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戦う覚悟<傭兵と吟遊詩人> 

傭兵と吟遊詩人番外。本編の少し後。旅のはじまりの小話。
本編はこちら

【戦う覚悟】

躓いたようにフォゼラが立ち止まる。それにヴェルハが振り向いた。
「すまん、ヴェルハ。先に行っててくれ」
しゃがみこんだフォゼラに、ヴェルハが怪訝そうな視線を向けるが、原因はすぐに知れた。
「靴、持たないのか?」
「ああ。応急で留めて町に入ったら、靴屋を探すしか無いな。いつもならもっと持つんだが」
普段ならば、街道沿いの乗合馬車を使って移動するのだが、ここいらは山が多く、乗合馬車が無い。しかも、さして高くも無い峠を越えれば、隣の町に着くとあって、殆どの連中は山越えを選ぶのだ。ヴェルハとフォゼラも当然、そうした訳だが。
フォゼラが懐からなめし皮を取り出すのを見て、ヴェルハが止める。三弦の修理用のなめし皮を使用してしまったら、いざという時に困ることになる。
ヴェルハが突然立ち上がった。
商隊らしい荷馬車の列の前に立ちはだかる。山道用らしく、小さめの荷馬車をいくつも引いていた。
「何しやがんだ! 危ねぇだろう」
驚いたらしい御者がヴェルハを怒鳴りつけたが、ヴェルハは意に介さず声を張り上げる。
「この商隊、何処まで行く? 責任者は誰だ?」
よく通るヴェルハの声に、二台目の馬車から男が顔を出した。
「昼間から盗賊の類とも思えんが、一体何の用だ?」
「傭兵だ。護衛はいらんか」
堂々と仕事をくれと告げるヴェルハに、男は目を丸くした。
「生憎、そんな大層な商隊じゃない。山で生活用品を売り歩くだけだ。無駄金は無いな」
「襲われたらどうする?」
「命あってのモノダネだ。逃げ出すさ」
肩をすくめる男に、ヴェルハは笑い掛ける。危険な感じのする笑みだ。
「俺を乗せておけば逃げ出す必要なんか無いぞ」
「ヴェルハ。止めろ」
意図を悟ったフォゼラが声を上げる。ヴェルハはフォゼラを馬車に乗せたいのだ。
壊れ掛けた靴の所為でバランスが悪い歩き方で寄ってくるフォゼラに、男が視線を流す。
「芸人さんか。足をどうかしたのか?」
「靴が壊れ掛けているだけだ。すまん、行ってくれ」
促すフォゼラに、男は少しだけ考え込んで口を開いた。
「靴、売ってやろうか?」
「しかし、こんな場所で荷を広げさせる訳には」
「だから、靴を乗せた荷馬車に乗ればいい。調整も要るしな。ギリー、お客さんだ。乗せてやれ」
「あいよ!」
ギリーと呼ばれた男は、どうやら靴職人らしい。荷をひょいひょいと退け、フォゼラが乗る場所と自分の作業場を作る。
「それと、そっちの傭兵さんはうちじゃお呼びじゃないんでな。勝手に付いて来るといい」
責任者らしい男がそう言い放つと、荷馬車の群れがフォゼラを乗せて緩く走り出した。戦場で馬車の警護もやらされたこともあるヴェルハにとっては、荷馬車の後ろをついて走るくらいは朝飯前だ。
それに、靴が持たなかったのは、おそらくはヴェルハと共に戦っていた為だ。それを計算に入れなかったことを迂闊だと責めるつもりは無い。むしろヴェルハが気を使うべきだったのだ。
戦うことはヴェルハの日常だ。それを共に相棒に求めるのなら、ヴェルハが教えなければならない。今までヴェルハの傍にいたのは、独り立ちした傭兵たちだった。だが、フォゼラは違う。
少なからず浮かれていた自分に、ヴェルハは唇を噛み締めた。

「長さも幅もちょうどだな。後は何処を調整する?」
「すまんが、なるべく軽くて丈夫なものを頼む。後、足首の固定はしっかりしてくれ」
フォゼラの注文に、型を取っていたギリーが目を丸くした。
「アンタ、芸人さんだろ。何だか兵隊みたいな注文の仕方だな」
「まぁな。物騒な場所も多いからな」
薄く笑ってフォゼラは外を走るヴェルハの様子を伺う。
「結構、高いぞ」
「構わん。命には代えられん」
ヴェルハの隣にあるためには、自分も傭兵である自覚が必要だ。
「芸人さんなら、危ない場所なんか避ければいいと思うんだがな」
「いや、あの男の隣に立つ以上は、飛び込むことも要る」
首を捻るギリーに、フォゼラはきっぱりと言い放つ。
それきり、ギリーは何も聞かずに作業に移った。出来上がる靴を眺めながら、フォゼラは目を閉じる。ヴェルハが作ってくれた機会だ。なるべく身体は休めておいた方がいいだろう。
馬車の揺れが収まったことで、フォゼラは目を覚ました。
「ほら、出来たよ」
ぶっきらぼうにギリーが靴を差し出す。示された金額はかなりの金額だが、履いてみて納得出来た。軽く動きやすい。外へ出ると、ヴェルハがちょうど追いついたところだった。
「あの傭兵さん、アンタの何?」
眉根を寄せたギリーが問う。それも代価の一つだ。差し出された好意には誠実に答えなければならない。
「相棒だ」
言い置いて、フォゼラが歩き出した。ヴェルハの元へ。
自分の歌を奏でる最高の歌い手である傭兵の隣へ。

<おわり>

春のJガーデンの「帰っちゃうのポスター」でした。テーマは「靴」。
秋のJガーデンのポスターは「三角屋根の魔法使い」 美巳が来る前の小話です。

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