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ワンダーランドの男たち<有須inワンダーランド!> 

秋のイベントの無料配布SSです。冬バージョンが出来たのでUP。
本編はこちら

【ワンダーランドの男たち】

「大体、ずるいのよ。将棋は」
雅が唇を尖らせて言う。そんな仕草も常の女装姿であれば似合っていたのだろうが、今日はスラックスと男物のシャツだけとあっては、気持ち悪い以外の何物でもない。いくら美貌であろうが、いい中年男だ。
「そうそう。カワイコちゃん独り占め。いいトコ取り」
こちらはスーツではあるが、どこか崩れた雰囲気のダンス教師である。その茅場も不満を顕わにしていた。
「創玄だって、言いたいことはあるだろうよ」
素知らぬ振りで、紅茶を口に運んでいた早川は、突然自分に話を振られて、苦笑いを浮かべる。確かにアリスは可愛かったが、所詮はもう他人のものだ。いつまでも未練たらしく考えていても仕方がない。
「お前らに文句言われる筋合いは無いだろう。蔵斗で遊びたかったら、俺に言えよ」
ふん反り返ったのは、美作将棋。会員制のふんどしパブのマスターである。
集まっているのは、この雑居ビル・ワンダービルのそれぞれの店のオーナーだ。雑居ビルの割には、それなりの広さをもつこのビルは、界隈では『ワンダーランド』と呼ばれている。
一階にはゴシックレストラン。二階にパブ、三階と四階は女装クラブ。最上階はダンスフロアーで昼間はダンス教室だ。
要は妙な趣味の連中の集まる場所という、皮肉である。
そのすれっからした男たちが、ワンダーランドへ飛び込んできたアリス。と称するのは、れっきとした大の男だ。有須蔵斗という名の、ガタイのいい若い男である。
だが、この蔵斗。とにかくオヤジ連中からみると可愛かった。ガタイのいいのと、目つきが悪いので、とかく誤解を受けることが多く、子供のころから理不尽な扱いと一方的な暴力を受けることが当たり前のような生活だった。それ故に自分を卑下する傾向が強く、気が小さい癖に、素晴らしく素直なのだ。普通、性格が歪みそうなものだが、蔵斗にはそういうところが無かった。
優しさに惹かれて、こんな場所に飛び込んだのが運のツキ。悪い男にまんまと食われてしまったのである。
「どうせ貸す気なんか無い癖に!」
雅が持っていたハンカチを美作へ投げ付ける。それを余裕で受け止めて、美作は鼻で笑った。
「当たり前だ。蔵斗が遊びたいなら別だけどな」
「ホントに? 俺のところなら来てくれそうだけど?」
茅場が目を輝かせた。女装は蔵斗自身が嫌がりそうだし、早川のレストランには蔵斗が行きたがっても、美作が許さないだろう。
「そうだな。茅場のところならいいか」
蔵斗は背が高いし、ダンスなら姿勢も良くなりそうだと美作は考えた。他人に拒絶されてきた蔵斗には、およそ楽しみと言うものがない。茅場のダンスホールは、ほとんどが老人たちの寄り合い所のようになっているため、じじばば受けのいい蔵斗には絶好の場所だ。
「タッパもあるし、肩幅も広いから、様になると思うんだよね。俺が手とり足とり」
いやらしい笑いを浮かべた茅場の頭を、横合いから早川が殴った。
「まったく。こういう輩だ。いいのかい。美作」
「まさか。ちゃんとお目付け役は付けるよ。真美子さんに頼めば大丈夫だろう」
真美子という近所の老女はホールの常連で、茅場も頭が上がらない。茅場がげんなりとした顔になった。
「ふーん、割とアリスのこと、自由にしてあげてるのね」
感心したように雅がつぶやくのに、美作がニヤリと笑った。
「縛りすぎて逃げられても困る。要は、優しくて綺麗な美作さんのところに居たいって思わせておけばいいだけだろう」
言い放った美作は自信たっぷりだ。
「自分で言うか」
「この男、本気でそう思ってる訳? 優しい? 綺麗? 誰が!」
双方からの突っ込みに、美作は声を上げて笑った。
「まさか! 蔵斗がそう思いこんでくれているんだ」
可愛いアリスを捕まえた悪い男は、ニヤリと笑う。
それに周囲の男たちはムカつきはしたが、反論はない。確かに最初に見つけて手を差しのべた美作の勝ちだ。
ワンダーランドのアリスはまだまだ腕の中でまどろんでいる。                  

<おわり>

<同じときを刻む>

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