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上質の時間<水の魔方陣・焔の剣>新年SS祭り 

一位。ソルフェース×リベア。納期の休暇の様子。
本編「水の魔方陣・焔の剣」
これにて、新年SS祭りは終了です。今年もよろしくお願いします。

【上質の時間】

どんよりと重く雲の立ち込める空を、透き通った身体の竜が舞う。皆が一斉に祈りを捧げ頭を垂れる中、リベア・ラーセンは魅入られたようにその竜を見つめていた。
上空をゆったりと旋回した竜は、一段高い場所で祈りの呪を唱える魔術師の捧げもった剣に吸い込まれるように消える。竜の宿る剣は薄っすらと紅い。
抜き身の剣を捧げ持ったままの魔術師が振り向いた先には、厳しい顔の男が立っていた。その男こそが剣の持ち主・焔の剣の騎士。
騎士が掲げ持った鞘に剣を納めるのと同時に、正面に立った騎士の唇に魔術師が唇を重ねる。触れ合うだけのそれが終わると、魔術師が高らかに宣言した。
「焔の剣の騎士の護りも祈りに加えられた」
広場が沸き立ち、皆が南天の枝を振っている。ラーセンも持っている南天の枝を握り締めるとその場を後にした。今日は友人の家に遊びに行く約束になっているのだ。

「あれ、リベア。王宮の広場に行ってきたんだ?」
「ああ。母さんから頼まれてて。今日は泊まりに行くって言ったんだけど」
「間抜け。きっちり断りゃいいだろ」
友人・レイの家には既にもう一人の友人ゲミルも来ていた。南天の枝を持っているのは王宮の納期の祈りを聞いてきたということだ。
「王宮の広場に行かなくても、俺が呪を掛けてあげたのに」
紫紺の瞳に金の髪のレイは、魔術師の見習いである。
「あ、そうか」
「蒼のソルフェースは結構大掛かりな魔術を使うけど、本来ならこの王都自体が巨大な守護陣なんだから、俺程度でも充分なんだよね」
「へぇ。そんなもんなのか」
ゲミルが声を上げた時、ガタリと重い木の扉が開いた。
「おかえり、父さん。いらっしゃい、蒼のソルフェース」
「ただいま。友達か」
にこりと人好きのする笑顔で笑う壮年の男は腰に佩いた幅広の剣を見るまでもなく、騎士だと知れる。背後の大魔術師は今日も人を食ったような笑顔を浮かべていた。
「父さん、聞いていないよ」
普段大人びたレイが、拗ねたような態度を示すのが珍しくて、ラーセンはつい見入ってしまう。
「悪い悪い。気にしないでいいぞ。枕投げだろうが何だろうが、思いっきりやれ」
「親公認でやって嬉しいと思う?」
「それもそうか」
レイの父親が豪快に笑った。
「レイ、王宮からの差し入れを持ってきた。菓子もあるぞ」
納期の祈りに対する謝礼として、ソルフェースには金品が届けられるのだが、豪華な絹よりも着やすく丈夫な紗織りの方がいいし、身を飾る宝飾は魔術師には意味がない。それよりも学んでいる年少の見習いたちへの菓子や、楽しむための上質な酒を要求している。それに添えて肉や料理も届けられるのだ。
「ありがとうございます。ゲミル、リベア。上行こう」
いくつか菓子を握って、レイは友人たちを伴って二階の自室へと上がっていった。
「ああいうところは子供の顔だな」
「ああ。だが、もう少しの猶予だな」
レイの力は徐々に増しつつある。何時まで街に置いていられるか。
「強すぎる力か」
制御に力を割きすぎると成長に影響を及ぼす。かといって、学校を巨大な魔方陣の中へと入れることも出来ない。
「あれが、選んだのだ」
魔術師としての生を選んだのは、レイサリオ自身なのだ。
「リベア。やるか?」
暗くなりがちな場に、ソルフェースが上等の果実酒の瓶を掲げる。今は考えても仕方が無い。
「そうだな。一杯くれ」
「肉を焼くか」
ソルフェースが塩漬けの肉の包みを開いた。料理刀は使わない。腰に下げた短刀を抜き、器用に切り開く。
「ここは俺たちの砦だ。何の遠慮もいらん」
ニヤリとリベアが笑う。王に仕える魔術師の宮は自給自足の質素さが求められる。少量の酒と質素な食事。常に己を高める鍛錬と修行の場。
だが、ここはリベアの借りたリベアの家だ。いくつかの料理の包みも開き、それを肴に二人だけの酒宴が始まった。
肉を焼く匂いが家中に広がると、匂いに釣られてか、バタバタとした小さな足音が幾つも降りてきた。
「父さん。俺たちも!」
「ああ。来い」
リベアは笑って息子を手招く。バタバタと走り寄ってきたレイをひょいと抱き上げたところで、首を捻った。大きくなった子供は、もう片腕に抱え上げることは出来ない。
「重くなったな」
「もう、何時の話だよ。降ろして」
リベアに抱え上げられていたのは、養子になったばかりの十かそこらの頃だ。
「腰に来るぞ」
「じじい扱いしやがって」
ソルフェースのからかいにリベアは文句を言いつつ、笑ってレイを降ろす。
「そっちのガキどもも来い。飯にするぞ」
ソルフェースがテーブルへと肉を並べた。おずおずとラーセンとゲミルが腰を下ろす。
「ソル」
嗜めるようにリベアがソルフェースを見た。それにソルフェースはあからさまな舌打ちを返す。
「今日は泊まっていくのか?」
「いい? 勝手に約束しちゃったんだけど」
「俺がいないのに、勝手も何も無いだろう」
問い掛けるリベアをレイが不安そうに伺った。
「言呪を飛ばせば良かったかなぁと思ったんだけど」
「レイ。魔術はそんなことに使うものじゃない。お前は蒼の弟子でそんなことは簡単な魔術だと思うのかもしれないが、人に余る力を使うツケは必ず支払う時が来る」
真っ直ぐにレイを見るリベアの視線は厳しいものだ。レイは神妙にうなずく。
「俺が家にいない間のことはお前に任せる。ここは俺とお前の家だ」
「はい!」
嬉しそうにレイが返事をするのに、不満げな声を上げたのはソルフェースだ。
「おい、さっき俺たちの砦だと言ったばかりだぞ」
「それに変わりは無いさ。ここは俺の持ち物だからな」
リベアの持ち物である以上、管理を息子に任せるのは当たり前だと言いたげだ。
「仕方が無いですね。蒼のソルフェースもそこに加えましょう、父さん。でないと面倒なことになりそうです」
改めて外向きの言葉遣いになるレイに、リベアは声を上げて笑い、ソルフェースは強かさに苦笑いを浮かべる。
「まったく、お前の周りのガキ共はどいつもこいつも生意気になりやがる」
「他にもいたか?」
「マーロウとかいうお前の副官と、紅のところのヤコニール」
「そうだったかな」
リベアから見れば、逞しく強かになっていく子供たちは、成長している証だ。そのうちレイももっと大人になっていくだろう。
大人たちの嫌味の応酬など知ったことかと、子供たちは目の前に並べられた食事にかぶりついている。
それを横目で微笑ましく眺めながら、リベアは果実酒を傾けた。そして、その幸福を噛み締めるようなリベアを見ていると、ソルフェースも先ほどまでの言い合いなど結局どうでもいいことのように感じてしまう。
野菜の酢漬けを口に放り込み、果実酒を傾けた。上質の酒の香りと酸味が口に広がり、口の中で転がすそれを幸福と言うのだと。

<おわり>

<旅の空>

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