺が一年の時の、柔道部の部長」
「柔道やってたんだ。何かスポーツやってる身体だとは思ったけど……」
インターハイ目指して、本気でやっていたのは高校の頃までだ。ある時期から、俺の身体を鍛える目的は別のものになっていた。
「お前だって、さっきチラッと見たけど、いい身体してるじゃねーか」
「チラッと?」
問い返す佐伯の声には、明らかな笑いが含まれている。
「夕べ、散々見たんじゃ無いのか?」
「俺が、シャワーから上がったら、お前、もう寝てたじゃん」
白々しいとは思いつつ、空っトボけてみせた。まぁ、何とか夢だと思ってくれないかと云う足掻きだ。
「ふん、そういう事を云う訳だ。まぁ、いいぜ。オトす楽しみが出来た」
「オトす? だって?」
佐伯が俺の手を取る。
トーストのバターが付いた指先を、佐伯の舌が舐め取った。
「おい、っ……!」
ねっとりと指の間まで這い回る舌が、俺の性的な感覚を呼び覚まそうとする。
「お前ッ、そういうシュミかよ!」
力を込めると、佐伯はあっさりと俺の手を解放した。
「ああ。久世は、ばっちり俺の好みのタイプなんでね」
「そりゃ、随分と変わった好みだ」
お前なら、それこそ寄ってくる男も女も山ほどいるだろう! 態々、俺みたいな厳つい身体と平凡な顔を選ぶ理由が解からない!
「そうか? ゲイの好みとしてはある種、スタンダードだと思うんだが」
「あっさり認めるなよ」
あくまで、ストレート。もしくはバイとして扱おうとした俺の努力をあっさりと無視して、佐伯は『ゲイ』だと告白してきた。
「お前も、だろう? 昨日抱いてみるまで、半信半疑だったが」
「……」
佐伯の指摘に、俺は黙り込む。楽しんでしまったことは確かだ。だが、いくらなんでも、同じ会社はヤバイだろう。ばれたらどうするよ?
佐伯はいいさ。あの顔なら、それだって納得する奴が多いだろう。俺みたいなタイプがゲイだなんて、絶対に気持ち悪いって云われるぜ。ああ、女どもが給湯室で陰口叩くのが、今から聞こえるよ。
「バレるのが怖いのか?」
「総務部は女の多い職場なんでな。噂が立つのも怖い」
職場の女は、味方に付ければ心強いが、絶対に敵に廻しちゃいけない。途端に仕事がやり辛くなるんだ。
「解かった。じゃ、口説くのはプライベートだけにするさ。その代わり、な?」
何が、『な?』なんだよ!
俺の反論は、夕べと同じく佐伯の唇で封じられた。


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