スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


身勝手な男<4> 

「なぁ、何で飛ばされたんだ?」
さっきまで散々喘がされていた俺の口からは、掠れた声しか出ない。
「イロイロあるって云っただろう? それに今はそんなの関係ない」
佐伯は週末になると『口説く』と称して、俺の家に泊まるようになった。もちろん、セックス付だ。


*これより先15禁。ご承知の上、お進みください。俺には今現在、特定の相手もいないし、佐伯は会社では本当に『同期の社員が呑み会がきっかけで親しくなりました』程度にしか接触してこないので、俺としては断る理由も無い。
好みの男とのセックスは、正直俺も楽しい。佐伯は上手いし、何より丁寧だ。セフレとしては、かなり上等な部類に入るだろう。
「お前が俺の恋人になってくれれば、隠し事なんかしないさ。でも、今は違うだろう?」
後ろから抱き込んだまま、耳元に囁いてくる。確かにそうだ。俺も佐伯の全てを知りたい訳では無い。単なる好奇心だ。
「なぁ」
佐伯が妙に甘えるような声を上げるのに、俺は思わず身構える。この声は、俺を丸め込もうとたくらんでいる時の声だ。
「やだね」
「即答するなよ。まだ、何も云ってないのに」
佐伯の指は、さっきからしつこいくらいに俺の胸をまさぐっている。
「顔見て、ヤリ、たい、んっ、とか云うんだろッ…」
佐伯の愛撫に息が上がった。
「それこそ、恋人でも、ねぇのにッ、…お前はただのセフレだってっ!」
必死に息を整えて、俺は一気に言葉を吐き出す。
「傷つくなぁ。そんな目一杯拒否しなくてもいいんじゃないか?」
云いながら、佐伯の手が段々と下肢に下りてくる。
前と後ろを同時にまさぐられて、俺はもう荒くなる息を抑え切れなかった。
「も一回。いいだろ?」
何度目かも覚えてないくらいなのに、佐伯の野郎は、まだ満足していなかったらしい。
「この、猿!」
「そう云う、お前も、な…」
耳に注ぎ込まれる佐伯の声は、ひどく淫蕩に響く。
「久世、いい」
ため息のように漏らされる呟きは、俺を満足させた。佐伯が俺だけを求めているのが解かるから。
でも、俺は決して佐伯の名前は呼ばない。俺自身が勘違いしたくなるのが判りきっているから。


ロッカーから出てきた俺を出迎えたのは、フロア一杯に広がる甘ったるい匂いだった。
「あ、営業部からの差し入れです。紅谷の岩シュー。召し上がります?」
芳野が聞いたのは、俺の格好の所為だろう。
紅谷の岩シューは、パウダーシュガーが多いので、喪服で食べるには向かないからだ。
「いや、いいよ」
今から喪服で外出することを考えると、シュークリームなんか食べる気にはなれない。
今年は異常なくらい暑い所為か、何故か葬儀が多かった。
「でも、これ渡部さんからですよぉ。今夜の通夜の代わりですって」
「あん?」
美弥ちゃんの言葉に、俺は思わずムッと聞き返してしまう。
「新藤興業は、渡部の担当だったのか?」
低くなった俺の声に、意外と豪胆な美弥ちゃん以外の女性社員が引いているが、この際、そんなことは構っていられない。
元来、取引先の通夜なら、営業課の担当が行くのが当たり前だ。今夜は新藤興業の社長の通夜なんだぜ?
「あの、野郎……」
確かに総務は何でも屋だが、そうそう自分の仕事まで押し付けられちゃかなわねぇ。忙しいという話だったから、てっきり工藤か石田の代理だと思ってたんだよ。俺は。
無言のまま、営業部へと続く階段を駆け上がる。
「おい、渡部はいるか?」
体育会系の俺は、当然ながら声もでかい。ドアを開け放った途端に上げた声に、営業部のフロア中が振り返った。
「渡部なら、昭栄電気立ち寄りで、そのまま直帰の予定ですよ。どうしたんすか、久世さん?」
営業部でトップを収める工藤は、俺の一年後輩だ。怒った俺が怖いのを良く知っている。
「昭栄電気だとぉ! 新藤興業の工場のすぐそばじゃねぇか!」
「え?」
あの野郎、気働きのかたまりみたいな工藤がきょとんとしているトコを見ると、無断で総務に廻しやがったな。
「今夜、新藤興業の社長の通夜だよ。六時から工場で、な。営業課は忙しいそうなんで、俺が行くことになっているんだが?」
嫌みったらしく云うと、工藤の顔色がさっと青くなる。
「何ぃ!!!」
頓狂な声を上げたのは、営業部長の水上だ。
「新庄さん、渡部の携帯…」
「鳴らしてます。――――留守電になりました」
水上の指示を先んじた営業事務課のお局が、はっきりと聞こえるように舌打ちすると同時に、営業部の男どもを睨む。確信犯か。
「も、いいよ。水上」
俺は、がっくりと肩を落とした。ありゃ、駄目だわ。
「すまん、久世。詫びに今度奢るから、今日んトコは頼むわ」
「構わん。営業さんの尻拭いも仕事の内だ。云いたかないが『今時の若いもん』って奴だろうさ」
「年食った云い方すんなよ。俺まで一気に年食った気になる」
「お互いな」
俺は一浪で、大学も一年ダブっているので、会社では先輩後輩だが、水上とは高校の同級生だ。つい、地が出る。
「久世、俺が行くよ。元々、俺の担当だったんだ」
水上に手だけで合図して出て行こうとした俺を呼び止めたのは、佐伯だった。
「いや、いい。渡部だと思ったから、引きずってでも連れて行こうとしたんであって、忙しいのを無理にとは云わないさ。それよりも、明日渡部シメとけよ。総務への依頼は水上部長通せってな」
営業部が一杯いっぱいなのは、俺も承知しているが、渡部はどちらかと云えば、サボリの気がある。他の連中なら、別に俺にも否やは無い。
言い置いて出て行こうとしたが、何となく営業部の雰囲気に微妙なものが含まれているのは判った。それが佐伯の所為だと云うことも。


NEXT

BL小説ランキング
FC2 Blog Ranking

スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(-) 


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。