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鍵<転げ落ちた先に> 

秋のJ.GARDENも近づきました。春のJ.GARDENの帰っちゃうのポスターSSのUPです。
テーマは鍵。
「転げ落ちた先に」文庫化記念で渥美×鈴木でした。女王陛下のお引越しその後。

【鍵】

渥美は抱え上げた鈴木をそっと横たえた。
引越しの手伝いに行った筈が、荷物を纏めるのに疲れて、肝心な本人は熟睡中。
まさか引っ越した筈の部屋に入れないとは思わなかった。
一応、夕方までは寝かせておくとしても、少しでも片付けたいのは本音だ。
せめて、荷物は運び込みたい。
「何だ、ここでもいいじゃないか」
そこまで考えて、渥美は呟いた。どうせ、部屋を買ったのは会社に対しての言い訳にしかすぎない。
この部屋へ帰るために、同じマンションに住んでいることにしたかっただけだ。
鈴木のワンルームには、一応の家具は調える必要はあるだろうが、荷物はこっちでも構わない筈だ。社員寮の主などと名づけられるくらいに寮暮らしの長かった鈴木には、家具らしいものは一切無かったし、古い布団は捨ててきた。
「そうなれば」
渥美はさっそく、荷物をこっちへと放り込む算段を付け始める。
管理人に連絡して、貨物用の奥のエレベーターと、運搬用にカーゴを借りた。普段は宅配や引越しの業者が利用しているものだ。
「本はとりあえず、義彦に任せるとして」
渥美はハンガーにセットされたままのスーツと私服を、全部クローゼットに掛けた。元々、ここへ泊まる事の多かった鈴木のために、クローゼットの一角は既に鈴木の場所になっている。
パソコンは鈴木が愛用しているミニデスクに置いた。セットアップは鈴木に任せることにする。専門的なソフトなどがあるかもしれないし、それは渥美では解らない。

「う…ん、?」
気をつけても、これだけの荷物を移動すれば物音はする。
さすがの熟睡中の鈴木も目を覚ましたらしい。
「あれ、何で?」
何処か猫を思わせる仕草でベッドから身を起こした鈴木は、周りを見回すまでもなく、そこが見覚えのある恋人の部屋だと気付いた。
「俺の部屋。お前、荷物を纏めるのに夜中まで掛かってたそうじゃないか」
寮からの荷の移動を手伝ってくれた総務の連中から聞き込んだ話を披露したが、鈴木は悪びれもせず大きなあくびをしただけだ。
「ご苦労さん」
寝ている間に済んだ引越しに、感慨も無さそうな感謝の言葉が降って来る。
学生時代からの年季の入った女王陛下ぶりに、渥美の口から漏れるのは、もう諦めに近い溜息だけだ。
鈴木は基本、他人がやってくれることには頓着しない。進んでやってくれるのは純粋な好意か、下心であって、やってくれないのなら自分でやる。
知り合った頃からのそれに文句を云うつもりは無い。ただ、自分の下僕ぶりに自分で呆れているのだ。
「あ、そうだ」
鈴木が何かを思いついたように荷物を探り出す。どうやら、ダンボールに記された数字も何かの目印らしく、迷いもなく目当てのものを見つけて差し出した。
見覚えのありすぎるそれは、このマンションのカードキーだ。
渥美は固まったまま、カードを見つめてしまう。
同じマンションに引っ越してきてくれたのは、一緒に住む決心をしてくれたのだと信じて疑わなかったが、もしかして、別れ話の前触れだったのか?
「俺の部屋のキー。大学のときのお前の学籍番号が暗証だからな」
「は?」
鈴木の言葉に、今度は別の意味で固まる。それは……。
「そういうこと、だ。受け取れよ」
押し付けられたカードを、呆然としたまま受け取った。
春とは名ばかりの、小春日和のとある日。

<おわり>

<交わす瞳と唇>

帰っちゃうのポスターというのは、もう少し廻ってみませんか?と一般参加の方に呼びかけるものです。
ポスターは希望者にプレゼントされます。
秋のJガーデンのテーマは「時計」。こちらは新刊「有須inワンダーランド!」で。
こちらの公開は次回Jガーデン前までは行いません。

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